患者さんの生活や仕事を尊重した診療を実現するには、限られた時間で、どれだけの情報を得られるかが鍵になります。問診、診察が診断の柱で、そこに尿・血液・心電図・レントゲン・超音波検査を加えていきます。特に問診では、主訴、つまり患者さんが、「私は○○という病気ではないかと思い、受診した」という動機に着目します。

 例えば、「風邪じゃないかと思う」という患者さんの場合は、なぜ風邪だと思ったのかについて、いろいろな角度から質問します。発熱の状況、咽喉や鼻・咳の具合、胃腸の調子、筋肉や関節などの痛み、ここ数日間の暮らしぶりなどです。それから診察を行い、必要と判断すれば、診療所外来で可能な検査を行います。感染症に関しては流行状況、その他の疾患も気候による発病要因を考慮します。

 これだけで、かなりの病気を疑い、さらに絞り込むことができます。実際、風邪だと思って当院を受診した患者さんの中には、亜急性甲状腺炎、クモ膜下出血、急性骨髄性白血病、HIV感染症などの他疾患が見つかった患者さんもいました。

「問診では患者さんの受診動機に着目します」と語る市川氏。いろいろな角度から質問した上で診察し、必要と判断すれば外来で可能な検査を行う。

Vscanで精密検査の必要性を判断
 どういう状況で受診したのかも、大切な情報です。例えば、仕事を休んで来院した場合、一見軽症のように思えてもそれほど我慢できない症状があるということですから、何か重い病気なのでは?と判断し、診察は慎重に行います。

 「具合が悪くて、昨日、病院に行き、いろいろ検査して大丈夫と言われたが、やはり心配でここに来た」という患者さんも要注意です。この場合は、症状などの問診だけではなく、前日、病院へは歩いて(公共交通機関などで)行ったのか、タクシーで行ったのか、家族と一緒だったか、一人で行ったのか、病院へ行くまでどうしていたのか、などを聞き出します。これらは、病気の重篤さに関する重要な情報になります。また、どんな検査をしたのかも重要です。「たくさん検査した」という場合は、病院の医師も「変だな」と思っていたということです。

 こうしたケースでは、問診、聴診、尿・血液検査に加え、超音波で診断精度を高めるようにしています。精密検査が必要か、あるいは緊急に対応すべきかどうかの有力な判断材料になります。私が用いているのはGEヘルスケア・ジャパン社のVscanです。起動時間が短い上、臓器だけでなく、大動脈や心臓などの様子もすぐに見ることができるので、患者さんの負担も少なくて済みます。

 健康診断目的で来院された患者さんであっても、問診で心筋梗塞を疑い、心電図やVscanなどで診た結果、心筋梗塞だった、という例も何例か経験しています。その患者さんは「胸の痛みは大したことがないのに…」と、私の診断を最初は受け入れられない様子でしたが、症状は軽くて治まっていても心筋梗塞になっていることがあることなどを説明し、病院を緊急受診していただきました。