患者さんの自宅を訪問する際には、聴診器、血圧計、心電計などいろいろな診察道具を持ち歩きます。この2年ほどは、GEヘルスケア・ジャパン社のVscanを必ず往診かばんに入れていきます。Vscanの本体とプローブを一緒にケースに収めると、小脇に抱えられる程度の大きさと重さで、往診かばんにも入ります。それ以前に、ポータブルな超音波エコーを持っていたのですが、いざ、訪問診療で持ち出そうとすると、大きさも重さも実用的ではありませんでした。

Vscanは小型ながら画像が鮮明で、心臓の弁の動きもチェック可能。患者や家族と一緒に画像を確認し、コミュニケーションも図れる。

 Vscanは小型ながら画像が鮮明で、腹部の状態、腹水や胸水の貯留に加え、心臓の弁の動きも確認できるので、高齢者の心臓の状態、血液循環などをチェックする上で重要な情報が得られます。画像を、患者さんや家族と一緒に確認し、「きちんと元気に動いていますね」といったコミュニケーションも図れます。

終末期の在宅ケアにもVscanは有用
 そうした中、こんな患者さんに出会いました。大正生まれ、90歳代の女性です。2011年8月末に初めて訪問診療しました。80歳代後半から認知症の症状が表れていたそうです。初診時に聴診したところ、左室領域に連続性の心雑音があったため、Vscanで心エコーを行った結果、左室肥厚、大動脈弁の石灰化と狭窄を認めました。すぐに専門医に紹介し、大動脈弁狭窄軽度、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症と診断されました。

 ただ、この患者さんは高齢であることから、在宅での療養を希望されました。心不全でもあるので、具合が急変する可能性があることを説明し、心不全の治療も在宅で継続して行うことなどを家族とも話し合い、納得してもらった上で、私がケアを行うことになりました。それから約半年後の今年2月に急変され、ご自宅で亡くなりました。ご本人は希望通り、最期まで自宅で過ごせたことに満足されていたということです。

 このように、本人や家族が在宅での終末期ケアを希望するケースは増えています。少しでも苦痛の少ないケアを続けるには、本人の心や体の様子を常に注意深く見守る必要があります。それを支える上で、Vscanなど在宅で使える診断機器は有用だと考えています。これからも、自分の知識、経験、技術を総動員し、機器を使いこなし、在宅ケアの質を向上させていくつもりです。