茨城県の守谷市立愛宕中学校(校長;東郷達男氏)で2月6日、全校生徒を対象とした新型インフルエンザ予防教室が開催された。講師は、新型インフルエンザから子供を守る会のメンバーで看護師である長島祥子さん。「感染症は予防できる。手洗いやうがい、マスクの装着など、通常のインフルエンザの予防法を身につけてほしい」などと訴えた。

茨城県の守谷市立愛宕中学校で行われた新型インフルエンザ予防教室

 守る会は、「正しいマスクの装着、うがい、手洗い」をテーマとした“出前講習会”に取り組んでいる。昨年末から、幼稚園や小学校、美容院などで、講習会を開催してきた。今回の愛宕中学校は7回目となる。

 愛宕中学校としては、保健活動の一環で季節性インフルエンザについては啓発活動を行ってきたが、新型インフルエンザを取り上げるのは今回が初めて。

 新型インフルエンザの恐ろしさを訴えるのではなく、きちんと備えれば、被害を最小限に抑えられることを分かってほしい−−。守る会が出前講習会で基本としていることだ。特に、子供たちを対象とする場合は、徹底している。

新型インフルエンザから子供を守る会のメンバーで看護師である長島祥子さん

 長島さんが、愛宕中学の全校生徒に呼びかけたメッセージの中で、印象的だったのは、通常のインフルエンザの予防策の説明に、多くの時間を割いたことだ。

 「くしゃみをすると、しぶきが飛びます。時速130キロで飛んでいきます」。会場がざわついた。スクリーンに、しぶきが勢いよく口から飛び出している絵が映し出された時だ。長島さんは、感染経路を解説し、それを遮断することが予防につながると指摘する。

 そして予防策の1つがマスクの装着であり、うがいであり、手洗いであると続けていく。たとえば、「舌を洗うことも予防につながる」など、具体的なポイントも提示した(表1)。

表1 予防策の基本で気を配りたい点(長島さんの講演から)

<マスク>
・くしゃみや咳でマスクに隙間ができることがある
・そんな時は、手で押さえるのではなく、ひじで押さえる。人は知らないうちに、目や口、鼻などを触ってしまうものだから
・はずす時は、ひもを持ってはずし、できるだけフタつきのゴミ箱に捨てる
<手洗い>
・手のひらだけでなく、甲も、指と指の間も忘れずに洗う
・親指を洗うのを忘れがちなので注意する
・そでをまくって、手首も洗う
・石鹸はポンプ式の方が使いやすい
<うがい>
・まず、口の中をきれいにするため「ブクブク」うがいをする。
・いきなり喉の奥で「ガラガラ」うがいはしない
・最初はうまくいかない。お風呂などで練習してみる
・舌を洗うことも予防には重要

 新型インフルエンザの説明では、「予防できる点」に注力した。その1つが、「セントルイスの決断」だ。 

 長島さんは、1918年に発生したスペイン・インフルエンザの死亡率に、米国のフィラデルフィア市とセントルイス市の間で大きな差があったことを示すデータを紹介した(図1、参考文献1)。フィラデルフィアでは、1918年10月19日時点でピークとなり、死亡率は人口10万人当たり1万3000人以上に達した。一方、セントルイスでは、ピークはフィラデルフィアより2カ月近く遅い1918年12月14日だった。また、ピーク時での死亡率は、実にフィラデルフィアの4分の1以下だった。

図1 米国のフィラデルフィア市とセントルイス市でスペイン・インフルエンザの死亡率に大きな開き

 この違いは、「社会的隔離」を実施したかどうかによる。セントルイスでは、1918年10月5日時点から「映画館、学校、会議場等の閉鎖」を実行していた。11月16日に閉鎖は解除されたが、効果は、死亡率のピークを遅らせただけでなく、ピークの山を低くするという形で現れたのだ。WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂氏は、昨年末の東京講演で、「社会的隔離は確かな効果が期待できる」とし、ワクチン、抗インフルエンザ薬に並んで、社会的隔離が大事であると重ねて指摘していた。

 長島さんもまた、「セントルイスの決断」は日本でも有効であることを指摘するとともに、その実行に際しては、一般市民の理解が欠かせないことを訴えたのだった。

 「今日、お話しさせていただいたことを、家族の皆さんにも伝えてください。そして、皆さんが親になった時には、ぜひ子どもたちに伝えてください」。対策の共有を呼び掛けた長島さんは最後に、「備えよ常に(Be Prepared)」というボーイスカウト運動のモットーを紹介し、講演を締めくくった。

 守る会の鈴木万紀子さんは、「新型インフルエンザの対策は、通常のインフルエンザ対策の延長線上にあることを徹底したい」と話す。これからも機会があれば、「出前講習会」に取り組んでいく意向だ。こうした活動は、地域の対応力の底上げに貢献するに違いない。


■参考文献
1)Collins SD, Frost WH, Gover M, Sydenstricker E: Mortality from influenza and pneumonia in the 50 largest cities of the United States First Edition Washington: U.S. Government Printing Office 1930.
2)WHOからの提案、死者数を減らす“社会的隔離”は必須

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