【国際福祉機器展2011】NICTが高齢者や障害者向け生活支援ICTを一堂に紹介

 東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展2011では、情報通信研究機構(NICT)が成果発表を実施した。同時に、高齢者や障害者向け生活支援のICT研究開発助成事業である、平成22年度「高齢者・チャレンジド向け通信・放送サービス充実研究開発助成事業」と「チャレンジド向け通信・放送役務提供・開発推進助成事業」の助成対象事業者(14社)のデモ展示を行った。

 NICTの「高齢者・チャレンジド向け通信・放送サービス充実研究開発助成事業」は、高齢者・障害者の利便性向上を目的とした通信・放送サービスの研究開発を行う企業に資金の一部を助成するもの。また、「チャレンジド向け通信・放送役務提供・開発推進助成事業」(情報バリアフリー助成事業)は、身体上の障害のため通信・放送役務を利用するのに支障のある人が円滑に利用できるようにするために、通信・放送役務を提供・開発する企業に対して、資金の一部を助成するもの。毎年、公募のうえ対象事業を採択している。

シャープの高齢者運動機能回復支援システム

 高齢者・障害者向けのICT研究開発助成事業としては、シャープが「高速通信ネットワークとウェアラブルセンシング技術を用いた、高齢者運動機能回復支援システムの研究開発」をデモ展示した。

 高齢者運動機能回復支援システムは、高齢者が自宅やデイサービス事業所などで、医師・理学療法士による運動指導を安全、簡便に受けられるようにするもの。高速通信ネットワークを用いてリアルタイムで双方向動画通信が可能な医療機関端末と家庭端末システム、測定機器(ウェアラブルセンサー)、評価アルゴリズムの研究開発からなる。ウェアラブルセンサーと家庭用血圧計のデータは、コンティニュア規格に基づくBluetooth通信により在宅用端末で受信し、医療機関側に伝送される仕組みだ。

 医療機関側に設置された端末では、機能回復のための運動コンテンツの処方、運動履歴の確認、機能回復のためのアドバイスなどの機能を持ち、リアルタイムに遠隔指導する。利用者は、高速通信ネットワークを介して処方された運動コンテンツの映像を見ながら機能回復訓練を行い、その様子(映像)を医療機関側の端末で確認できる。

 運動を行う際には、加速度センサーを内蔵した測定機器を腕や脚に装着して行い、そのデータと運動の前後に測定する血圧・脈拍数・呼吸数のデータも医療機関側に伝送される。実証実験では、足踏み動作や立ち上り動作から取得したウェアラブルセンサーの情報を解析することで、歩行に関係がある筋力や柔軟性などとの相関から転倒予測アルゴリズムの研究まで実施したという。

コープかながわのデジタルペンを利用した訪問介護支援システム

 コープかながわの福祉事業部は、訪問介護のヘルパー業務を支援する、「インターネット上申し送り情報共有システムの開発」と「話題自動配信ネットワーク」についてデモ展示した。前者は訪問介護をしたヘルパーが被介護者の状況を次回担当のヘルパーに申し送りできるシステム。手書きした内容が電子化・記憶できるデジタルペンを利用して訪問介護記録を専用紙に記入し、専用クレードルを介してデジタルペンの情報を申し送り情報共有サーバーに転送する。次回訪問するヘルパーの携帯電話に申し送り事項として配信される仕組みだ。

 訪問介護記録・申し送り事項は携帯電話に直接入力してサーバーに送信もできるが、デジタルペンの方が簡便性が高く、介護記録業務の効率化が図られた。また、ヘルパーの自宅にPC、デジタルペン用クーイドル、インターネット環境を整備すれば、直行・直帰が可能になり、移動時間のムダをなくすことができるという。

 話題自動配信ネットワークは、被介護者との日常の会話に生かすことのできる話題を、ヘルパーの携帯電話に配信するシステム。高齢の被介護者との共通の話題を選び、ヘルパーへ配信することにより、コミュニケーションが苦手なヘルパーを支援するもの。コープかながわでは、現在200人のヘルパーがデジタルペンを利用した実証実験を実施し、約450人が2つの訪問介護支援システムを実用しているという。

 テックファームは、2種類のデモ展示を実施した。「多機能携帯電話(スマートフォン)を活用した障害者支援ICT技術の研究開発」として、各種の家電リモコンをiPadで操作する障害者向け生活支援アプリと、マイクに息を吹きかける動作でiPad上のソフトキーボードを操作する「ブレスコントロール機能」を搭載したTwitter投稿用アプリ「息鳥」である。

 同社は携帯電話やインターネット、業務支援向けシステムソリューションの開発・運用サービスを提供する企業。障害者向け生活支援システムは、慶應義塾大学医学部のリハビリテーション医学教室、月が瀬リハビリテーションセンター、同大学理工学部との産学共同研究開発によるもの。

 障害者向け生活支援アプリは、車いす利用者や手の機能が不自由な人が、家電の電源、音量、明るさなどのリモコン操作ができるようにするもの。家庭内にある数多くの家電リモコンを1つでコントロールできる市販装置(学習リモコン)と連携し、iPadの画面から実施する。iPadでの操作方法は、家電のイラスト、音量や明るさなど制御したい機能イラスト(アイコン)が画面に大きく表示され、画面全体で機能選択・決定ボタンになる「フリック」、あるいは端末の傾きや自動切り替え、音声などによって操作できるという。

 「息鳥」は、iPadにマイクを接続して、キーボード画面上(50音)のカーソル移動に従って、入力したい文字にカーソルが合ったところでマイクに息を吹きかけると文字を入力できるアプリ。手指や言語に障害を持つ人も、Twitterの投稿や閲覧を楽しめるようにしたものだ。同アプリはすでに製品化されており、App Storeから無料でダウンロードできる。

 このほか、視聴覚障害者向け音声ガイド・字幕記述のための標準仕様(日本IBM)、複数の視覚障害者によるリアルタイム要約筆記作業支援技術(NECシステムテクノロジー)、デジタル放送に対応したリアルタイム字幕を適切なタイミングで表示する字幕制作装置と受信装置(エル・エス・アイジャパン)など、様々な研究開発事業が展示された。

(増田 克善=日経メディカルオンライン/デジタルヘルスOnline委嘱ライター)

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