いつ発生するのか定かではない新型インフルエンザ。だからといって何もせずに過ごしていいものなのか。特に、国民的合意が必要なことは、今まさに議論しておかなければならないはず。流行時のワクチンである「パンデミックワクチン」の優先順位もその最大のテーマの一つだ。「パンデミックに挑む」編集では現在、アンケートを実施している。これまでに届いた読者の声を紹介したい。

 国の方針は、新型インフルエンザ流行前のワクチン(いわゆるプレパンデミックワクチン)と流行時のワクチンという2段構えで臨もうとしている。流行前ワクチンについては、現在、鳥インフルエンザ(H5N1型)を前提としたワクチンを備蓄しており、昨年から、近々期限切れを迎える備蓄流行前ワクチンを材料に、その安全性や効果などを評価する臨床試験が進行中だ。

 流行前ワクチンについては今のところ、厚生労働省は、「医療従事者や電気・水道等のライフライン従事者ら、医療や社会生活の維持に関わり、新型インフルエンザの感染が拡大している中でも業務に従事し続ける人から、プレパンデミックワクチンの接種を行う予定」としている。

 流行時のワクチンについては、新型インフルエンザが発生した場合、感染の拡大を防ぐためにワクチンの接種を行うことになっている。ただし、パンデミックワクチンは、発生してからでないと作ることができず、また現状では、全国民に必要なワクチンを作るのに1年半はかかるとみられている。このため、「医学的ハイリスク者」「成人・若年者」「小児」「高齢者」の4集団にわけ、国民的な議論を経た上で、接種順位を決めていくことになっている。

 「パンデミックに挑む」編集では、「国民的な議論」のきっかけになればとの思いから、現在、アンケート調査を実施中だ。


 17日までの単純集計によると、もっとも優先順位が高い集団は、「医学的ハイリスク者」と「小児」が、それぞれ52%と41%で拮抗していた。全体としては、優先順位の高い順に、「医学的ハイリスク者」「小児」「成人・若年者」「高齢者」という順番になっている。

 今回はこれまでに届いた中から、優先順位が高い順に「医学的ハイリスク者>小児>成人・若年者>高齢者」と回答した人の声を紹介したい。

(1)パンデミックの際の医療資源を有効に活用するためには、医療資源を多く消費する可能性のある重篤化の可能性のある患者を重篤化させないことが重要になると思われる。したがって、医学的ハイリスク者と小児の優先度が高くなると考える。また同様に、トリアージ的な考え方も必要になると思われる。高齢者を最低位におくのは「姥捨て山的発想」と思われるかもしれないが、国民全員にパンデミックワクチンを接種するような事態は、ある種、非常事態宣言が出てもおかしくない状況と思われる。専門の医療活動は不可能でも、ボランティアとして人力が必要な場面があるのであれば、成人を優先するほうが国家全体として見て、パンデミックからの脱却を早く成せると考えられる。ちなみに、医学的ハイリスク者より優先度が高いのは医療従事者。政治家やマスコミも優先度が高いとされているが、閣僚を除いた政治家やマスコミ従事者は成人と同じでよかろう。

(2)当然、治療を施す医療関係者がプライオリティNo.1である。次に新型インフルエンザは子供達の死亡率が高いと聞いているので、小児、20歳以下の若年者が2番目。成人と高齢者は子供たちが少しでも救える可能性があるのであれば、喜んで最後にワクチンを受けます。

(3)高齢者はワクチンを接種したとしても死亡率が高いと思われるから。

(4)重篤化しそうなところから手を打って、病院のキャパシティを確保するため。あとは行動の必要性を考えました。それほど外に出なくてもいい人は順位を下げました。

(5)若い方が反応が激しく出る。年寄りであるから重篤化するとは限らない。若い人でも重篤化する可能性がある。今の厚生労働省の発表は、タミフル耐性インフルエンザの発表など他国から比較すると、即応性がない。しかし、状況を集約して、重篤化する年代がどの年代か、リアルタイムに発表と通達を出さないと、日本での被害が他国より増えることも懸念されるのではないか。

