【HCIF】日本版EHR事業「処方せん情報の電子化・医薬連携」について報告

ヘルスケア・イノベーション・フォーラム 第6回、第7回治験IT化部会開催

厚生労働省 社会保障担当参事官室 室長補佐の中安一幸氏

 ヘルスケア・イノベーション・フォーラムの治験IT化部会は、第6回が8月30日に香川県高松市で、第7回が9月12日に東京都江東区の産業総合研究所臨海副都心センターで、それぞれ開催された。

 最大のテーマは、高松市を中心に実施される総務省による電子処方せんプロジェクト。これは総務省のプロジェクトで、正式には同省の日本版EHR事業推進委員会で、3つのフィールドでの実証実験実施を決定した。フィールド1は「処方せん情報の電子化・医薬連携」、フィールド2は「医療・介護連携」(広島県尾道市など)、フィールド3は「共通診察券・救急連携」(島根県出雲市など)で、高松市はフィールド1の実験場に指定された。

 第6回では、厚生労働省 社会保障担当参事官室 室長補佐の中安一幸氏が、このプロジェクトについて前回に引き続いて解説した(前回の記事はこちら)。「処方せん情報の電子化・医薬連携」事業では、沖縄県浦添地域で行った健康情報活用基盤実証事業における「処方せんの電子化プロジェクト」の仕様を前提として、処方・調剤・服薬情報の連携システムを開発する、処方せんの記述にはHL7 CDA R2に準拠したXMLを使用し専用のASPサービスを用いる、などの概要を説明。「浦添では1対1で実施していたが、香川ではn対nで実施する」(中安氏)のが最大の特徴である。また、これまで高松市で実施していた文部科学省の病薬連携プロジェクトのコンセプトも踏襲する。

●セキュリティと暗号化には普遍的な技術を採用

 同プロジェクトは現在システム設計の段階にあるが、中安氏はこれまでに決定した仕様について解説した。「50時間近くかけて検討作業を進めた。法律、医師や看護師などの動線や作業内容、患者の動線や待ち時間など、全方面から細かく検討を加えた」と中安氏は説明する。現在も、データのやり取りなどのインタフェースを作成中で、「データ連係テストを経て、10月には画面をお見せできると思う」(中安氏)。

 具体的には、処方せん情報を保持する連携用のサーバーは、内部からも外部からもファイアウォールで隔離されたDMZ(非武装地帯)に置く。医師による調剤結果の参照は、電子カルテに取り込んで読めないと意味がないし、オーダーと実施が異なる場合は次回処方に生かすためにそのデータが反映されている必要があるので、病院情報システムに取り込めるHL7 CDA R2(患者診療情報を提供する標準的な規格)を利用する。

 また、医療機関・薬局による服用結果の参照については、電子カレンダーに患者が服用したかどうかチェックをつける方法で実施するが、コストの大きさや工程の難易度などから病院情報システムへのデータの取り込みは仕様として実施しないことを決定。「画面参照して服用したかどうか確認できればいいので、取り扱いが容易なHTMLデータで実施する」(中安氏)。

 通信面では、「ガイドラインでは通信はVPN、IPsecとIKEを推奨しているが、今回の実証実験に限りSSLを採用した」と中安氏。薬局は企業としては小規模なところが多いため、参加を容易にするために経済的な負担のかからないSSLを許容した。また暗号化プロトコルTLS(Transport Layer Security)も、バージョン1.2が普及するなど利用環境が整った場合速やかに移行するという前提で、バージョン1.0の利用を可とした。
 
 第7回でも、香川大学特任教授の原量宏氏が同プロジェクトに関して講演した。同氏は医師や薬剤師の立場から「現状では、調剤薬局で薬剤師が患者から処方箋を手渡されても、病名も検査情報もわからない。これで適切な服薬指導ができるわけはない」と主張した。

 実はこれまで香川大学が中心となって、電子処方せん、電子お薬手帳のプロジェクトを3年間進めてきた。調剤薬局に対して処方情報だけでなく電子カルテの情報閲覧を可能にすることで、正確な情報をもとに薬剤師が副作用などを考慮しながら調剤できるようにする目的がある。総務省のプロジェクトは、これを引き継ぐ形で実施される。

●7病院、4診療所、40の調剤薬局が参加、PHR実現に必要なプロジェクト

 原氏は、「総務省からの補助金を受けて、高松市を中心に7病院、4診療所、40の調剤薬局が参加して実証実験を行っている」と紹介。具体的に扱う情報は、患者の基本情報、処方指示情報、処方実施情報、処方指示に付帯する患者の病歴、アレルギーなどの情報、自治体の実施する健診情報。正確性を期すため、データは電子カルテシステムからHL7 CDA R2フォーマットで、ネットワーク経由のやり取りを基本とする。電子カルテシステムを持たない医療機関では、レセコンのデータを活用する考え。調剤薬局でのレセコンへの情報入力は、業務負荷軽減のため2次元バーコードでの取り込みを構想している。

 原氏は「将来は、スマートフォンなど患者の携帯端末に電子処方箋データを“Webお薬手帳”として提供することも可能で、PHR(Personal Health Record)実現につながる意義あるプロジェクト。さらなる関心を寄せてほしい」と訴えた。

 このほか、「臨床試験、製造販売後調査における医用波形の効率的活用」と題して、日本CRO協会 IT化ワーキンググループ 大門宏行氏が、デジタルデータとしての医用波形が持つ潜在的な可能性を、「KMIX-UMINCDISC 標準連携プロジェクトの概要−医師主導型治験を中心として−」と題して、CDISC標準によるインターネットを介した医療機関連携の現状について、東京大学UMINセンター教授 木内貴弘氏が講演を行った。

(吉田 育代=委嘱ライター、本間 康裕=医療とIT/デジタルヘルスOnline)

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