川越救急クリニックの標榜科は、救急科、内科、外科、小児科、整形外科、麻酔科としました。麻酔科でスタートした私ですが、長年の救急・ICUの経験から、外科や整形外科の応急処置の経験も積んでいます。また、福岡市立こども病院のNICUでは、子供の病気やけがへの対応を学んでいます。産業医時代には、内科系の疾患の診療にも携わっていました。

「どんな患者さんも受け入れることがモットー」と語る上原氏。患者本人が納得する対応を実践しようと常に心がけている。

 さらに、標榜科にはありませんが、耳鼻科や眼科、脳神経外科領域の症状にも対応しています。もちろん、救急車も受け入れています。それを想定して、開業当初からCTを設置し、小手術や心肺蘇生などの救命処置を行える部屋も作りました。すぐに自宅に帰せない患者さんもいると考え、病床も4床備えています。

 これだけの設備投資をしたのは、地域住民の健康面の安心をしっかりサポートしようと考えたからです。機器の多くをリースにしたり、スペックの低い機器にしたり、中古の機器を探したりして、コストを下げる努力をしました。それでも、土地や建物の購入費用がかかり、初期投資は1億円をはるかに超えてしまいました。

 クリニックの診療日、診療時間を決めているため、「24時間365日対応できる体制にない」との理由で、県から救急告示医療機関の認定を得られていません。そのため、診療報酬の加算が付かず、経営的にはかなり厳しい状態が続いていますが、「総合的に救急を診る医師が周辺にはいない」ことをいつも念頭に置き、住民の安心、患者さんの安心を優先して考えています。

患者さんが納得する対応を考える
 私は、どんな患者さんが来ても受け入れることをモットーにしています。もう一つ心がけているのは、患者さん本人が納得する対応を実践することです。

地域住民の健康面の安心をサポートしようと考え、数多くの医療機器を導入。Vscanもその一つだ。

 私は、本屋のせがれ、つまり商売人の息子です。医療は第3次産業と考えているので、まずお客さん(患者さん)にサービスをすることが重要だと常に思っています。決して患者さんにこびへつらうという意味ではなく、本人が納得する診療を行うことを大切にしています。

 例えば、子供が転んで、頭をどこかにぶつけたのでCTを撮ってほしい、という親子が来たとします。3次救急では、まずMRIかCTを撮影し、重篤かどうかを判断しようとするでしょう。しかし、私は、親と本人からじっくり話を聞き、ぶつけたときの様子、ぶつけてからの経過時間、症状の変化、現在の本人の状態などから、CTなどによる検査の必要がないと判断した場合は、そのことを分かりやすい言葉で、時間をかけて説明します。多くの場合、患者さんや家族は安心し、CTを撮らなくても納得して家路に就きます。

 患者さんの話をよく聞き、説明に時間をかけるため、患者さんの待ち時間はどうしても長くなります。特に土曜日、日曜日は、3時間待ちということもしょっちゅうです。今年1月12日からの3連休では、どの日も最後の患者さんを送り出したときには、夜が明けていました。

 開業当初は、1日の外来患者数が平均20人でしたが、今では少ない日で20人、多い日は50〜60人にもなります。それだけ待ち時間が長くなりますが、「休みの日でもあそこは診てくれる」と頼りにされていると思うと、疲れてつらいと思うことはありません。もっとも、看護師や事務職員には無理をさせているな、と心苦しく思うことは時々あります。