(6)医療従事者がパンデミック時に患者さんと接触する機会が濃厚で、なおかつ一番活動が必要とされるので優先順位が高くなると思います。小児はこれからの時代を背負っていく世代なので第2優先としました。成人・若年者は海外などで報道されているようにサイトカインストームで元気で活発な方が亡くなることがあるので第3優先としました。高齢者はインフルエンザに罹ると重篤になりやすいですが、第4優先とさせて頂きました。

(7)事業継続マネジメント的に考えてみる。医学的ハイリスク者と高齢者の区別が相当難しいと思われるが、種別が可能なら医学的ハイリスク者が最優先。パンデミックワクチンの目的は、社会システム、中でも医療システムの崩壊阻止であるから、重篤化しやすい順。小児と若年者で迷ったが、小児の親が副作用云々言い出すことがなければ小児。言い出すなら、小児の健康管理は親に丸投げして、成人・若年者を優先するべき。医療システムを支える資源になりうるから。若年者が生きていれば、小児はまた増えうる。以上、目的適合性に考えてみたが、人倫にもとるという非難を免れ得ないだろう。政治的に実現する可能性が最も高いのは高齢者最優先である。

(8)医学的ハイリスク者を1番目にした理由:重篤化する事により医療機関に負担がかかるから(新型インフルエンザの治療に専念出来ない)。小児を2番目にした理由:少子化に拍車がかかる。小児は公衆衛生・予防知識が無く己をコントロール出来ないから。成人・若年者を3番目にした理由:スペイン風邪の時はこの年齢層に最も死者が多かった。この年齢層が最も重要な社会構成要員でライフライン(電気、水)の管理、医療従事者、治安保安を担っているから。高齢者を4番目にした理由:多くがリタイアし、外に出なくても済むから。

(9)小児と違い公衆衛生・予防知識を得ることが出来る。年齢で分けるのが今回の主題かもしれないが、ライフラインを管理している人間が最優先されるべきである。医者がいても電気と水が無かったらお手上げだからだ。地方自治体の議員の優先順位が高いのはおかしい。パンデミックが始まったら彼らが成すべきことは皆無である。彼等のすべきことはパンデミックが始まる前に地方自治体での体制作りをするに留まる。始まった後に彼等が在宅のまま地方の行政機関と連絡を取り合い意思決定していく仕組みが無い今、パンデミック後の彼等の存在は無用であり、ワクチン接種の必要性は高くない。国会議員においても同じことが言える。閣僚クラスならば判るがそれ以外の議員に接種する必要性があるだろうか? 接種を受けた人間は医療機関でのボランティアを義務付けてほしい。

(10)社会にとって未来的に重要な世代の順番と、重篤化や劇症になりやすい世代(0歳〜39歳)までを順位付けした。残念ながら高齢者は、外出禁止処置とし、また活性が低いので重篤化になりにくいことを考え、優先度合いは低くした(その代わり、生活必要物資などは供給する前提で)。

(11)新型インフルエンザでは若年者ほどサイトカインストームによる炎症反応の増悪で致死率が高いとされていること、今後の社会を担う重要な世代であることなどを考えると、「小児」、「成人若年者」の優先順位を高く設定することが必要。医学的ハイリスク者は優先順位を高くすべきと思うが、「高齢者」および「医学的ハイリスク者」に含まれる「高齢者」は検討が必要と考える。少なくとも、単に高齢というだけで小児や若年者より優先されるようなことは、人類存続のためにもあってはならないことと考える。親心として考えても、自分はいいから子供は助けたいと考えるのが普通の人情。それに反して、すでに十分人生を楽しんだ高齢者を優先的に助けるような行いは、倫理的にも社会的にも経済的にも不合理(高齢者には申し訳ないが)。

(12)若年者にサイトカインストームがおこりやすいのは聞いたことがあるが、弱者と次世代を担う小児に優先されるべきだ。

■お知らせ
「パンデミックに挑む」編集では、現在、優先順位についてのアンケートを実施中です。ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください。
アンケート画面は ⇒ https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/C006441ib.html