最後に、Vscanを使って診断し、一命を取り留めることができた患者さんについて紹介します。

 ある年の8月の暑い日に、熱中症を心配された60歳代の男性が初診で来院しました。前日に草むしりをしてからフラツキ感が出現し、ずっと続いているとのことでした。ほかには、だるさがあり、下痢を少し認めました。

 既往歴は30歳代での急性肝炎のみ。2カ月前の健診では高血圧を指摘されていましたが、薬は飲みたくないと受診していませんでした。タバコは40本/日、飲酒は焼酎1合/日。血圧は110/70mmHgで、胸部聴診に異常を認めないものの、腹部に拍動性の大きな腫瘤を触知しました。

ベッドサイドでエコー検査ができるVscanの使い道はさまざまで、腹部領域では胆石・尿路結石などの診断も可能。

 そこで、Vscanで腹部を検査したところ、最大径8cmの大動脈瘤であることが確認されました。改めて聞いてみると、3カ月前から本人は気づいていて、次第に増大傾向であり、2週間前に腹痛を認めていたとのことでした。すぐ家族を呼び寄せて、循環器の専門病院への搬送準備に入りました。

 ここで疑問が湧いてきました。高血圧を以前から指摘されていたのに、当日は血圧が低かったからです。単なる脱水か? いや、よく問診してみると、前日より便が少し黒かったとのことでした。そうなると、消化性潰瘍の合併があるのか、あるいは大動脈瘤の消化管穿通か…。いずれにしろ、緊急処置が必要な患者であることだけは確かでした。

 そして、男性は病院に搬送された直後に吐血しました。輸血を受け、緊急の内視鏡検査で出血性胃潰瘍と診断され、クリッピング治療で止血して、一命を取り留めたのです。その後のCT検査では、大動脈瘤は胸部から腹部まで認められましたが、後日、全弓部大動脈人工血管置換術、CABG、腹部大動脈ステントグラフト留置術などを受け、その後は元気に過ごされています。

Vscanは心不全の状態確認などにも有用
 ベッドサイドですぐにエコー検査ができるVscanは、開業医の外来診療では、ほかにもいろいろな使い道があると思います。例えば、循環器領域では心不全の状態確認、カラードップラー機能を活用した心雑音のスクリーニング検査などに有用です。腹部領域では、胆石・尿路結石・卵巣腫瘍・尿閉などが診断可能でした。

 とはいえ、診療所の外来には、様々な診断未確定の病気をお持ちの患者さんが来られます。臨床医になって25年以上になりますが、今でも「臨床は難しい」と実感する毎日です。

 私は「内科の診察では原因疾患が見つからないとき、パンツの中と骨の中を疑え」と考えています。どちらも、外から見ることはできず、触ることも難しい部分です。けれども、臓器や血管は外から見えなくても、超音波エコーで描出することが可能です。コンパクトで迅速に検査可能なVscanを今後も上手に活用することで、診断能力を向上させ、日々の診療のレベルアップを目指していきたいと考えています。