【医療情報学連合大会】熊本大会長が「病院情報システム“Back to the Future”」を講演

第31回医療情報学連合大会(第12回日本医療情報学会学術大会)@鹿児島

 第31回医療情報学連合大会(大会テーマ:医療の情報維新は薩摩から/学術テーマ:臨床実践に活かす情報の創造)が11月21日から3日間、鹿児島市民文化ホール・鹿児島サンロイヤルホテル・南日本新聞社みなみホールで開催された。大会長の熊本一郎氏(鹿児島大学副学長、同大学医学部附属病院病院長)は、大会長講演で「病院情報システムの今までとこれから」と題し、米映画の“Back to the Future”になぞらえて、鹿児島大学病院の病院情報システムのIT化への取り組みの歴史を語った。
 
●84年にオーダリング導入、病院のBPRを実践で雑務から解放
 

大会長の熊本一郎氏(鹿児島大学副学長、同大学医学部附属病院病院長)

 鹿児島大学病院は、1984年に既設の大学病院として最初にオーダリングシステムを導入した。その後、87年に看護支援システム、92年に物流システム、93年には患者の個人消費まで追跡できる物流医事請求システム、97年には手術オーダー・実施管理システムを導入。98年には大学病院としてはいち早くデータウエアハウスを構築するなど、積極的にIT化を推進してきた。熊本氏は、その過程で病院情報システムが果たしてきた役割とその価値について振り返った。

 「医事・検査部門へのコンピュータ導入は、部門業務の省力化・効率化に役立つものだったが、オーダリングシステムで一気にデータの一元化・共有化・標準化が進み、情報の質が向上したことで部門間連携が促進された」と指摘。「オーダリングシステムによる病院のシステム化は、伝票の重複記載や転記入力、必要な情報のリストアップ、曖昧な情報の再確認といった単純作業や雑務に近い仕事から職員を解放して、本来の職能を活かした医療サービスの実現に寄与した。当時よく使われた表現を使えば、ハイテクによるハイタッチの実現だった」と説明した。

 また、1990年に元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマーが提唱したビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)を引き合いにして、「病院情報システムを構築してきた過程は、まさしく病院のBPRだった。従来の硬直した病院機能をあらためて情報化の視点で見直し、業務内容、業務フロー、組織構造を分析し、最適化されたことはIT技術の効果以上に医療サービスの向上に貢献した」という。

 膠着化した病院機能の改善に寄与した病院情報システムは、さらにバーコードの活用などによる実施(データ)入力でリスクマネジメント支援、医療安全の担保としての役割を担うようになった。加えて、病院経営データのシステム化の基盤となり、病院経営の分析、見える化を大いに推進している、と熊本氏は強調した。

●事業継続性を担保するBCPやBCMを視野にシステム構築を
 

会場の文化ホールの窓からは桜島の勇姿が拝める

 続いて、データウエアハウス構築について触れた。熊本氏は、蓄積してきたデータの後利用を目的にデータウエアハウスを構築したことは、見える化によりさまざまな病院経営の分析が可能になったことと、薬剤疫学データウエアハウスによるデータマイニングなどの分析手法を活用して、薬剤の有害事象のシグナル検知などが可能になってきたこと、などを指摘。

「急性期病院へのDPC制度の導入により、DPC/PDPSの情報を活用して病院経営のシステム化を急速に進め ることができた。さらに、DPC別のコスト計算や、管理会計システムの運用などへ展開されてきている。医療ではEBM(Evidence Based Medicine)の推進が言われるが、(病院経営では)Evidence Based ManagementのEBMが非常に重要だと考えるようになった」と述べた。

 また、鹿児島大学と附属病院のIT化に関する具体的な取り組みとして、IT活用による安心と安全の提供、医療・看護サービスの可視化、分析に特化した経営支援をビジネスとする学内ベンチャー「かごしま医療ITセンター」(社長:宇都由美子、医療情報部部長)を紹介。看護度A・B・C分類をさらに細分化したデータを蓄積してきた看護システム、電子カルテシステムの「e-kanja記録」、さらに医療情報・医用データの患者への開示や医療施設間の連携、患者と医師がインターネットを利用して診療録を共有できる「ITKarte」などの概略を説明した。

 最後に熊本氏は、東日本大震災で多くの医療機関で医療情報が消失したことを受けて、「最近では、ハードウエアトラブルや一時的な停電などによるシステム停止は回避できる仕組みは整備されている。しかし、こうした診療機能継続のための対策だけでなく、事業継続性を担保するBCP(Business Continuity Plan)、BCM(Business Continuity Management)を強く意識したシステムのあり方を考えていく必要がある」と訴えた。

(増田 克善=デジタルヘルスOnline/日経メディカルオンライン委嘱ライター)

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