今回は、発生段階別に展開される対策のうち、非医学的介入抗ウイルス薬ワクチンについてみてみたい。

 改訂行動計画とガイドライン、さらには防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演等よると、発生段階別でみた場合、「非医学的介入」がまず始動することになる(図1)。

図1 発生段階別でみた「非医学的介入」(防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演から)

 すでに取り組まれているのは、「家禽に関する防疫」や「在外邦人への情報提供」だ。第1段階(海外発生期)に入ると、「不要不急の渡航延期の勧告」が出され、同時に「検疫体制の強化」が図られる。

 第2段階(国内発生早期)に入ると、本格的に「非医学的介入」が実施されることになる。いわゆる「Social distancing」(社会的隔離)を実行するものだ。

 社会的隔離の有効性については、過去最悪のパンデミックだったスペイン・インフルエンザで実証済みだ。

 1918年に発生したスペイン・インフルエンザでは、米国のフィラデルフィア市とセントルイス市の間で、そのの死亡率に大きな差があった(図2、参考文献1)。フィラデルフィアでは、1918年10月19日時点でピークとなり、死亡率は人口10万人当たり1万3000人以上に達した。一方、セントルイスでは、ピークはフィラデルフィアより2カ月近く遅い1918年12月14日だった。また、ピーク時での死亡率は、実にフィラデルフィアの4分の1以下だった。

図2 米国のフィラデルフィア市とセントルイス市でスペイン・インフルエンザの死亡率に大きな開き

 この違いは、「社会的隔離」を実施したかどうかによる。セントルイスでは、1918年10月5日時点から「映画館、学校、会議場等の閉鎖」を実行していた。11月16日に閉鎖は解除されたが、効果は、死亡率のピークを遅らせただけでなく、ピークの山を低くするという形で現れたのだ。WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂氏は、昨年末の東京講演で、「社会的隔離は確かな効果が期待できる」とし、ワクチン、抗インフルエンザ薬に並んで、社会的隔離が大事であると重ねて指摘していた。

 学校、保育施設等の臨時休業については、1例目の患者が確認された段階で、各都道府県が「学校等の設置者に対して、臨時休業を要請する」。要請であるため、臨時休業を実施するかどうかの最終的な判断は設置者が下すことになるが、学校側としては事前に父兄らと話し合っておく必要があるだろう。

 また、集会や催し物、コンサートなど不特定多数の人が集まる活動は開催自粛を求められ、一方で、一般市民に対しても「外出の自粛」「公共交通機関の利用自粛」が求められる。

 あなたの街が「フィラデルフィアの失敗」を繰り返すのか、それとも「セントルイスの成功」を納めるのかは、ひとえに一般市民の理解と協力にかかっている。