図1 鳥インフルエンザ(H5N1)のヒト感染例の推移(WHO)

 鳥インフルエンザH5N1)のヒト感染例は累計で391人に達した。致死率は63%と依然として高率であることも分かった。世界保健機関WHO)が12月16日時点で集計した。

 鳥インフルエンザ(H5N1)は、ヒトの新型インフルエンザを引き起こす可能性のあるウイルスの1つとして注目されている。WHOに報告のあったヒト感染例は、2003年に4人だったものが2004年には46人に、2005年には98人と倍増、2006年には115人と増加の一途をたどった。その後、2007年には88人と減少に転じ、2008年も12月16日現在で40人に留まっている(図1)。

図2 地域別に見たH5N1のヒト感染例(WHO)

 死亡例も同様に推移し、2006年に79人とピークに達した以降、2007年は59人に、2008年は12月16日現在で30人と減少傾向にある。

 ただし、致死率は依然として高く、2005年に43.9%に落ち込んだが、その後は68.7%、67.0%と推移、2008年は12月16日現在で75.0%となっている。これまでの累計では、63%と高率のままだ。

 地域的に見ると、インドネシアからの報告が抜きん出ている(図2)。累計では、感染者数が139人で全体の36%を占める。次いで報告が多いのはベトナムで、累計感染者数は106人で全体の27%となっている。

 ただ、インドネシアとベトナムでは、様相が異なる。インドネシアは2006年にピークに達したあと減少傾向にあるが、ベトナムでは2006年にゼロとなったものの2007年、2008年と報告が再開している。

図3 H5N1ヒト感染例の死亡例(WHO)

 このほか、注目したいのはエジプト。感染例は2006年に18人、2007年に25人と増加している。2008年は8件に留まっているが、このまま推移するのか、引き続き、監視が必要となっている。特に、致死率は56%、36%と推移、2008年は12月16日現在で50%と増加しているものの、感染例の増加と致死率の低下が同時に進行していただけに、注意が必要だろう(図3)。

 全体的に見ると、H5N1のヒト感染例は落ち着いてきているように映る。このため、ヒトの新型インフルエンザを引き起こしうるウイルスの最有力候補だったH5N1は、他の候補と同列になったとの見方も出ている。

 しかし、WHOに報告されていないヒト感染例の存在を指摘する専門家も少なくなく、また、60%という致死率の高さは依然として脅威であるとの指摘もあり、今後も注意深いサーベイランスを続けていかなければならない。

(三和 護=日経メディカル別冊)