最近、Vscanですぐに検査してよかったと感じた症例を二つ紹介します。

 1例目は、80代の女性、こちらの方言で言う「おばあ」です。数年間、在宅でのケアを受けていましたが、ちゃんと立って歩いて、自立した生活をしていました。ところが、2012年8月にインフルエンザウイルスの感染で発熱、脱水となり、血糖値が急上昇し、救急搬送となりました。

 しばらく入院生活が続き、11月下旬に退院しました。入院生活で足腰が弱り、自宅に戻った後もおむつを当てるようになったのですが、家族から「尿の色が黒い」との連絡を受け、訪問しました。

検査の結果がそれほど悪くなければ、「経過観察」とし、積極的な投薬などは行わない方針。

 尿があまり出ないとの話もあり、すぐにVscanで膀胱をスキャンしたところ、膀胱に尿が貯留しており、尿閉と診断しました。退院当時は頻尿もあり、ソリフェナシンが処方されていたのですが、それを排尿筋を収縮させるベタネコールに替えるとともに、尿路感染症が強く疑われたので、抗菌薬も処方しました。

 この「おばあ」は、数日後に老人保健施設に入所する予定と聞いたので、その場で処方変更すると同時に、私が新しく開設した在宅介護サービス事業所「複合型サービスゴン」(後述)について説明しました。2日後に再度訪問して、排尿に問題ないことを確認した際、家族から「老健施設ではなく、先生の施設に入りたい」との要望があったため、現在は複合型サービスゴンで介護を行っています。

 2例目は、自宅で生活する80代の「おじい」です。頻繁に通ってくる家族はいますが、事実上の独り暮らしです。認知症で心臓も悪く、家の中での歩行も困難なのに、「病院には行かない」とかたくなで、トイレに行くにも、時間をかけて這っていくような状態でした。11月下旬、ヘルパーから「倒れている」との急報を受けて、自宅に駆け付けました。

 診察時には本人はベッドに腰掛けており、比較的元気な様子でした。Vscanは診療所の別のチームが使っていたため、採血なども含め一通りの診察を行いました。家族からは、「苦しそうだった」という話も聞きました。

診療のときも、患者や家族と同じ目線で話すのが泰川氏のスタイル。

 血液検査の結果、心不全の重症度を示すBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が高く、心不全の悪化を疑いました。そこで、翌日にVscanで改めて心臓を検査した結果、拡張障害は認められたものの、それほど悪い状況ではないことが分かりました。

 こうした場合、私は「経過観察」とし、積極的な投薬などは行いません。余計なことはしないが、見逃しもしない、という方針だからです。この「おじい」のケースも同様で、その後も訪問診療を続けながら、自宅での暮らしを見守っています。

鎌倉にも診療所、宮古には新しい介護サービス拠点も
 私の医療活動は、幅も奥行きも少しずつ広げています。2010年に神奈川県鎌倉市に「ドクターゴン鎌倉診療所」を開設しました。院長は、宮古島で“修業”した久島和洋氏が務めています。常勤・非常勤の医師5人で、350人の患者さんを訪問診療しています。

 鎌倉に拠点を設けたのは、単に「鎌倉って、いいところだよね」という私のひらめきからでした。もちろん、高齢者が増え、在宅医療の需要が高まる地域であるという前提です。また、宮古島より鎌倉のほうが、訪問診療を志望する人材を集めやすいという狙いもありました。

宮古島の自然に魅力を感じ、鎌倉診療所の多くのスタッフが訪問診療のサポートにやってくる。

 宮古島でスタッフを募集しても、3年以上続く人は少ないのが実情です。そこで、東京に近く、ちょっとしゃれたイメージもある鎌倉で訪問診療のスタッフを募集し、「時々、宮古島のサポートもしてほしい」と働きかけています。

 永住は躊躇(ちゅうちょ)しても、海も空気も人の心もきれいな宮古島には、多くのスタッフが魅力を感じ、喜んでサポートしてくれます。ダイビング、クルージング、バーベキューパーティーなど、ドクターゴンならではのイベントも、魅力づくりに一役買っています。

 一方、宮古島では、従来の在宅ケアでは限界のある高齢者も増えてきたため、新たな介護サービス事業所「複合型サービスゴン」を2012年10月に開設しました。これは、4種類の介護サービス(訪問看護、訪問介護、デイサービス、ショートステイ)を顔なじみのスタッフから受けられるという「小規模多機能」型の拠点です。

 患者の生活に、医療と介護の形態を合わせて、宮古の「おじい・おばあ」が少しでも幸せに暮らせるよう、これからも汗を流し、知恵を絞っていきます。