日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長の廣津伸夫氏

 インフルエンザの随伴症状で問題視されている異常言動の発現率は18.8%と決して低くなく、また発現例の43.1%は抗インフルエンザ薬による治療を開始する前か無治療の例で発現していた。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の調査により明らかになったもので、副班長の廣津伸夫氏(写真)は、「異常行動による事故を防ぐには、薬剤の使用に関係なく、家族らによる注意深い観察が必要になる」と警告した。9月14日、長崎で開催された第22回日本臨床内科医学会で発表した。



 対象は、2006/2007および2007/2008の各シーズンにインフルエンザ様疾患で来院し、迅速診断キットで陽性だった18歳以下のインフルエンザ確定診断症例の345人。保護者に対して、インフルエンザ療養中の治療状況と臨床症状の経時的変化とともに、この間に精神神経症状の発現があった場合は、その詳細を時間経過とともに記録してもらった。なお、調査では、厚生労働科学研究「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」の調査表を用いた。

 解析の結果、異常言動は345人中65人に認めた。発現率は18.8%で、厚労省の「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」で明らかになった14.7%より高かった。

 異常言動の症状としては、情動異常32例(49.2%)、衝動性の異常(緊張病性障害)23例(35.4%)、幻視体験21例(32.3%)、意識障害(見当識障害)20例(30.8%)、支離滅裂・不明言動20例(30.8%)、睡眠障害13例(20.0%)、神経症状6例(9.2%)、身体感覚の異常5例(7.7%)、幻聴体験4例(6.2%)が確認された。

 たとえば、情動異常では、「怖がって窓際に逃げた」「目が狂人のようになり、母にしがみついて怯えて泣いた」「顔をしかめてすごい形相となった」などの報告があった。また、衝動性の異常では、「突然部屋から出てきてすごい形相でテーブルの周りをぐるぐる回った」「カッターナイフで自分の手首を切ろうとした」「激しく号泣し転げまわった」などが記録されていた。

 抗インフルエンザ薬の治療との関係では、オセルタミビル使用者138人中18人(13.0%)に、ザナミビル使用者166人中19人(11.4%)に、それぞれ異常言動が認められた。なお、この2剤をともに使用した3人では異常言動はなかった。

 一方、抗インフルエンザ薬による治療を開始する前か無治療の例では、38人中28人(73.7%)に異常言動の発現を認めた。これは、異常言動の発現例65人のうち43.1%に相当した。

 このほか、異常言動発現例65人のうち、兄弟で発現した例が4家族9人に確認されるなど、異常言動の発現には個々の素因が関係している可能性も示唆された。

(三和護=日経メディカル別冊)