北里大学病院の村田氏と浜松医科大学の木村氏が医療ITについて講演――NEC医療セミナー2011東京

北里大学病院病院長補佐の村田晃一郎氏

 NECは、大阪でのセミナーの翌週である2月25日、「NEC医療セミナー2011東京」を開催した。今回は、大阪と東京で異なる講演内容で実施した。東京では、北里大学病院病院長補佐の村田晃一郎氏が「医療現場におけるマネジメントサイクルについて−参照と評価の連鎖−」と題して、日本医療情報学会(JAMI)理事長の浜松医科大学医療情報部教授木村通男氏が「医療情報の歴史とこれからなすべきもの」と題した講演を行った。

●医療現場のマネジメントサイクルを補完する仕組みがポイント

 村田氏は講演の冒頭で、慢性疾患患者の増加や年間約30万人のがん患者が社会復帰できるようになったことなどにより長期の病歴管理の必要性が増しており、データマネジメントの変革に迫られている、と指摘。「医療費抑制のために医療機関の機能分化、急性期病院の診療の高速化が進み、医療実務のマネジメントサイクルの最適化・高速化が求められている。また、災害によるデータ消失リスクなどを考えると、これまでのように病院単体で医療データを保存・管理するのは限界がある」と主張した。

 村田氏は「このような状況下で、まず病院がなすべきことはITガバナンスの厳格化。要するに『医療と経営が両立可能なITシステムを構築する』こと」だと言う。しかし、システムの信頼性を確保して情報を長期保存し、可用性も担保するとなると、コスト面で難題が生じる。「結局、(医療業界も)クラウドコンピューティングの世界に追い込まれていくのでは」と村田氏は述べた。

 続いて、医療実務のマネジメントサイクルについては触れた。POS(Problem Oriented System)のSOAPと、一般的なマネジメントサイクルであるPDCAの各フェーズを比較し、医療の場合はC→A→P→Dという流れがあり、これが診療のスパイラルモデルとして回されることで医療の質、最適化につながっていくと指摘した。

 同時に村田氏は、「診療のスパイラルモデルでは、こうしたCAPDサイクルを回すだけでは足りない」という。「医療スタッフは、患者のプロファイルを確認し、現在の状態をチェックし、方針の確認しながらオーダー情報を入力するので、あらゆる情報を素早く参照できることが非常に重要になる」と述べ、CAPDサイクルを補完する参照系の仕組みが必要だと指摘した。その一例として、電子カルテの患者情報を要約して閲覧できる患者プロフィール、検温とオーダーをマトリクスで参照するオーバービュー、システムをまたいでデータ参照できる新参照系システム、iPadを使ったベッドサイドでの情報閲覧システムなどを紹介した。

●これからの医療情報の進展には「失敗の報告」が必要

浜松医科大学医療情報部教授の木村通男氏

 続いて講演した浜松医科大学医療情報部教授の木村通男氏は、まず昨年11月の第30回医療情報学連合大会での講演内容に触れた。医療情報システムの黎明期について解説し、現在までの評価を木村氏自身が行ったもので、今後5年の医療情報学の課題として木村氏は、「失敗がもっと報告されないと進化しない」と強調した。「従来、医療情報システムは国立大学や省庁の後押しで推進してきた。失敗の報告で誰かが責任を問われるため、うまく動かなくても失敗と見なされていない。失敗がきちんと報告され,検証されることが重要だ」と主張した。

 続いて、今年1月〜2月に開催された、可搬型媒体(CD-R)による画像情報連携の現状と問題解決を考察するワークショップ、「医療分野におけるID等に関する政策研究ワークショップ、診療データ連係と診療責任のあり方を考えるシンポジウム」について言及。特にこの中で、CD-Rに記録した画像情報が連携先で読み込めないケースが多いことに関して、IHEコネクタソンPDI(Portable Data for Imaging)に合格したCD-R以外は使わないことを強調した。

 また、データをやり取りする際にCD-R表面に何も記していない「白いCD」が見受けられることについて触れ、「白いCD は作る側は患者取り違いのリスクを、受け取る側はIT汚染リスクがある。リスクを放置し、他の施設にもリスク要因を与えるような医療施設には、医療安全や地域医療を語る資格はない」と一刀両断。JAMIが開発した「PDI一次チェックツール」(無償配布)を紹介した。

 医療分野におけるID利用について木村氏は、「納税者番号、年金番号、健康保険番号、医療記録のどこまでを共通IDとするか、リンクさせるかが問題。(日本はどの病院でも診療してもらえる)フリーアクセスがあり、自費診療が可能である以上、国民は医療記録を一元化されない権利がある。医療記録番号は他の番号とは別のものであるべきだ」と強調した。

(増田 克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)

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