【医療情報学会】医療現場でiPadなど携帯端末を活用する事例を紹介

第15回日本医療情報学会春季学術大会:シンポジウム

東京都立広尾病院の小児科医長 山本康仁氏

 最後に登壇した東京都立広尾病院の小児科医長 山本康仁氏は、「携帯端末を利用した災害時モバイル診療録参照システム」について報告した。同システム開発の動機を山本氏は、「災害時医療では、災害発生期の救急医療の後、避難所の患者を病院に転送する際に、すでに電子化・蓄積されている診療データをいかに搬送先病院に引き継ぐかが課題。既往症や疾病治療リスト、処方情報、アレルギー情報、保健情報など電子カルテシステムから抽出した情報を、(通信インフラが遮断された状況下で)搬送先病院が容易に参照できるモバイル診療録参照システムを検討した」と述べた。

 同システムは、「構造化されたデータにシンプルな操作ができるビューアを実装し、あたかも医用画像にDICOMビューアを同梱したCD-ROMのようなもの。誰でも簡単に必要な診療録データを、スタンドアローンで参照できる」(山本氏)。診療録参照ビューアの開発には、HTML 5とCSS(カスケード・スタイル・シート)、Javaスクリプトを利用してビューアソフトをライブラリーとして作成。それをFileMaker Goでハンドリングして、iPadで参照できるようにした。診療録参照ビューアの画面構成は、外来概要、入院時外来状況、入院時のサマリー、検体検査の結果リストなど「単純な項目・内容に絞って、Webブラウザと同じような操作感」(山本氏)を実現している。

 また同病院ではFileMakerをプラットフォームとするデータウェアハウス、データマートが稼動しており、電子カルテシステム(富士通のEGMAIN-EX)からリアルタイムにデータを抽出して再構築している。診療録のデータとしてそのデータをiPadに転送しているという。

 一方、iPadに格納したデータと患者のひも付けには二次元バーコード(QRコード)を利用した。「避難所などでは、患者IDを発行してカードを作成することが困難なため、スタンドアローンのiPadでQRコードを生成し、プリントアウトまでできる仕組みを構築。搬送先で患者データを検索する際に、QRコードをiPadの内蔵カメラなどで読み取って、認証できるよう工夫した」と山本氏は説明した。

 シンポジウムでは、座長を務めた名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター長の吉田茂氏が、自身が開発した小児科クリニック向けの新生児健診システムを紹介した。同システムもFileMakerで開発した健診データベースシステムであり、健診時の問診票をiPad上に構成し、母親に渡して入力してもらう。「問診票のコンテンツは、母子手帳に記されている質問に加え、母親が気にしそうな質問を用意し、選択形式で入力できるようにした」(吉田氏)。また、画面上の隠しボタンからしかアクセスできない医療スタッフ専用のインタフェースを作成。スタッフが各項目をチェックした後で、データが電子カルテシステムに転送させるように工夫している。

(増田 克善=日経メディカルオンライン/デジタルヘルスOnline委嘱ライター)

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