面会者管理ITシステムでコスト削減と行列解消を実現

シンガポールのタン・トク・セン病院のケース

ロー・ステファン氏

 C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2011(NEC、NEC C&Cシステムユーザー会主催)が、11月10日、11日の2日間、都内で開催された。その中で、シンガポール第二の公立総合病院、タン・トク・セン病院のデピュティー・チーフ・オペレーティング・オフィサーであるロー・ステファン氏が、同病院の導入した訪問客管理システムについて講演した。

●160年以上の歴史を持つシンガポール第二の公立総合病院

 シンガポールの公立総合病院 タン・トク・セン病院では、SARSや新型インフルエンザなど脅威となる感染病の発生を機に、入院患者の面会者を厳密に管理する必要性が生じていた。そこで、面会者に書類に必要事項を記入してもらい、許可証を発行するシステムを開始したが、処理に時間がかかるため病院ロビーに長い行列ができ、この業務のためだけに100人もの専任スタッフが必要となっていた。

 そこで同病院では、キヨスク端末、入退管理ゲートなどのハードウェアを用いながら、ITで面会者管理を行うVisitor Facilitation SysetemをNECと共同開発。新システム導入によって、年間50万ドルのコストを削減するとともに、患者の保護と長い行列解消を両方とも達成した。

 タン・トク・セン病院は、1844年に設立されたシンガポールの公立病院である。当時のシンガポールでは、ある程度の水準以上の医療を受けることができたのは富裕層のみだった。だが、一般の民衆に医療を提供するために、タン・トク・センという篤志家がこの病院を建設した。現在でも保険補助で診療を受ける患者が8割、私費で診療を受ける2割と、“貧しい人に尽くす”創設当時の精神が受け継がれている。病院の業容は拡大の一途をたどり、今では国で2番目に大きな総合病院となっている。27の臨床診療科目を持ち、入院病床数1515、ICU病床79、6000人以上のスタッフをかかえる。

●患者の安全を守るため必要だった面会者管理

 同病院は、Centers for Disease Control and Prevention(疾病予防管理センター、以下、CDC)を保有。2003年にSARSが大流行した際には、国から公式にSARS対策病院としてして指定され、蔓延防止の最前線に立ってきた。それでも死亡者はシンガポール全体で33人に上った。2009年に発生した新型インフルエンザでも、変種ウイルスが次々出現する中、“静かな戦い”に全力で立ち向かっていたという。

 対策を取る上で、面会者の存在が大きなリスクとなっていた。シンガポールでは、親戚や友人を病院に見舞うことが習慣化しており、いつも患者のベッドのまわりは人であふれる状況になる。同病院は1病室につき6床が標準設計なのだが、面会者で満杯になってしまうこともあるという。感染病が流行している時期には、潜在的な保菌者が感染源となってしまうリスクもあった。タン・トク・セン病院で、1日あたり平均1万1000人、1カ月に30万人もの面会者がいるという。
 

Visitor Facilitation System導入後の様子

 そうした中、新型インフルエンザ拡大を懸念したシンガポール保健省から、すべての面会者、医療関係者をスクリーニングするようタン・トク・セン病院へ通達が来た。何らかの感染が疑われる事態になった時に、疑わしい面会者とすぐ連絡が取れるように管理を行う必要性が生じたのである。

 面会者管理は、同病院にとっても重要な課題だった。タン・トク・セン病院の副COOであるロー氏は次のように語る。「当病院が“より速く、より優れた、より安価で、より安全に”という、トヨタの品質管理にならった病院経営をめざしている。医療の世界では、解決策の不在は患者の死につながりかねない。患者に脅威を与えるプロセスは、早急に排除する必要があった」。

●最初に導入したシール&スタンプ方式は失敗、2回目はITシステムを導入

 同病院はまず、訪れた面会者に自ら住所、名前、連絡先などを書いて登録してもらい、面会許可証となるシールとスタンプを発行するという方法を導入した。シールは毎日色を変え、その日だけ有効にするなど工夫を凝らしたのだが、結果としてうまくいかなかった。

 登録や入院患者の照会などで1人あたり15分程度かかるため、病院にはいつも面会登録者の長い行列ができた。列に並ぶ人々の間で、トラブルが発生することもあった。やがて、この行列を嫌った面会者の間で、シールとスタンプを交換する者が現れ始めたのに加えて、シールやスタンプを代理で取得して販売する業者まで現れた。病院側にとっても、このシステムを維持するために100人以上の専任スタッフが必要で、コスト負担が大きかった。

 そこでITを活用して、新しいシステムを開発しようということになり公開入札を実施。複数の応札者の中から、最終的にNECを選んだ。公立病院であるだけに同病院にはプロジェクトの失敗は許されないという思いがあったが、提案の完成度と国際的な知名度の2つの面で、NECに安心感を抱いたという。

●IT活用で年間50万ドルのコスト削減と長い行列の解消を実現

 新しく開発された面会者管理システム Visitor Facilitation System(以下、VFS)は、キヨスク端末、入退管理ゲートをハードウェアに採用したWebアプリケーションシステムである。入院患者への面会者は、以下の3つの方法のいずれかの方法で登録を行う。

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