【ホスピタルショウ】医療現場でタブレット端末を効果的に活用

「国際モダンホスピタルショウ2011」カンファレンスレポート

 2011年7月13〜15日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2011」では、連日カンファレンスやセミナーが数多く開かれた。今回は、タブレット端末をはじめとするモバイル端末が医療現場で利用されるようになってきたことを受け、「医療現場を支援するタブレット端末の効果的活用」と題したトピックカンファレンスが行われた。

 救急医療の現場でiPadを活用する佐賀県の「99さがネット」、在宅医療でiPadを利用する和歌山県伊都医師会の地域医療連携事業「ゆめ病院」、解剖学実習にiPod touchを活用する群馬大学大学院から、それぞれの現場におけるタブレット端末の活用方法や有用性などが報告された。

●救急車内で素早く搬送先病院検索が可能、時間ロスを短縮

救急医療情報システムにおけるiPad活用を紹介した佐賀県健康福祉部医務課の円城寺雄介氏

 救急医療情報システム「99さがネット」におけるiPadの活用例について、佐賀大学医学部附属病院の救命救急センター長 阪本雄一朗氏と佐賀県の健康福祉部医務課医療支援担当主査 円城寺雄介氏が講演した。同県では、患者を搬送する病院の決定にiPadを活用している。2011年4月から県内のすべての救急車にiPadを配備し、救急隊員が社内で「99さがネット」で管理する救急病院の医療リソースにアクセスして利用している。

 iPadの配備前に円城寺氏らは、どのようなデバイスが最適であるかを救急隊と議論した。円城寺氏はiPadを採用した理由を、「モバイルPCは狭い救急車内に置くスペースもなく、搬送中にキーボード操作をしている暇はないと、搭載に対して猛反発を受けた。一方、スマートフォンは小さすぎて操作がしにくく、入力に時間がかかる。また、携帯端末の操作は、患者さんの家族に遊んでいるという誤解を与えかねないと反対された。そうした経緯の中でiPadは、人気が出てきたことによる斬新性、適度なサイズによる操作性、用途範囲の拡大が見込める汎用性という点で優位性があり、救急隊員も受け入れに寛容だった」と述べた。

リニューアルした「99さがネット」の運用効果を解説する佐賀大学医学部附属病院の阪本雄一朗氏

 「99さがネット」では、救命救急士が病状に基づいて医療機関を検索すると、最新の搬送日時と本日の搬送実績数と同時に、疾患別患者受け入れの可否などの最新情報が閲覧できること。「何時何分に更新された情報であるかが表示され、1日以上更新されていない医療機関については最下部に黒色で表示される。従来のシステムでは新しい情報と古い情報が混在していたため、救急隊員から受け入れに関する情報の信頼性の低さを指摘されていたが、これを解決した」(円城寺氏)。また、医療機関が受け入れの可否を○×で登録するだけでなく、「積極的に受け入れる」というアイコンを設置。その日の専門医の勤務状況、医療機関の特性を考慮した上で、細かい意思表示ができるように設定した。

 救急隊側では、患者搬送後にいつ、どこで、どのような患者を、どの病院に搬送したかをiPadで入力する。他の救急隊が病院検索した際に、その病院の直近5件の受け入れ状況を見られるのに加えて、また受け入れなかった理由も参照できる。「例えば、5分間にベッドが満床で受け入れられなかった病院がわかっていれば、その病院に搬送依頼をするムダが省ける。病院に1回電話すると5分近く時間がかかるため、直帰の受け入れ状況は非常に重要」(円城寺氏)と、機能の有効性を述べた。

 救急患者を受け入れた医療機関は、患者の疾病名や最終的な転帰情報を入力する。「搬送から病院での処置、その後の状況まで、つまり救急の入り口から出口まで一貫した情報を可視化できる」(円城寺氏)という。

 最後に阪本氏は、運用3カ月間のデータと救急隊員と医療機関に対するアンケート結果を紹介した。その中で、4月の初めの時点で2カ所の基幹病院に搬送が集中していたものが、システムの運用が進むにつれ、従来は搬送数が少なかった病院にも搬送されるようになり、患者受け入れの分散化が進んだという。「推測だが、例えば脳血管疾患の患者だけは受け入れる、こういう病状の患者には対応できる、といった積極的受け入れの意思表示機能が有効に作用したと考えられる」(阪本氏)と分析した。

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