昨年末、衝撃的な情報が編集部に寄せられた。日本で現在流行しているAソ連型インフルエンザウイルスのほとんどで、タミフル耐性ウイルスが検出されたのだという。日本臨床内科医会の有志が耐性ウイルスを意識した抗インフルエンザ薬治療の指針(私案)を発表。さらに、米疾病センターCDC)が「米国でのインフルエンザA/H1N1流行はタミフル耐性が主流」として警告を発した時期に重なる。確認に時間がかかる中、世界保健機関WHO)が2008年12月30日、日本で14検体中13検体からAソ連型タミフル耐性ウイルスが検出されたと発表した。しかし、日本国内では、年が明けた1月16日にいたってようやく厚生労働省が公表した。その時のデータは、国立感染症研究所が1月8日時点でまとめたものだ。WHOの発表から、すでに2週間以上が経っていた。

 国立感染症研究所の1人は、「(発表の)タイミングを逃した」と述懐する。タミフル耐性ウイルスが検出されたある県の担当者は、自らの県で発生していたことを感染研に確認してもらったと認めた上で、こう話していた。「感染研としては、CDCのように治療方針も併せて公表したいと考えていたようだ。だから公表は待ってくれと言われた」。

 1月8日。テーマサイト「パンデミックに挑む」では、WHOの情報を基に「今シーズンのAソ連型タミフル耐性ウイルス、日本で93%に見つかる」という記事を掲載した。14検体という母数の少なさは課題だったが、90%以上という数字の重さは重要だった。そもそもWHO自体がこの数字の重要性を認識していた。

 なぜ、日本国内向けの公表が遅れたのか。ある県の担当者が言うように、日本での治療指針を示したいという意向が働いたのは無理のないことだったのか。だが、WHOへ報告してから2週間以上も経っていたのは、時間の浪費と言われても仕方がないではないか。

 「東京町田市で3人死亡」などという見出しが新聞紙上をにぎわしたのは1月17日以降だ。結局、Aソ連型ではなく、A香港型であったことが、後に判明する。もしもこれがAソ連型で、さらにタミフル耐性ウイルスであったのなら、「2週間というタイムラグ」は、はたして許されたのだろうかと思う。

 心配なのは、新型インフルエンザが発生した場合のことだ。中央の機能に、情報を取り扱う上での脆弱性が存在するのかもしれないと疑うのは、決して意味のないことではない。課題を自らあからさまにし、解決する時間がまだあるのだから。


■参考情報
1)耐性ウイルスを意識した抗インフルエンザ薬治療を
2)CDCが警告 米国でのインフルエンザA/H1N1流行はタミフル耐性が主流
3)今シーズンのAソ連型タミフル耐性ウイルス、日本で93%に見つかる