改訂行動計画では、世界保健機関WHO)のフェーズに応じた対策を改め、日本での対策の転換点を明確にした5段階を設定し、その段階ごとに対策の方針を決定した。よりきめ細かく対応するためだが、まず新たな「段階」をみておきたい。

図1 対策の転換点を明確にした5段階を設定した(改訂行動計画、防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演等より作成)

 図1は、発生段階ごとの非医学的介入を表したものだが、ここでは時間の経過とともに、前段階(未発生期)、第1段階(海外発生期)、第2段階(国内発生早期)、第3段階、第4段階(小康期)と変化していく点に着目したい。改訂行動計画では、それぞれの段階ごとに「体制整備」「ウイルス流入阻止」「ウイルス限局化」「被害の最小化」「対策の評価と見直し」という対策の方針が定められている。

 前段階(未発生期)とは、新型インフルエンザが未発生である現在のこと。この段階での対策の主眼は、体制整備に注がれる。対策の柱は、行政機関や事業者における事業継続計画の策定、感染防止等のリスクコミュニケーションの実施、医療提供体制の整備、抗インフルエンザウイルス薬およびプレパンデミックワクチンの備蓄などだ。

 想定では、海外で発生し日本国内へ流入するというストーリーを下敷きにしていることから、海外で新型インフルエンザの発生が確認された段階で、第1段階(海外発生期)へ突入する。この段階では、ウイルス流入阻止のための対策がとられることになる。

 転換点となる「海外発生」の判断については、WHOのフェーズ4宣言を前提としている。実際には、WHOが新型インフルエンザの発生の調査に入った段階で第1段階(海外発生期)に踏み込む見込みだ。具体的には「総理・全閣僚からなる新型インフルエンザ対策本部が設置される。発生時点の総理・閣僚がどのような顔ぶれであっても、「WHOのフェーズ4宣言」を察知し、可能な限り早めの対応を始動できるよう心がけて欲しいものだ。

 第1段階(海外発生期)では、検疫の集約化や停留等の開始、在外邦人を含む国民への情報提供の強化、医療従事者等へのプレパンデミックワクチンの接種開始、パンデミックワクチンの製造開始などが対策の柱となる。

 第1段階と第2段階(国内発生早期)の転換点は、国内発生例の確認となる。この段階の対策の目的は「ウイルスの限局化」。いわゆる封じ込めのための対策が発動される。具体的には、感染者の感染症指定医療機関等への入院措置、学校の臨時休業あるいは不要不急の集会等の自粛要請、事業者に対する不要不急の業務の縮小要請などが始動する。

 このうち、入院措置は、法律に基づいて行われる封じ込め対策となる。一方、学校の臨時休業や不要不急の集会等の自粛は、要請という性格のもので強制力は持ち合わせない。国民の理解と合意があってはじめて実効性が期待できるもので、今からその時に備えた議論を深めておくべきだろう。

 前回、対策の主眼は「パンデミックの緩和」にあることを指摘した。第2段階(国内発生早期)までに、どれだけ有効な対策を実行できるかが、その後を決定付けることはいうまでもない。

 第2段階(国内発生早期)と第3段階の転換点は、「発生患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった時点」となる。ここから先は、被害の最小化が対策の中心となる。

 第3段階はさらに、感染拡大期、まんえん期、回復期と細分化されている。拡大感染期とまんえん期の転換点は、「入院措置による効果の低下」とされている。第2段階(国内発生早期)から実施される入院措置は、封じ込めを狙ったものだ。しかし、入院措置をしていても市中での感染拡大を防げない事態も起こりうる。この段階で「入院勧告措置の解除」が行われる。まんえん期に続く回復期の転換点は、「患者発生が減少傾向」と評価した時点となる。

 重要なのは、第3段階の各転換点の判断は、都道府県が下すという点だ。各都道府県の対応力の差が、この段階であからさまになってくるのだろう。

 第3段階と第4段階(小康期)の転換点は、「患者発生が低い水準で停滞」となる。その後は、対策の評価と見直しが対策の中心となるが、第2波(再燃期)に備えた取り組みが展開されることになる。

 次回は発生段階に照らし合わせながら、医療体制がどうなるのか、あるいは抗インフルエンザ薬やワクチンの出番はどの段階なのか、など細かく読み込んでいきたい。