発熱外来で診療に当たる医師(宮古島での訓練から)

 5月29日。沖縄県宮古島市で新型インフルエンザ対策の大規模訓練が行われた。日本国内でヒト-ヒト感染が確認され、大きな集団発生が起こった段階であるフェーズ5Bを想定。発熱外来での対応や患者搬送および遺体搬送など、実践さながらの訓練が繰り広げられた。

 訓練の目的は2つ。まず、大流行が予想される新型インフルエンザへの迅速かつ適切な対応を可能とするために、関係機関の役割を理解しあうとともに、それぞれの部門での様々な手順、必要な物品などを確認すること。もう一つは、想定訓練の模様をマスコミなどに取り上げてもらうことによって、住民の理解を深め、対策への取り組みを促すことだった。

 半年以上も前から準備を進めてきただけに、参加者らの意識は高く、最終的には参観者らも含め100人以上が訓練に参加した。

「実践では訓練で行った以上のことはできない」と宮古支庁長の長濱政治氏(右)

 13時30分。県立宮古病院の会議室に訓練参加者が集結した。開会の挨拶に立った宮古支庁長の長濱政治氏(写真)は、新型インフルエンザの大流行の危機が高まっているとの認識を示した上で、「実践では訓練で行った以上のことはできない」と強調し、今回の訓練実施の重要性を訴えた。

 13時35分。準備を進めてきたメンバーの1人である宮古福祉保健所の鉢嶺亮氏(写真)が訓練の概要や大まかな流れ、訓練のポイントなどを説明した(図1)。

図1 訓練の概要。フェーズ5Bで新型インフルエンザが疑われる患者が次々と発熱外来を受診することを想定。

 それによると、新型インフルエンザの感染が疑われる複数の患者が次々に、宮古病院の発熱外来あるいは休日・夜間診療所の発熱外来を訪れることになっていた。このうち休日・夜間診療所の発熱外来では重症者が受診したとの設定で、宮古病院へ救急車で搬送する訓練も組み込まれた。また、宮古病院では、搬送された重症患者が死亡したと想定し、遺体の搬送訓練も予定されていた。

 重症患者の搬送では消防も参加。救急車と管理車両を出動させ、患者搬送と救急車両の消毒などの訓練を実践。一方、遺体搬送では宮古島市が参加。宮古病院から遺体を引き取り遺体安置所(総合体育館を想定)へ搬送する計画だった。なお、訓練では市の職員らが患者役として参加した。

 訓練のポイントは、(1)医療従事者や付き添いの人の防護対策がきちんとできているか、(2)迅速な対応のために関係機関の連携ができているか、(3)患者や家族への説明が十分にできているか−−の3つ。

 医療面で準備に携わってきた宮古病院の森博威氏(写真)は、訓練のポイントに触れつつ、「できるだけ多くの課題を抽出することが、訓練の目標となる」と指摘。各部署で作成済みのマニュアルと実際ではどのような違いがあるのか確認したいと話した。また、宮古福祉保健所所長の上原真理子氏も、「できるだけ多くの失敗をしましょう。失敗を確認することがこの訓練の目的」と締めくくった。

 以下、訓練の模様を追った。

 14時。訓練開始。参加機関である宮古病院、休日・夜間診療所、消防、市の総務課へ訓練開始の連絡がされた。

 休日・夜間診療所では発熱外来が設置済みで、一診を担当する医師1人、二診を担当する医師1人、さらにドクターサイドナース2人、トリアージナース2人、処方ナース1人、受付1人の総勢8人の態勢がとられていた。全員、外科用ガウンに身を包み、手袋、ゴーグルを装着していた。

 14時15分。最初の患者が来院。受付を行いトリナージコーナーへ。看護師がバイタルサインをとった後、医師の診察へ向った。一通り診察を終えた医師は、新型インフルエンザへの感染が疑われるが、症状から軽症であると判断。オセルタミビル(タミフル)の服用について説明し、必要分を持ち帰り、自宅で静養するよう指示し帰宅させた。

 14時30分ごろ。父親に抱きかかえられた15歳男子が来院した。待合室のイスにもたれかかるように座った患者に、看護師らは車イスを用意(写真)。患者を移しトレナージコーナーへ移送した。父親はその間、受付で手続きを進めた。

重症者に駆け寄る看護師ら すばやく車イスを用意した

 休日・夜間診療所で診察に当たった医師は重症と判断、宮古病院への搬送を決断した。直ちに消防本部へ通報。新型インフルエンザの感染が疑われる重症者を宮古病院へ搬送するため救急車の出動を要請した。

 通報を受けた消防本部では、宮古病院へ重症者の発生と搬送について連絡をとり、搬送のための救急車両とその車両の消毒業務を主に担う管理車両の2台を出動させた。

 重症患者の搬送の連絡が入った宮古病院では、発熱外来で新型インフルエンザの感染が疑われる患者への診療が続いていた。

 次号に続く。

(三和護=日経メディカル別冊)