月間2500件の往診日程を最適化する訪問診療支援システム−板橋区役所前診療所

FileMakerカンファレンス2011

板橋区役所前診療所の浅海直氏(右)とスプラッシュの有ヶ谷薫氏

 FileMakerカンファレンス2011(11月9〜10日)のメディカルトラックで、板橋区役所前診療所(東京都板橋区)が、患者情報データベースや往診スケジュール管理を統合・情報一元化したファイルメーカー製品による訪問診療支援システムを紹介した。患者情報、在宅往診日程、施設往診日程などの情報を一元的に管理可能にし、往診スケジューリングなどで業務改善を実現している。

 板橋区役所前診療所(島田潔院長)は、1996年に医師、看護師、事務員の3人で開業した、24時間対応の訪問診療を専門とする在宅療養支援診療所だ。往診患者数は、在宅患者約700人、施設入居患者約500人で、月間約2500件の往診を行っている。現在、57人(非常勤を含む)のスタッフが対応している。「75歳以上の患者さんが59%、90歳以上が22%を占めており、要介護度3〜5の方も非常に多い。周辺に同様の訪問診療所が少ないため、近年は板橋区内のみならず、近隣の区・市の通院困難者に対しても往診している」と、同診療所医師の浅海直氏は述べた。

●月間2500件の往診には3つのシステムの連携が不可欠

 これまで同診療所では、独自開発の在宅患向け往診スケジュール管理システム、スタッフがExcelで作成した施設患者向け往診スケジュール管理ツール、FileMaker Proによる患者情報データベースの3つの独立したシステムを運用していた。3つの個別システムのデータは連携されておらず、患者名などの基本情報をすべて別々に入力・更新しなければならないなど、運用に大変な手間がかかっていた。

 また、患者情報を外出先で参照するために、小型のモバイルPC(富士通LOOX)に患者情報データベースをコピーして各医師が携行していた。週1回、スタッフがデスクトップPCのFileMaker ProからUSBメモリーを使って、各モバイルPC1台ずつに更新データを配布している状態だった。

 FileMakerを使って3つのシステムを統合し、関連情報を一元化したのが、訪問診療支援システム「Beluga」だ。システム機能のハイライトとして紹介されたのが、訪問診療スケジュールの作成・管理機能である。「月間2500件、各往診時間30分単位の往診予定を毎月1件ずつ立てていくのは大変な作業。定期的な往診を行っているので、ある程度システムで予定作成を自動化して、スケジューリングをサポートできるようにした」。開発を担当したスプラッシュの有ヶ谷薫氏は、Belugaの特徴の1つをこう説明した。

 往診予定の自動作成ルールは、「4週サイクル」と「月サイクル」という往診パターンをベースにしている。「多くの在宅患者さんは標準的に隔週で往診予定を組むが、患者さんによっては5週ある月は3回の場合と、月2回の場合がある。例えば、隔週で実施する医療処置がない場合は、月2回の往診予定になる。患者ごとに4週サイクルと月サイクルを設定して、自動的に基本スケジュールを作成している」(浅海氏)という。一方、施設往診の場合は、施設ごとにあらかじめ往診日、担当医師が決まっているため、入居患者リストからカレンダーにドラッグ&ドロップして患者名を割り当てていく。

 在宅患者の訪問診療スケジュール作成では、担当する医師の予定と患者の予定をあらかじめ登録しておき、自動作成した往診予定日と両者いずれかの予定が重なった場合に、アラート表示により一目で分かるようにした。多くの患者は、デイサービスやリハビリ予定の日などパターンが決まっていることが多いため、事前登録が可能という。

●予定が重なるとカラー表示に、ドラッグ&ドロップで簡単に変更可能

往診予定作成画面上で、自動作成した往診予定日に患者の都合が重なった時に、患者名の背景が赤く表示される。同様に医師の予定と重なると、医師名の背景が緑になる。そうした場合には、ドラッグ&ドロップで往診予定日を変更できる。その際に、もともと往診不可の日はピンク色で表示されるため、赤・緑・ピンク表示のない日付を選んで予定調整する。一目でそれぞれの都合が把握できるので、往診予定日の調整が非常に効率的になったという。

 往診時にはiPadを携行するが、FileMaker Goを使って患者情報を参照できるようにした。FileMaker ServerとiPadのデータ同期は、任意の時間に医師自身がシステムにログインして簡単にできるようにした。更新作業が楽になったのに加えて、最新の患者データを常に持ち歩くことが可能になった。

 浅海氏は、「往診途中に、診療所経由で予定外の患者さんの往診依頼連絡が入ることも多く、すべての患者情報を参照できる環境は不可欠だ。外出先でも、患者さんの服薬状況や前回往診した医師の記載情報など最新のデータをiPadで参照できるようになった。また、以前は地図帳を開いて訪問宅の場所を確認していたが、iPadに地図データを入れたので非常に便利になった」と述べた。

(増田 克善=デジタルヘルスOnline/日経メディカルオンライン委嘱ライター)


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