患者の視点に立った医療機関相互の連携を支援――C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2010・セミナー

 エスイーシー(本社・函館市)は、C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2010(東京国際フォーラム・11月11日〜12日)で、「患者のための真の地域医療連携サービスを目指して−ID-Linkを核とした医療機関相互の連携への支援』と題した講演を行った。同講演は、NEC C&Cシステムユーザー会(NUA)が会員を対象に募集したユーザー事例論文で、2010年度特別賞(地域医療貢献賞)を受賞している。

●患者の視点に立った地域医療連携サービスを目指して開発

エスイーシーの盛長志朗氏

 エスイーシーが地域医療連携システムの開発をスタートさせたのは2006年。背景には、2003年に室蘭地区の地域診療情報連携推進事業に参画して開発したシステムで、さまざまな課題が続出したことだったという。「診療情報提供書をWebベースで開示するそのシステムは、提供書を受け取る側にしかメリットがない、情報開示する医療機関の患者番号でしか呼び出せない、最も利用件数の多い診診連携に対応できない、イニシャルコストとランニングコストが高い、といった課題があった。函館市内の基幹病院副院長から、患者さんや病院にとってもっと便利なシステムを一緒に開発しないか、と勧められたことがきっかけだった」。講演したエスイーシー情報処理事業本部医療システム事業部システム部課長代理の盛長志朗氏は、地域医療連携サービス「ID-Link」開発の経緯をこう述べた。

 ID-Linkの特徴は、情報開示施設は開示要求に基づいて診療内容を自院内に設置する公開用サーバーに登録し、アウトソーシングセンターで運用される地域連携サーバーで、それぞれのデータの保管場所情報を管理すること。診療情報そのものを蓄積・管理しないため、セキュリティを担保できる上、診療情報蓄積によるデータ量増大に伴うシステム的な課題を回避でき、コスト低減が実現する。連携先の情報閲覧施設では、複数病院の情報(処方、検査、画像データなど)を一画面上で一元管理でき、患者が受けた診療内容を時系列的にトータルで把握できる。また、地域連携サーバーでは患者・職員(利用者)のIDを管理し、それぞれの医療施設の患者IDをひも付けする機能を持つため、各施設が自院の患者IDを用いて操作できる。

 こうした特徴に加え、病院情報システム・PACSベンダーを問わず連携可能にした点や地域を越えた連携の実現を可能にした点などが評価され、「u-Japanベストプラクティス2008」の総務大臣賞を受賞している。ベンダー間連携について、「現在では主要電子カルテベンダーの8割、主要PACSベンダーの9割と連携可能」(盛長氏)という。

●穏やかに参加施設増加、積極的に情報連携を拡大

 盛長氏は、ID-Linkの具体的な導入事例として、道南地域医療連携協議会(2007年1月設立)が運用する「Medika」の事例(※掲載記事を参照)を紹介した。本格運用開始から2年を経過し、「協議会参加施設は当初の46施設から現在では約70施設に、情報提供施設も7施設へと確実に増加している。導入の効果としては、急性期病院における在院日数の短縮、回復期病院の紹介患者受入数の増加といった定量的な成果に加え、診療内容を開示するという意識から医療行為の適正化、効率改善にもつながっている」と述べた。

 診療情報の開示範囲は、当初のオーダリング(処方、注射、検査)情報、画像情報、診療情報提供書、転科・退院時サマリーから、現在では手術記録や看護連絡書、院外の看護ケアチーム報告書が追加された。「基本的には、病院情報システム内のすべての情報が公開可能。参加施設間の協議でさまざまな帳票が作成されており、それを情報共有する場合もある」と、参加施設が積極的に情報連携しようという姿勢があることを強調した。

 今後のID-Linkの機能強化予定として盛長氏は、どの医療者がどの患者の治療に関わっているかをシステム上に公開する機能、同一患者を治療・ケアしている医療者全員に対するイベント発生時の同報通信機能など、「その患者さんを共同で診ているという共有感を与える機能を追加していく」という。また、システム的な利便性を高めるために、ID-Linkへのシングルサインオンで、メールやスケジュール、テレビ電話などのクラウドサービスと連携できる機能、JAPIC(日本医薬情報センター)などがWebで提供している情報を検索・表示する連携機能も追加を検討している。

●誰のための、誰が使うサービスかを常に意識する

 最後に盛長氏は、これまで各地で地域医療連携プロジェクトに関わってきた中で、「医療連携を強力に推進すれば、囲い込みと誤解される。同時に、競合関係の医療機関は参加を拒否するケースが多い。連携ネットワークへの主に閲覧施設の参加意欲を高めるためには、情報開示する医療機関を増やすこと、地元医師会の賛同を得ることが重要だ」と述べた。

 また、あくまで私的な感想と前置きしたうえで、地域医療連携は補助金事業としてインフラ整備されることが多いが、議論が進んでいくにつれて、“誰のための、誰が使うものか”が無視され、計画だけが一人歩きする傾向がある点を指摘。「特に、医療連携ネットワークを最も利用する医院・診療所の医師が、置いてきぼりにされる状況が目につく。計画の初期段階から診療所の医師が参画し、共同で構築していくという意識が重要と感じている」と語った。同時に、持続可能な事業として取り組むために、3年あるいは5年後のインフラ更新のコストも考慮してスタートすべき、と指摘した。

※エスイーシーが開発・提供するID-Linkは、現在NECおよびシーエスアイ(本社・札幌市)が地域医療連携ソリューションとして販売している。

(増田克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)

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