2月17日。政府の新型インフルエンザ対策行動計画がまとまった。2005年12月に公表した行動計画の改訂版となる。この間の医学的知見の集積、諸外国の動き、日本国内の関係省庁の取り組みなどを反映させた全面的な改訂となった。かつ、10種類におよぶガイドラインも策定し、政府としての対策への意思を明確にした。その主眼が「感染ゼロ」ではなく「パンデミックの緩和」に置かれていることが最大の特徴だ。

 「日本国内で新型インフルエンザを発生させないことは不可能。ゼロにすることは無理」。3月に全国一斉に始まった厚生労働省の「新型インフルエンザ対策ブロック会議」で結核感染症課課長の梅田珠美氏は、新型インフルエンザ対策の目的に触れ、こう明言した。

 今回の改訂行動計画では、対策の目的を明確に示した点が特徴の1つ。具体的には「感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめること」と「社会・経済を破綻に至らせないこと」の2つを掲げた。

 「感染ゼロ」ではなく「パンデミックの緩和」が目的であることは、改訂行動計画を理解する上で重要なポイントとなる(図1)。

図1 「感染ゼロ」ではなく「パンデミックの緩和」が目的

 過去のパンデミック事例や鳥インフルエンザのヒト感染例などをもとに、新型インフルエンザの実像に迫る研究成果は日々積み重なっている。しかし、まだ発生していないため「真の姿」は不明であり、今準備を進めている対策が本当に有効なのかどうかについては不確定要素が多い。

 明らかなのは、だれもが免疫を持たない新型インフルエンザウイルスが襲ってきた場合、膨大な数の人が感染してしまう危険性は高く、毒性の強さによっては多数の死者が発生してしまうことだ。

 改訂行動計画では、全人口の25%が罹患し、医療機関を受診する患者は1300万〜2500万人に、入院患者は53万〜200万人、死者は17万〜64万人に達すると予測している。これは何も対策を打たない場合だが、改訂行動計画では、こうした数字を「可能な限り少なくする」ために対策を展開すると宣言したのだ。

防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏

 図1は、防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏(写真)が、2月に開催された日本環境感染症学会で行った教育講演「新型インフルエンザへの対応」で示したものだ。対策を打たなかった場合、国内の発症者数は、短期間に医療体制破綻ラインを超えピークに達してしまう。

 「パンデミックの緩和」とは、このピークに達する時間を遅らせ平坦化させることにある。生命線となる医療体制を守るため、前段階(未発生期;現状)、第1段階(海外発生期)、第2段階(国内発生期)と段階ごとに、可能な限り有効な対策を展開することになる。そして、同時多発的に発生しうる感染者や受診者、入院患者や死亡者を減少させ、さらにはワクチン供給などの対策を打てるまでの時間を確保することが狙いだ。

 次回から、改訂行動計画で採用した新たな段階ごとに、非医学的介入、抗インフルエンザ薬、医療体制、ワクチンのそれぞれの対策の詳細を読み込んでいきたい。