医療現場でのスマートフォンとアプリ活用事例を紹介――さくら総合病院、小倉第一病院

さくら総合病院理事長・院長の小林勝正氏

 ソフトバンクテレコムは、今年2月から3月にかけて、東京、名古屋、大阪の3カ所で「医療現場におけるスマートフォン最新活用事例セミナー2011」を開催した。医療現場におけるスマートフォンの効果的な活用方法や活用事例に関する講演が行われた。ここでは、名古屋で開催されたセミナーの内容を紹介する。

 医療法人医仁会さくら総合病院(愛知県丹羽郡大口町)理事長・院長の小林勝正氏は、同病院でiPadを活用している事例について講演した。さくら総合病院は、一般病棟(199床)と療養病棟(152床)を有するケアミックス病院。すでに、愛知医大放射線科の専門医に治療応援を要請する仕組みを構築している。具体的には、読影の依頼時には医師に電話とメールで連絡し、医師はインターネットVPNを経由して病院のサーバーにアクセスして救急搬送されてきた患者や外来患者の画像を読影する。

ドクターカーにiPadを持ち込み、地図を見ながら表示された救援地点に向かう

 今回の講演では、新たに取り組んでいる救急医療現場でのiPad活用事例について取り上げた。同病院はドクターカー(レスキューカー)を所有しており、以前から地元の消防の要請に応じて救命活動も行っている。今回、こうした救命活動出動でのiPad活用を開始した。

 具体的には、「消防が救命要請と同時にGoogle Map上で救援地点を表示させ、ドクターカーはiPadで地図を確認しながら現場に急行する」(小林氏)。地点が明確に分かるのに加えて、最適ルート表示もあるため、以前よりスムーズに現場での救命活動に入れるようになったという。講演では、トラックの追突事故での救命活動など現場を撮影した動画を見せながら解説するなど、迫力ある事例紹介となった。このほか小林氏は、医師や看護師がiPadをベッド脇まで持ち込んで、CTやMRI画像を見せて入院患者に病状や術後の経過について説明している事例なども紹介した。
 

小倉第一病院MIT部長の隈本寿一氏

 続いて、医療法人真鶴会小倉第一病院(福岡県北九州市)MIT部長の隈本寿一氏が、スマートフォンを利用した看護教育の試みについて解説した。同病院では、iPad・iPhoneを看護師に携帯させ、15種類のアプリを利用して看護の実務や教育に活用している。トラブルシューティングなど、67のコンテンツを利用できるという。

 情報検索ではアプリを4つ利用している。総合薬検索は、薬品の情報を検索できるアプリ。「利用した実感では、処方薬の7割、市販薬の5割程度を網羅している。ちょっとした検索に重宝している」(隈本氏)。Google Mobile Appでは、主にニュースを検索する。「ソフトウエアキーボードが苦手な人は、音声検索を利用できるので便利」(隈本氏)。このほか、キーワードに一致する検索結果が見つかるとメールが届くGoogleアラート、現在話題のトピックがブックマークされた数が多い順に表示されるはてなブックマーク(iPhoneでは、はてなタッチ)を利用している。「医療に関するニュースや情報などを、手元ですぐに検索して閲覧できる」と隈本氏は説明する。
 
 画像や動画系では、Eye-FiとFlickrを組み合わせて利用している。Eye-Fiは、画像を無線LAN経由でPCやオンライン画像保存サービスなどに転送する機能を持つ。SDカードやデジタルカメラをPCに接続して、データを転送する作業が不要になる。iPhoneからのデータ転送も、無線LAN経由で簡単にできる。Flickrは、オンライン画像共有サービスで、データを共有できる。加えて、コメントの書き込み、キーワード付与、段階的な公開設定、画像検索など、アップロードした画像や動画を編集する機能がある。このほか、YouTubeを、腎臓透析の際の穿刺の様子を動画で見るなどのeラーニング用に使っている。
 

小倉第一病院でiPhoneやiPadにインストールして利用しているアプリ群

 クラウドコンピューティング的な要素を持つアプリも利用している。Dropboxはオンラインストレージシステムで、フォルダにファイルをドラッグすると自動的にWeb 上にアップロードできる。データの定期的自動バックアップや、複数のPCやスマートフォンの間で自動的にデータの同期が可能。過って削除や上書きをしてしまったファイルの復元も可能だ。SugarSyncやEvernoteなど同類のアプリも併用している。

 また、無線LANを経由してPCからiPhoneにデータを保存・転送できるAir Sharing、同様の保存・転送機能に加えて大容量のPDFを閲覧できるGood Reader(共に有料)も使用。この2つを利用して、透析装置の停電時対策マニュアルや操作シミュレーター、トラブルシューティングなどのマニュアルを管理している。iTunesでは、ポッドキャストで講義内容の録音が聞けるようにしている。

 隈本氏は「こうしたアプリを上手に利用すれば、医療や看護の水準向上につながる。加えて、iPhoneなら常にポケットの中に入れておけば情報をすぐに見られるし、iPadも患者に動画などを見せながら指導ができる。しかもアプリは無料のものがほとんどで、iPhoneやiPadの導入コストも小さい」と、スマートフォンなど携帯情報端末の活用の意義を強調した。

 このほか同セミナーでは、TNアクセスコーチングの奥山美奈氏による看護教育に関する講演、ソフトバンクモバイルやウィルコムによる企業の導入事例紹介が行われた。

(本間 康裕=医療とIT)

ページの先頭へ戻る

関連記事

Information PR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 認知症ではないと診断した患者が事故を起こしたら医… プライマリケア医のための認知症診療講座 FBシェア数:393
  2. 免許更新の認知症診断に医療機関は対応できるか リポート◎3・12道交法改正で対象者は年間5万人 FBシェア数:94
  3. 言葉の遅れに「様子を見ましょう」では不十分 泣かせない小児診療ABC FBシェア数:121
  4. 院長の「腹心」看護師の厳しすぎる指導で退職者続出 院長を悩ます職員トラブル大研究 FBシェア数:4
  5. 「在宅患者への24時間対応」はやっぱり無理? 日医、かかりつけ医機能と在宅医療についての診療所調査結果を公表 FBシェア数:45
  6. 医療過失の95%を回避する術、教えます 記者の眼 FBシェア数:93
  7. 検査キットに振り回されるインフルエンザ診断 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:574
  8. 58歳男性。口唇の皮疹 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  9. 「認知症の診断=絶望」としないために インタビュー◎これまでの生活を続けられるような自立支援を FBシェア数:59
  10. 「名門」を出てもその先は自分次第 木川英の「救急クリニック24時」 FBシェア数:176