PHR情報の活用方法について議論が白熱、治験のIT化に関する研究も開始―――ヘルスケア・イノベーション・フォーラム

 7月14日から16日までの3日間、国際モダンホスピタルショウ2010が東京・国際展示場で開催されたが、その中日の15日に「ヘルスケア・イノベーション・フォーラム」が、ホスピタルショウの会場に近い産業技術総合研究所臨海副都心センターで開催された。今回は、第5回目の事例研究部会と同時に、初めての治験IT化部会も開かれた。

●治験IT化部会が初めて開かれる、薬の副作用情報にITを利用

徳島文理大学香川薬学部准教授の飯原なおみ氏の講演中に表示された、副作用の報告数の変化

 第1部は第1回治験IT化部会。医薬品や医療機器の製造販売の際に薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験である治験や、医薬品の副作用情報提供を、IT利用していかに効率化していくかがテーマとなった。

 「副作用情報の収集とこれを活用した薬剤師教育について」というテーマで講演したのが、徳島文理大学香川薬学部准教授の飯原なおみ氏。ある調査では、薬の副作用による被害は入院患者の5人に1人が受けているという結果が出たという。薬の飲み合わせが多くなれば、副作用も増えていくのが当然だ。しかし「実際には、2003年から報告が義務化されたのにもかかわらず、厚労省への医療機関からの報告はほとんど増加していない。副作用の症状である可能性があっても、報告として活かされていない」と飯原氏は指摘する。

 そんな状況下で、臨床現場から質の高い副作用情報をキャッチするためのシステムが、電子処方せんネットワークシステム。香川県内で稼働しているかがわ医療ネットワーク(K-MIX)のネットワークを通じて、香川大学附属病院と調剤薬局を結んでいる。処方だけでなく検査値データも薬局側に送って、薬剤師が副作用情報をキャッチできるようにしている。薬局側が入力した有害事象の報告があると、医者から確認できる。「現在、患者自身が手元で見られるようにしようと、iPhoneなどスマートフォンを用いたシステムを開発中。診療所で、患者が医師に見せることもできる」(飯原氏)。現在は手入力だが、今後はバーコード経由でデータベースに蓄積できるように開発中である。

 また、仕組みだけでは十分でなく、人材も必要という考え方から、薬剤師を対象とした「副作用診断教育プログラム」をeラーニングで提供している。5回のビデオ講座と確認試験からなるプログラムで、春と秋に開講しており、8月31日に秋期受講者募集を開始する。飯原氏は、「医薬品に関して安全性を高めるには、医師も自分の専門外での副作用情報は分からないことが多いので、地域で副作用診断をする組織などを作らなければならない。ITを活用して、情報提供、人材教育、地域連携を進めて、こうした仕組みを実現していきたいと思う」と話を結んだ。

 このほか、東京大学大学院医学系研究科臨床疫学システム講座特任准教授の小出大介氏が、治験IT化の世界的動向について講演。香川大学医学部附属病院医療情報部教授の横井英人氏は、大学からWeb会議システムを通して香川県の治験電子化の状況についてレクチャーを行った。

●PHR・EHRのデータを収集しビジネスモデルの明確化を

「今後の医療の発展や社会的コストの削減に寄与できる、夢のある活動だと考えている」というインテルの田上信介氏

 引き続き行われた第5回事例研究部会では、企業からの発表が目を引いた。まずオムロンヘルスケアの志賀利一氏が、「健康サービス事業者におけるPHR関連情報処理の現状について」と題して、同社の製品群やミッション、事業コンセプトであるホームメディカルケアなどについて解説した。

 続いてインテルの田上信介氏が、同社が主導するコンティニュア・ヘルス・アライアンスの概要と活動について説明した。コンティニュア・ヘルス・アライアンスとは、主に個人が利用する血圧計、体重計といった健康管理機器や医療機関が利用する医療機器と、これらを活用したシステムやサービスの連携により、パーソナルヘルスケアの進展、QOL(生活の質)向上を目指すNPO法人。IT技術を活用して、健康情報を効率的に集約するための標準規格を提唱し、その普及を目指している。

 部会の最後に行われた自由討議では、PHR・EHR構築に必要なデータ項目とその構造について、というテーマで質疑応答が行われた。どんなデータを集めるのか、どうやって使っていくのか、ビジネスとしてどう運営していくのか、などの点について、意見が交わされた。

 オムロンヘルスケアの志賀氏は、「誰が何のためにこんなことをするか、本当に必要な人は誰なのか、を考えなければいけない。つまり、データを集めるだけではなく、ビジネスモデルとターゲットを明確にする必要がある。今は、基本データを蓄積していく段階だと考えている」と指摘し、ビジネスモデル確立の重要性を訴えた。インテルの田上氏は、「過去に例がないので、どんな結果が出るのか現段階では分からない。しかし例えば、運動施設の多い地域の住民のデータ内容が他に比べて良いという結果が出れば、街作りに役立てられる。我々は、今後の医療の発展や社会的コストの削減に寄与できる、夢のある活動だと考えている」と、将来の活用例を引き合いに出しながら、まずはデータの収集ができる環境作りが大切だと強調した。

 このほか、座長である香川大学瀬戸内圏研究センター特任教授・徳島文理大学理工学部臨床工学科教授の原量宏氏の「在宅データの信頼性について」、香川大学医学部附属病院 医療情報部 特命助教の山肩大祐氏による「HL7CDAによる診療情報の連携について」、などの発表も行われた。

(本間康裕=医療とIT 企画編集)

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