東京都府中市の府中よつやクリニックは、生活習慣病や腎臓疾患の診療に強みを持つ。総合内科専門医である院長の市川雅氏は、患者の診察を行う際、問診、聴診、尿・血液検査に加え、超音波エコーのVscanで診断精度を高めている。

 生まれ育ったこの地に開業して、ちょうど10年になります。実家は農家で、植物を慈しみ、育てる仕事をする両親のもとで子供時代を過ごしました。こうした環境で育ったこともあり、大学進学のときには、“生き物”を相手にする分野に進みたいと考え、最終的に医学部を選びました。

府中よつやクリニック
2002年10月、東京都府中市に開設。日本内科学会の総合内科専門医である院長の市川雅氏が知識と経験を生かし、内科全般を幅広く診療。特に生活習慣病、甲状腺疾患、腎臓疾患の診療や生活指導に定評がある。
写真:谷上 正幸(他の写真も)

 医学部の入学試験の面接では、「農業は手間をかければかけるほど、いい作物ができる。同じように、人に丁寧に接する医者になりたい」と話しました。この思いは今でも変わっていません。

 農業と医療は、相手も違えばやるべきことも違いますが、共通点があります。農業では、種をまいて、どんなに手間をかけて育てても、突然の天候の急変でそれまでのことが台無しになったりすることがあります。医療でもずっと大事に見守っていた患者さんが、突然、調子を崩してしまうことは少なくありません。

 それだけに、診察を受けに来た患者さんについては、問診、聴診、検査などを通して、少しでも多くの情報を得て、その人全体をきめ細かく知るように心がけています。特に問診は重要です。

患者の価値観を考慮して治療方針を決める
 当院の周辺は、大手電機メーカーの工場や配送センターなど、24時間操業の職場が多い場所です。深夜勤務や残業など、不規則な生活を送らざるを得ない人も当院を受診します。生活習慣病の患者さんもたくさんいますし、体調を崩して駆け込んでくる人もいます。そういう患者さんに「規則正しい生活を心がけてください」とただ話しても、何の説得力もありません。

市川 雅(いちかわ・まさし)氏
1986年慶應義塾大学医学部卒。慶應義塾大学病院、済生会宇都宮病院、東京都国民健康保険団体連合会(現・永生会)南多摩病院を経て、2002年10月府中よつやクリニックを開設。

 ですから、問診では、普段はどんな毎日を送っているのか、仕事は忙しいのか、どんな家族構成なのかなどを、丁寧に聞くことを大切にしています。そうしたやり取りの中から、その患者さんの考え方、価値観、人生観が浮かび上がってきますから、それを基に治療方針を決めていきます。

 例えば、夜勤明けに早く寝ようとして酒を飲み、結果的にたくさん飲んでから寝るようになってしまい、生活習慣病になる患者さんがいます。しかし、「飲み過ぎは良くない」「就寝2時間前には飲食を控えるように」といきなり口にするだけの患者指導は、患者さんの気分を害するだけで、信頼されることはなく、患者さんの生活習慣の改善に役立たないことも少なくありません。まず、「お酒が好きなんですね」「お強いですね」と受け入れるところから、治療は始まります。

 症状から想起される通り一遍の問診や検査データだけでは、こうした診療はできません。その人を知り、考え方を尊重し、現在の仕事を続けながら、病気とどう折り合いをつけていくかを、一緒に考えることが重要だと考えています。これが、かかりつけ医(内科開業医)として、私が目指している診療スタイルです。