昨年末から今春までオンエアしました「特集・インフルエンザ2007/2008」より、新型インフルエンザについて専門家の方々にうかがったインタビューをピックアップしました。以下となります。

「パンデミックになったら診療しないなんて悲しい」
WHOメディカルオフィサー 進藤奈邦子氏

 患者の診療を拒否することは考えられない−−。日本の医療現場で、パンデミックの際に「診療拒否も選択肢」という議論があることを知ったWHO(世界保健機関)メディカルオフィサーの進藤奈邦子氏(写真)は、「とても悲しい気分になった」と続けた。鳥インフルエンザをはじめとするアウトブレイクの封じ込めのために世界を駆け回り、常に危険と背中合わせの中で医療活動を展開する進藤氏にとって、まったく予期せぬ話題だった。ただ、診療拒否の背景に疲弊する医師の実態があるとの指摘に話が及び、こう付け加えた。「私も勤務医をしていたので彼らの心情は分からないでもない。確かに使命感だけではパンデミックは乗り切れない。最前線に立つ医師らのサポートは不可欠だから」。

「史上最悪のインフルエンザ」を繰り返さない
仙台医療センター ウイルスセンター長 西村秀一氏

 「正当にこわがることは、なかなかむつかしい」。50年前に物理学者で随筆家である寺田寅彦氏によって発せされた警告である。「史上最悪のインフルエンザ」の著者であるA.W.クロスビー氏は日本語版への序文でこの警句を紹介し、「我々が今、肝に銘じるべき言葉である」と結んだ。翻訳に当たった仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一氏(写真)は、この言葉の中に新型インフルエンザと対峙していくための基本姿勢を読み取る。国レベル、自治体レベルで対策案が打ち立てられる中、体制は整いつつあるように見えるが、果たして本当にそうなのか。絵に描いた餅にしないためにも、地域に根ざした「私たちの行動計画」が必要になっている。そこに実効性を吹き込む決め手は、やはり「地域のリーダーシップ」(西村氏)なのだ。

第一線の医師が倒れたら打つ手がなくなる
福岡県赤十字血液センター所長 柏木征三郎氏

 新型インフルエンザの出現が懸念されている。鳥類間ではA型(H5N1)が世界的に流行し、最近も英国で七面鳥の大量死が発生したばかり。鶏などから感染した人の事例も相次ぎ、死亡例は全世界で200例を越えた。H5N1が変異し人への大流行に発展する危険性は高まるばかりだが、実効性のある対策を訴え続けている福岡県赤十字血液センター所長の柏木征三郎氏(写真)は、診療所や地域の病院などの医療機関への支援を急ぐべきと説く。医療崩壊が現実化している今、「第一線の医師らが倒れたら対策の打つ手がなくなる」からだ。


(三和護=日経メディカル別冊)