「SaaS型電子カルテ」を選んだ理由は?−第一号ユーザーに聞く

 7月13日〜15日に東京ビッグサイトで開催された国際モダンホスピタルショウで、NECは「MegaOakSR for SaaS」をメイン商品の1つとして展示した。この商品は、電子カルテ、オーダリング、看護システムという主要な機能をネットワーク経由で提供するSaaS型の電子カルテシステム。診療情報は病院内のサーバールームでなく、病院外にあるデータセンター内で管理する。主な対象は100床以下の小規模病院で、NECは2013年度までに500機関への導入を目指している。
 
 今年4月1日に利用を開始した第一号ユーザーが、岡山県倉敷市にある医療法人賀新会 玉島第一病院(http://www.newelder.jp/)である。導入サポートは、NECと提携している岡山情報処理センター(OEC)が行った。病院側で導入を担当した同病院副院長の西山武氏に、導入の動機や使い勝手などについて聞いた。


−なぜSaaS型の電子カルテを選択したのですか。

 SaaS型電子カルテが、私の悩みを解消するものだったからです。これまで大規模な病院や大学病院での勤務経験もありますが、院内にサーバーを置く形態は基幹病院でないと採用が難しい、現実的には小規模病院では無理なのではと感じていました。

玉島第一病院副院長の西山武氏

 最大の問題はコストです。導入時はもちろんですが、維持コストもばかにならない。常にサーバールームはエアコンで冷やさなければなりませんし、メンテナンス担当の業者へ支払う費用もあります。サーバー自体5年10年で買い換える必要がありますし、ソフトウエアがバージョンアップすればそれに対応する費用が生じます。専任の担当者も必要になるでしょう。つまり、導入するのはいいのですが、その後かかる費用が小規模病院にとっては天井知らずと思えるほどの金額になる。院内サーバー形態では、導入して運用し続ける自信がなかったですね。

 一方、MegaOakSR for SaaSなら、月額の利用料金を支払えばよい。サーバーは所有しないので入れ替え費用はかかりませんし、ソフトウエア(サービス)のバージョンアップは利用料金に含まれています。

−玉島第一病院はどんな病院ですか。

 いわゆる“街の病院”です。今回は、病院に加えて同じ建物に入居している老人保健施設でカルテを導入しました。規模は77床、常勤医師は3人で、実父の院長、副院長の私ともう1人老人保健施設担当の医師がいます。非常勤医師は約20人で、コメディカルが病院で約80人、老人保健施設で約150人働いています。私と院長は整形外科医で、介護関連施設などもあり、患者は高齢者が中心です。基幹病院での治療を終えて、リハビリのために来院する患者が多いですね。

−SaaS型電子カルテ導入以前、病院内のIT化はどんな状況だったのですか。

 4月1日に利用を開始しましたが、それ以前は完全に紙カルテでした。レセコンとPACSだけ既に導入していました。現在、OECグループが販売しているグループウエアを利用しているのですが、使い始めたのが昨年8月でそれ以前はインターネット接続環境がありませんでした。

 実は、後を継ぐために今年4月に病院に帰ってくることが決まり、それをいい機会ととらえて必要なシステムは全部入れてしまおうと決心しました。それに、薬剤管理や看護支援などシステム単位で別々に挿入するとメンテナンスが大変なので、一気に入れてしまおうと思いました。電子カルテシステム導入にあたっては、3社から提案を受けて、スタッフにもアンケートを取るなどした結果、NECの「MegaOakSR for SaaS」に決めました。

 電子カルテを導入しようと思ったのは、診療記録をはじめ薬剤管理、看護支援などのシステムが、今後の病院経営に必須だと考えたからです。近い将来、地域医療連携が始まった場合にも、カルテを電子化していないと対応できないでしょう。

 医師の立場から言えば、手書きで記入する紙カルテの方が、特に外来患者の場合は楽です。ただし、紙のカルテは閲覧性が低く、情報共有が困難なのが問題です。例えば、長く通院している患者は、最初のころとは病名や薬が変わっていることがよくあります。紙カルテだとこれを追跡するのが大変なのですが、電子カルテなら容易に経年変化を追うことができます。

−利用形態や利用状況、使い勝手などについて教えてください。

 月単位で利用料金を支払っています。これまで勤務医時代に聞いていた導入例など比べると、割安感は確かに感じます。現在利用しているのは、診療機能、オーダリング機能、看護支援機能です。PACSシステムと接続したので、画像は閲覧できます。検査システムとは接続作業中です。レセコンは、今回の電子カルテ導入時に入れ替えました。

 使い勝手に関しては、SaaSだから悪いという点は今のところありません。速いとも遅いとも思いません。カスタマイズが基本的にできないという点がデメリットですが、料金を支払わなくても自動的にバージョンアップされるメリットの方が大きいと考えています。

 セキュリティに関しても、特に不安はありません。システムからの情報漏えいよりも、病院内で職員の人的ミスから漏れる危険性の方が遙かに高いと考えています。なおOECとは、2か月に1回のペースで反省会を開き、書類にして状況や要望を伝えています。


玉島第一病院の外観

 ただ正直言って、院長をはじめとする高齢の医師は、電子カルテの作業に苦しんでいるようです。一方、看護師などは命じてもいないのに独自に勉強会を開いたりして、非常に積極的です。もしかしたら、導入を待っていたのかもしれません。既にグループウエアの利用経験があったことも、良い方に作用したようです。

−導入の際にコストはかからなかったのですか。

 当院の場合、ネット環境どころかPCもなかったので、それなりに初期コストがかかりました。PC42台とプリンター26台を購入、グループウエア導入と院内LAN敷設、電子カルテ利用のためのIP-VPNサービス新規契約などです。PACSとの接続費用や、レセコンを入れ替えたことによるデータ移し替え費用など、思わぬコストも生じました。

 ただし、総体的に見れば低コストで導入できたと言えます。院内サーバー型電子カルテシステムを一から導入すると、初期コストが通常2億円程度かかると言われます。金額は言えないのですが、今回はそれよりかなり低いコストですみました。

※導入を報じたニュース記事は(こちら)。

(本間康裕=医療とIT/デジタルヘルスOnline

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