「まずは知識のワクチンを」。インターリスク総研の本田茂樹氏(写真)が提唱するキャッチフレーズだ。同社は、パンデミック対策として、主に企業が必要とする予防策、緊急時対応・事業継続などに関する総合的なコンサルティングを展開している。リスクマネジメントの視点から、医療機関にも役立つ「新型インフルエンザ対策の基本」をまとめていただいた。(編集部)



 ひとたび発生すれば世界的な大流行(パンデミック)となり、多数の感染者、死者が出ることが予想される新型インフルエンザは、企業や医療機関の活動にも甚大な被害を及ぼすが、その取り組み状況はどうであろうか。

図1 対策を実行している企業は一割未満(インターリスク総研)

 当社では、国内全上場企業3949社を対象に、新型インフルエンザの取組み動向について調査を行った(回答総数448社、調査期間;2008年5〜6月)。その結果、対策を実行している企業が一割に満たないなど、企業における新型インフルエンザ対策がまだまだ十分とは言えない状況にあることが明らかとなった。

対策を実行している企業は一割未満

 新型インフルエンザを想定した感染症対策を実行しているかという質問に対し、「対策を実行している」は9.8%しかなく、「現在計画を策定中である」の14.3%を含めても、全上場企業の中で、新型インフルエンザ対策に取り組んでいる企業は、24.1%にとどまっている。また「対応の予定はない」と回答した企業も52.0%あった(図1)。

被害想定の大きさも対策に手がつかない一因

 新型インフルエンザによる被害想定が非常に大きいことが、企業の対策が遅れている理由の一つと考えられる。新型インフルエンザ対策について、「対応の予定はない」と回答した企業の54.5%が、その理由として、「新型インフルエンザが引き起こす事態はあまりに重大なものであり、一企業の対応能力を超えるから」をあげている(図2)。

図2 被害想定の大きさも対策に手がつかない一因(インターリスク総研)

 確かに国民へのワクチンの供給や抗ウイルス薬の備蓄、さらには検疫体制など国が担うべき役割は大きい。しかしそれを口実に、新型インフルエンザに対して何の手も打たなければ、企業の社会的責任は果たせない。従業員の感染予防のための事前の措置、感染予防・感染拡大防止のための物品の備蓄、そして事業継続計画の策定など、企業として自ら考え、行動するべき点は多々ある。

 厚生労働省は、新型インフルエンザの流行期を分類しているが、現在は、「フェーズ4(新型インフルエンザ発生の初期段階)に限りなく近いフェーズ3」と位置づけられている。つまり新型インフルエンザの発生は時間の問題であり、いつ発生してもおかしくない状況にある。相当程度の犠牲が避けられないことを前提としながらも、企業としては、その被害を最小限にするために、まず事前準備に着手することが重要である。

 企業は、新型インフルエンザについて単に医療や健康の問題でなく、危機管理の問題と十分認識した上で、最優先課題として対策を立て、行動することが求められている。