2次医療圏統計/地図表示ソフト、「今までなかったのが不思議」

開発主導した国際医療福祉大学大学院教授高橋泰氏に聞く

 医療情報提供企業のウェルネスがこの1月から提供を開始した全国2次医療圏の統計情報/地図表示ツール(本サイトで既報)が注目されている。本ツールを考案し、手弁当でウェルネスとの共同開発にも携わったのが、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授の高橋泰氏だ。開発の経緯と狙い、今後の展望を聞いた。

国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授の高橋泰氏

――データベース公開の反響はいかがですか。
高橋 1月11日の公開以来、2月3日現在のダウンロード数は、全国病院一覧・2次医療圏基礎データが5888回、地図表示機能の「巧見(たくみ)くん」とサマリー作成機能の「作万理(さまり)くん」が計4439回となっています(ダウンロードはウェルネス社サイトのこちらへ)。

――開発のきっかけは。
高橋 昨年3月、ある勉強会で、「B3シナリオ」(自民党福田内閣当時に発足した社会保障国民会議が示した最も積極的な医療・介護改革)が進んだ場合、東京都の医療・介護費がどうなるかを調べることになりました。ところが試算の基になるデータがなく、東京の市町村別データを整理して2次医療圏データをまとめました。その全国版が欲しいと考えたのが、今回公開したデータベースを作成した直接の契機です。

 その後、厚生労働省と内閣府に出向き、作成の意向を伝えて協力を求めました。しかし、両省ともまとまったデータを持っておらず、しかも予算は次年度4月からの執行になってしまうということでした。そこで、いち早く作りたいと考えて提携先を探した結果、ウェルネスの協力を得ることができ、わずか3カ月という短期間、しかも無償でデータベースを構築できました。

 この2次医療圏データベースを有償提供としていたら、利用は激減してしまうでしょう。なるべく多くの方に、日本の将来像を描くツールとして使ってほしいと考えています。本データベースを使うことにより、わが国では高齢者が増え、人口が減少し、各医療圏が厳しい状況にあること、医療圏ごとの格差が激しいことを知ってもらうことができます。

――2次医療圏情報の重要性を説明してください。
高橋 2次医療圏は全国に349あります。医療提供を考える上で、都道府県だと粗すぎますが市町村では細かすぎます。2次医療圏という単位は扱いやすいと思います。なお、今回公開した初期版では、埼玉県の変更措置を反映するのが間に合わなかったため。2次医療圏は348になっています。

 ただし、2次医療圏と一口に言っても、個々の指標には大きな差違があります。例えば面積は、北海道の十勝医療圏が1万828km2、愛知県の尾張中部が42km2で約258倍の違いがあります。人口は大阪市が最も多く261万4324人、最も少ないのは隠岐の2万2077人で118倍です。面積あたりの医師数に至っては、最大と最小で実に1万5000倍の差があります。

――有用性について教えてください。
高橋 このデータベースがあると、自分たちの医療圏の位置づけを知ることができます。行政や医療経営などに関わる方々には、ぜひ、このデータベースで遊んでほしいと思います。今後、このツールが医療分野だけでなく、商業店舗の展開の検討といった、思いがけない使われ方をされる可能性もあります。

――今後の計画は。
高橋 データベースは今後、メンテナンスし続けていきます。第1回の更新は今年4月に行う予定で、介護施設や老健の病床数などを収録したいと考えています。

 将来的には、医療圏ごとの地図情報を提供したいと思います。現在は単なる白地図の色塗りしかできませんが、地図ボタンを押すと代表的な病院が表示されるような機能の追加を検討しています。

 このほか、個々の2次医療圏で流入と流出がどのくらいあるか。すなわち医療圏として閉じて機能しているかを示す機能も必要です。例えば、東京の千代田区、中央区、港区などを含む東京区中央部は、多数の医大病院があって他地区からの受診が多く、医療圏として閉じていません。一方、北海道の十勝医療圏は、流入・流出ともほとんどなく、閉じた医療圏になっています。

 作ってみて改めて有用性を実感しましたが、これまで、こうしたデータなしに医療政策を策定・実施してきたことの方がむしろ不思議です。

(聞き手:中沢 真也=日経メディカル別冊)

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