健康医療のパラダイムシフトのカギを握るユビキタスICT

 NPO法人日本医療情報ネットワーク協会(JAMINA)は12月3日、東京医科歯科大学で、「ユビキタス健康医療社会の実現と医療福祉ICTの今後の方向性について」と題したセミナーを開催した。また、協賛したLeadPhysicianによるヘルスケア市場におけるマーケットリサーチの重要性についての講演も行われた。

●新たな医療へのパラダイムシフト、そのカギとなるユビキタスICT
 

東京医科歯科大学大学院生命情報科学教育部教授の田中博氏

 最初の講演では、JAMINAの理事長である東京医科歯科大学大学院生命情報科学教育部教授の田中博氏が、セミナータイトルにもなっているユビキタス健康医療社会の実現に向けたICTの重要性について述べた。その中で田中氏は、ユビキタスICTが現在の病院情報システムにもたらす変革と、日常生活基盤でのユビキタス健康医療の2つのポイントを指摘した。

 田中氏はこれまでの病院情報システムを振り返って、「オーダーやカルテの電子化は進んだが、患者に対する実施空間がIT化されていない。従来の病院情報システムの外側にある実施空間を、ICTの網でカバーすること。その意味で第4世代の病院情報システムはユビキタス技術が要となる」と述べた。そのユビキタスICTの活用例として、患者や看護師、カート、注射スタンド、医療材料などにアクティブICタグを装着し、ベッドサイドのトリガーアンテナでタグ情報と位置情報を読み取り、実施空間における安全性向上と業務効率化を図る「インテリジェント病棟システム」を説明した。

 また、地域医療の崩壊や慢性疾患の増大といった問題を挙げ、生涯を通じたケアや日常生活で受けるケアの重要性を説き、「生涯継続性のある健康・疾病管理、地域統合性のある医療・健康管理、日常生活圏を基盤にしたユビキタス医療が、新しい医療の3つの軸。こうした医療にパラダイムシフトしていくために、ICTによる共通情報基盤が重要になる」と指摘。特に日常生活圏での慢性疾患管理や健康情報管理において、ユビキタスICTが大きな役割を果たすと主張した。

●世界の医療の方向性に日本の医師の声を反映させる

 続いて登壇したLeadPhysicianを運営するワールドワンの日本法人代表取締役社長である仁賀勝彦氏は、「ヘルスケアグローバル市場におけるマーケットリサーチの重要性」をテーマに講演した。LeadPhysicianは、臨床医療専門家を対象としたグローバルなオンラインコミュニティで、インターネットを使った市場調査を実施し、その結果を依頼主である医薬品メーカーや医療機器メーカーにフィードバックしていくもの。

 仁賀氏は、「医療業界に対する臨床医の方々の意見、そのフィードバックは、医薬品や医療機器の開発を支援するために不可欠な要素。現在ワールドワイドで39万人の医師が参加しているが、日本はまだ5000名程度の参加に留まっている。このままでは世界の医療の方向性に、日本の医療者の声が反映されないという事態に陥りかねない。日本の臨床医も含めてグローバルに調査してほしいという依頼が急増しており、日本法人を設立してパネルメンバーの増加とマーケットリサーチの強化を目指している」と説明した。

 調査方法は、登録されたパネルメンバーである臨床医に調査の詳細と報酬が記述されたメールを送付し、回答はすべてのオンラインで実施。調査に協力した医師には、Amazonの商品券などが謝礼として支払われる。また、オンラインフォーラムへの参加や最新の医療ニュースを得るための医療関連組織の情報を統合したサーチエンジンなども提供するという。

 セミナーではこの他、徳島文理大学香川薬学部准教授の飯原なおみ氏が、「医薬品ライフサイクルとPHRを意識した電子処方せんの開発」と題して講演。病院の医師と調剤薬局の薬剤師とを地域データセンターを介して双方向に結ぶ電子処方せんネットワークシステムと、それを活用した電子お薬手帳について解説した。また、NTT東日本関東病院薬剤部部長の折井孝男氏が、「新たなる医薬品のサプライチェーンを目指して」と題して、抗がん剤の調剤業務および病棟業務を中心に開発した、ICタグ利活用による医薬品のライフサイクル管理システムの構築、実証実験について講演した。

(増田克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)

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