【ホスピタルショウ】患者の状態に適応したパスシステムを実証実験

患者状態適応型パス統合化システムで医療安全と質の保証を目指す

PCAPSの開発コンセプト・構造を解説した東京大学の水流氏

 2011年7月13〜15日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2011」のプレゼンテーションセミナーで、東京大学大学院工学系研究科教授の水流聡子氏が、患者状態適応型パスシステム(PCAPS=Patient Condition Adaptive Path System)を用いた医療プロセスの標準化と質向上の概念・方法論を解説。実装試験を実施している飯塚病院(福岡県飯塚市)の脳神経外科部長 名取良弘氏が、硬膜下血腫におけるシステム運用事例を紹介した。同システムの開発には、京セラコミュニケーションシステムと京セラ丸善インテグレーションが協力している。

 PCAPSは、2004年に東京大学工学系研究科のPCAPS研究会(研究会代表:飯塚悦功教授)の研究事業としてスタートした。「品質工学の手法を医療に応用し、患者の状態に沿った多様な診療を可能にする手法」に基づいて、パス統合化システムの開発が進められている。特長は、患者状態適応型で管理する点にある。患者状態の変化に応じた計画変更や合併症への対応など、幅広い計画診療の実行を可能にするという。

 PCAPSは、診療プロセスの全貌を可視化するPCAPS臨床プロセスチャートと、患者の状態局面で目標状態に到達のためにどのような医療行為を実施・監視するか管理するPCAPSユニットシートを、システムの基本構成としている。開発コンセプトについて、水流氏は「医療の質保証のために、診療の多様化への対応としてプロセスの類型化を行い、各種診療ガイドラインを組み込んだ標準化コンテンツを作成すると同時に、状態適応型医療介入のプロセス管理ができる仕組み」と説明する。

 PCAPSは、疾患ごとに患者の病状変化に対応する多くの分岐を持った臨床プロセスチャートを持っている。それぞれの具体的な治療フェーズをモデル化したモジュールで、検査や観察の結果特に重要な患者状態を監視・抽出し、その値が上限・下限のしきい値を超えたときに条件付き指示を駆動して安定化させていく。「これの繰り返しをロジカルに突き詰めていき、条件付き指示のプールを作る。それを患者状態に合わせて、早期発見・即時対応できることが重要。PCAPSは、可能な限りあらゆる分岐を想定した計画をコンテンツとして持っている」(水流氏)。

 標準化PCAPSコンテンツの開発には、約200人(そのうち医師が7割)が携わり、コンテンツ作成支援システムによって標準臨床プロセスチャートや治療ユニットを作成。そのコンテンツを複数の病院で検証調査を行い、利用可能であることを確認した後に標準コンテンツとして収録しているという。各病院はそれを使って、臨床プロセスチャートの構造を原則として変えずに、自分の病院の標準コンテンツに仕立てていくことが可能だ、と水流氏は述べた。

 こうして完成した院内標準コンテンツを基に、患者ごとに詳細な治療計画を立てた後、実施フェーズ(運用フェーズ)をPCAPS運用支援システム(PCAPS-Administrator)が担うことになる。飯塚病院の名取氏はその実際の運用について、慢性硬膜下血腫患者の緊急手術から退院までのプロセスに関連して解説した。

 名取氏はPCAPSの有用性について、「当院の脳外科として、流れ(診療プロセスチャート)を1つに決めたが、これが結果的に良かった。入院、手術前準備、HCU・ICUでの管理、退院・転院というフローなら、慢性硬膜下血腫を含むすべての疾患がこのパスに入る可能性が高い。また、計画時に設定した安静度の指示における見極めが正しかったかどうか後で検証できるし、院内の統計データも簡単に取得できる。分析ツールとしても非常に便利」と指摘した。

 PCAPSの実装コンテンツ充実を図ることを目的とした実装試験が、今年既に始まっている。具体的には、飯塚病院の慢性硬膜下血腫モデル(脳外科)に加えて、循環器(虚血性疾患)・神経内科(脳梗塞、血糖管理)は聖マリアンナ病院(川崎市)、周産期(母胎管理・新生児管理)はトヨタ記念病院(愛知県豊田市)、小児科は慈恵医大青戸病院(東京都葛飾区)などとなっている。

(増田 克善=日経メディカルオンライン/デジタルヘルスOnline委嘱ライター

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