今シーズンのインフルエンザ流行では、タミフル耐性問題が大きな課題となっている。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班のメンバーである原土井病院臨床研究部部長の池松秀之氏は、「タミフルの臨床効果が実際に低下しているのを、いかに早く検出するかが重要」と指摘する。その上で、解熱時間が1つの指標になりうるとして、研究班が取り組んできた解熱時間の解析結果の活用に期待を寄せた。

 解熱時間の解析は、発症からタミフルの初回内服までの時間ごとに、解熱までの時間をみたもの。初回内服から解熱までを「解熱時間」、発症から解熱までを「発熱時間」とし、A型とB型別にみている(図1、インフルエンザ診療マニュアル2008-2009年版)。今回池松氏が指摘したのは、前者の解熱時間となる。

図1 発症からタミフルの初回内服までの時間別にみた解熱まで時間(出典;インフルエンザ診療マニュアル2008-2009年版)

 発症からタミフルの初回内服までの時間が12時間以下、13時間から24時間、25時間から36時間、37時間から48時間の各時間帯でみると、A型の場合、解熱時間は、それぞれ33.1時間、30.9時間、26.9時間、30.4時間と30時間前後に集約していることが分かる。

 解析対象にはタミフル耐性の症例を含んでいないので、この図が示す解熱時間は、タミフルの臨床効果を評価する指標となりうる。今シーズンのタミフル投与例にあって、A型の場合は、解熱時間が図1に示された時間より長ければ、それだけ「タミフルの臨床効果が低下している」ことになる。

 実際の臨床では、患者やその家族に、タミフルの初回内服から30時間以上経っても解熱しない場合は、再度受診するよう促す必要がある。その理由として、「インフルエンザウイルスがタミフル耐性か、あるいはタミフルが効きにくいタイプである可能性が高い」ことを伝えることも重要だ。

 なお、今シーズンの抗インフルエンザ薬の治療指針としては、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班メンバーがまとめた「2008/2009年シーズンの抗インフルエンザ薬治療指針(私案)」(関連情報や、米疾病センター(CDC)の抗インフルエンザ薬の治療指針(関連情報)が参考になる。

 昨シーズンのAソ連型におけるタミフル耐性ウイルスの出現は、2008年1月末にノルウェーから報告された。75%という高い割合でオセルタミビル耐性ウイルスが見つかり、報告を受けた世界保健機関(WHO)は直ちに、欧州をはじめアメリカ、アジアなど各地域のサーベイランス機関に調査を求め、耐性ウイルスの現状把握に動いた。その結果、2007年後半から今年3月の調査では、耐性株の出現頻度は世界全体で16%にのぼり、2008年4〜10月の調査では39%に拡大していた。日本でも全体では2.6%だったものの、鳥取県で37%という高頻度で耐性株が検出されるなど、今シーズンは耐性ウイルスを強く意識した診療が求めらる状況となっている。

■関連情報
1)CDCが警告 米国でのインフルエンザA/H1N1流行はタミフル耐性が主流)
2)2008/2009年シーズンの抗インフルエンザ薬治療指針(私案)
3)Aソ連型でオセルタミビル耐性ウイルス、ノルウェーやフランスで高率