図1 勝田氏のブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記

 1月5日に北京でH5N1型鳥インフルエンザに感染した19歳女性が死亡したことをうけて、現地では誤解やデマが広がっている。ブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」で情報を発信し続ける近畿医療福祉大学の勝田吉彰氏のところには、さまざまな情報が寄せられている。その中には残念ながら、誤解やデマに基づくものが目立つという。

 2003年にSARSが発生した際、勝田氏は、騒動のさなかにある北京で、在中国日本国大使館医務官に就いていた。その時の経験から得た教訓が「事実ではない噂の拾い上げと訂正が社会不安制御の上で極めて重要」ということだった。

 「北京日本人社会に拡がる誤解、あるいはデマには、非常に心を痛めている」と話す勝田氏は、ブログで、誤解やデマに基づく情報を取り上げ、その訂正に着手しはじめた。

 たとえば、「新型インフルエンザ/鳥インフルエンザの人にうつる奴が北京で発生したようなのですが」「タミフルがないと死ぬかもしれない」「日本人には食料を売ってくれなくなる」など、誤解やデマに基づく情報を取り上げ、それぞれに回答を寄せている(表1)。

表1 北京日本人社会に拡がる誤解あるいはデマ(風評情報)とそれに対する勝田氏の回答(抜粋)

 風評1 「新型インフルエンザ/鳥インフルエンザの人にうつる奴が北京で発生したようなのですが」
 A1 今回北京で発生したのは、感染した鳥を解体するという極めて密接な(通常の在留邦人の生活場面ではまず無い)接触により感染したものです。本日1月12日時点、H5N1ウイルスの遺伝子が容易にヒトーヒト感染するように変異完成したという情報は(この広い地球上どこからも)入ってきておりません。 また、今回同様の事態はインドネシアはじめとしてカンボジア・ベトナム・香港等で散発しておりますが、いずれもヒトーヒト感染拡大してゆく事態には至っておりません。
 風評2 「タミフルがないと死ぬかもしれない」
 A2 ちょっと漠然としていますね。タミフルが(永遠に)なければ予後は悪くなりますが、タミフルが(すぐに)ないと・・というニュアンスの流布であれば事実ではありません。発症後48時間の投与で効果が得られるとされています。これまで、インドネシアはじめ途上国の死亡例では、発症後3日経ってから村の診療所へ行ったとか、正しい病院に行ったのが5日後とか、貧しさゆえの悲劇が多いようです。 在留邦人の皆さまにおかれては、発症後48時間(丸2日)何もしないで放っておく方はいないかと思います。
 むしろ心配なのは、タミフルが(すぐに)ないと・・と思いこまれた方が、手持ちのタミフルを「ちょっと熱が出た」「ちょっと咳が出た」等の理由で、単なるカゼでどんどん服用される事態です。抗生剤と同じく、「必要のない時の必要ない使用」で耐性発生(いざという時に所定の効果を得られない)の事態が懸念されます。本当に必要なときまで、服用しないでしまっておいてください。
 風評3 「日本人には食料を売ってくれなくなる・・・」
 A3 SARSのときも、食糧関連のデマは流れ、管理人もスーパーに走った経験があります。が、何も発生しませんでした。北京における食糧品小売りは、超市が中心ですから、レジに至って国籍判別やろうと思っても困難ではないでしょうか。

 「今北京で起こっている事態は、将来、新型インフルエンザが発生した暁に、日本でも起こりうる“Xデー”の予行となるはず」。勝田氏は、誤解やデマが流布していくことが、パニックにつながっていくと指摘する。

 新型インフルエンザ対策では、リスク・コミュニケーションの重要性が叫ばれている。勝田氏の取り組みは、貴重な先行事例となるに違いない。