各省庁が今年度の取り組みを説明――JAMINAセミナー2011

経産省、内閣官房、総務省、厚労省が登壇、地域医療連携・EHR中心に実証事業など

 NPO法人 日本医療情報ネットワーク協会(JAMINA)が4月に開催したJAMINAセミナー2011(第一報はこちら)では、医療分野における各省庁のこれまでの取り組みと、2011年度の事業概要についての報告があった。日本の医療分野のIT投資は国民医療費の1%程度だが、先行する欧米諸国は2〜4%程度。差は拡大傾向にある。医療サービスの充実のため国全体として医療分野のIT投資を推進していく必要があり、関係省庁の連携した政策がカギを握っている。

●医療情報化促進事業が予算増、タスクフォース設置

 経済産業省 商務情報政策局 医療・福祉機器産業室室長 竹上嗣郎氏は、2010年度に同省が立ち上げた「医療情報化促進事業」の概要と進捗状況を報告した。同事業は、昨年5、6月に政府が策定した「新成長戦略」と「新たな情報通信技術戦略」の行程に沿って、ITを活用してすべての国民が地域を問わず質の高い医療サービスを受けられる社会の実現を図る具体的な取り組みである。

 「当初は2011年度予算として昨年夏に概算要求した事業だが、重点施策として2010年度の補正予算に計上された。予算額も当初の約3億円から15億円に増額され、2010年度中に着手することになった」(竹上氏)。この事業内容は、「どこでもMY病院構想」と「シームレスな地域連携医療」2つの施策からなる。

 竹上氏は、同事業により実証データを収集・使用し、健康・医療情報を共有する際のフォーマットや標準約款、個人情報の取り扱いに関するガイドライン、情報提供・活用における責任分界の明確化などのルール化を最大目標とすると述べた。続いてその実証フィールドとして、78件の公募から10件程度を採択したと述べた。
 
 

経済産業省 商務情報政策局 医療・福祉機器産業室室長 竹上嗣郎氏の講演資料より

 
 
 「応募案件の中には非常に先進的な取り組み提案もあったが、あくまで全国に展開する上でのルール作りができるかどうかを採択の基準とした」(竹上氏)。採択された実証事業はすでに契約締結も終わり、今後1年もしくは2〜3年かけて実施される。「2011年度末には、ある一定の標準なり、ルール化のめどが付けられるよう成果を出していく」(竹上氏)と述べた。
 

内閣官房 情報通信技術(IT)担当室 内閣参事官 野口聡氏

 IT戦略本部で決定された「新たな情報通信技術戦略」の医療分野における具体的な取り組みを議論する場として、「医療情報化に関するタスクフォース」(主査:岐阜大学大学院教授 小倉真治氏)が2010年8月に設置されている。内閣官房 情報通信技術(IT)担当室 内閣参事官 野口聡氏は、今年3月まで10回にわたって開催された同タスクフォースの「報告書案」を紹介した(関係省庁と未調整のためセミナー開催時は“報告書案”)。

 医療情報化に関するタスクフォースでは、どこでもMY病院構想の実現、シームレスな地域連携医療の実現、レセプト情報等の活用による医療の効率化の3点について、内容を深く議論してきた。どこでもMY病院については、当初の戦略発表時は抽象的でさまざまな可能性のある構想だったが、具体化する上で機能を絞り込み、実現性を高めるために2回目の会合から医師会や薬剤師会に参加を要請した。「現場の声として、医療機関から協力が得られることから始めないと実現しないという指摘があり、初診時に役立つ服用している薬の情報や、地域で問題になっている生活習慣病などに特化した形で取り扱っていくこととした」(野口氏)。

●「どこでもMY病院」サービス運営の担い手は?

 タスクフォースで大きな議論になったのは、どこでもMY病院サービスは誰が担っていくのかという点だった。IT戦略本部が当初発表した資料では、民間サービスとしての可能性を含めて検討するという点が盛り込まれたため、サービス事業者主導で進められることが危惧された。

 「個人情報の中でも最も機微な医療情報を、きちんと管理するためには、やはり従来同様運営主体は医療機関や保険者、それらから委託を受けた情報処理事業者・サービスプロバイダー(SaaS事業者)などに限定してスタートすべきという結論になった。また、場合によっては個人が運営主体を変えることも想定されるので、ポータビリティを確保する必要があるという議論も出た」(野口氏)。

 さらに、蓄積されたデータはどのような活用が認められるのかという議論については、基本的には一次的な活用に留め、別に厚労省の有識者会議で議論しているレセプト情報の活用に関して一定の結論が出た段階で、それに準じる形で二次利用の道を開いていくとタスクフォースの結論を説明した。

総務省情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通高度化推進室室長 吉田恭子氏

 総務省の医療・健康分野の情報化に関する取り組みについては、同省情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通高度化推進室室長 吉田恭子氏が報告した。同省の重点的な取り組みは、健康情報活用基盤(日本版EHR)の確立・整備、遠隔医療の推進、ユビキタスネット医療の普及の3施策。また、災害対策を踏まえたデータの外部保存を目的とした医療機関向けSaaSの推進にも言及した。

 健康情報活用基盤構築事業として2011年度は、約2億円の予算が計上されており、4月18日から公募が始まっている。「2008年度から2010年度まで、沖縄県浦添市で三省共同の実証実験を実施してきたが、その成果を踏まえて本年度は広域でのEHR構築事業を予定している。そのため、少なくとも2〜3の自治体にまたがり、医療クラウドを視野に入れて医療機関、薬局、自治体で健康情報を集約・活用していくことをコンセプトにしている」(吉田氏)という。

 また、ユビキタス健康医療技術推進事業では、2009年度から3カ年計画で推進しており、本年度は約1億5000万円を予算計上。吉田氏は、秋田大学医学部附属病院におけるベッドサイドでの注射業務での電子タグ活用、京都大学医学部附属病院におけるセンサーネット対応機器によるバイタル記録業務の自動化などの実証事業を紹介するとともに、今後は在宅での健康状態モニタリングにもユビキタスネット技術を拡大していくと述べた。

 一方、医療機関向けのASP・SaaS活用については、厚労省と連携して「ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」を一昨年に策定、昨年12月に改訂第2版を出している。「東日本大震災での医療データ消失被害を踏まえて、各医療機関はデータを安全なデータセンターに外部保管することを真剣に考えて行く必要がある。そうした際に、ガイドラインの存在意義が明らかになる」(吉田氏)と述べた。

 各省庁のこれまでの取り組みを発表するセッションで、最後に登壇した厚生労働省 医政局 研究開発振興課 医療技術情報推進室長補佐 野口貴史氏は、主に医療技術情報推進室の取り組みについて述べた。医療機器の相互運用性の確保を目的とした情報連携のための標準化、HPKI(医療公開鍵基盤)など安全な情報連携のための基盤整備、遠隔医療やユビキタス健康医療技術など情報共有化と連携推進、蓄積される医療情報の活用など各事業について、これまでに実施・策定したガイドラインを簡潔に説明した。

(増田 克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)

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