図1 ダチョウの卵を使った抗体精製法

 科学技術振興機構JST)は7月2日、大学発ベンチャー創出推進研究開発の成果として、ベンチャー企業であるオーストリッチファーマ株式会社が設立されたと発表した。ダチョウの卵で鳥インフルエンザ抗体を大量生産する方法を確立した京都府立大学教授の塚本康浩氏が出資したもので、医療機関用マスクなどに適応した抗体担持フィルターの製造販売を推進し、起業3年後までに年間売上額3億円を目指す。JST支援で設立されたベンチャー企業は、これで71社となった。

 塚本氏らは、3種のインフルエンザウイルスワクチン株(A/H1N1、A/H3N2、B/マレーシア)のHA抗原混合液や高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来のH5リコンビナント蛋白を用い、産卵ダチョウに免疫して卵黄からそれぞれの抗体(卵黄抗体、IgY)を大量精製する方法を確立した(図1、関連情報)。 

 今回設立したオーストリッチファーマは当面、この大量生産法を駆使し、新型インフルエンザのパンデミックに備えた製品の開発に取り組む。すでに関連会社のCROSSEED社を通じてマスクを製品化。秋口からは、大手代理店を通して医療機関や自治体、大手企業へ新型インフルエンザのパンデミックに備えた備蓄品として大量販売する予定。また、大手メーカーを通じて薬局薬店での一般向け販売にも取り掛かる。

 このほか、ノロウイルスや結核菌など、他の病原体などの感染予防用素材やダチョウ抗体を用いた腫瘍検査キットなどの商品開発も展開する予定。

 塚本氏らが開発したダチョウの卵黄による精製法を使うと、1羽のダチョウから年間400gの抗体が精製可能となる。卵1個当たり2〜4g採取可能で、半年間で計算すると、ウサギの400〜800倍の量が採れることになる。生産コストも低く、ニワトリを使って精製した場合に比べ30分の1のコストで済むという。また、1羽から大量に採取できるためロット間の差が少ないというメリットもある。

 パンデミックの特徴の一つは、短期間に想像以上の大量の患者が発生することにある。このため対策面でも、「短期間に大量」がキーワードとなる。ダチョウの卵で鳥インフルエンザ抗体を大量生産する技術は、「短期間に大量」を現実化するもので今後の展開が注目される。

(三和護=日経メディカル別冊)