遠隔画像診断専門のベンチャー設立し地域ぐるみで取り組む:熊本県のケース――第14回医療情報学会春期学術学会

会場となったサンポートホール高松

 第14回医療情報学会春期学術学会(テーマ:日本版EHRと地域医療情報システムの標準化、主催:一般社団法人日本医療情報学会)が、5月28日、29日の2日間にわたって、香川県高松市のサンポートホール高松で開催された。

 29日のランチョンセミナーでは、「顔の見える地域医療連携を目指して 『遠隔画像診断熊本モデル』の取り組み」と題して、ワイズ・リーディング代表取締役・熊本機能病院放射線科部長の中山善晴氏が、熊本県で3年前から実際に行われている、CTやMRIなどの患者の画像をネットワーク経由で診断する遠隔画像診断について講演した。

 中山氏は「地域に根ざした遠隔画像診断運用を目指して、3年間活動してきた。従来は近隣の病院に出張して画像診断をしていた。しかしこのやり方では、時間のむだが多く、診断医の肉体的負担も大きい。加えて、緊急時の対応ができない、1週間に1度程度しか登院しないので患者への結果説明が遅くなる、などの問題があった」と言う。

●ネットワーク経由で画像診断するベンチャー企業を設立
 

講演者のワイズ・リーディング代表取締役・熊本機能病院放射線科部長の中山善晴氏

 読影医を派遣する側の大学病院や中核病院も、人材不足で他の病院へ人材を派遣するのが難しい状況になってきた。「そこで、医局が中心となって、遠隔画像診断ネットワークを作り、物理的に離れていてもネットを利用してCTなどの画像を診断できる仕組みを考えることになった」と中山氏は述べる。それが、地域医療の質を上げると同時に、放射線科の読影医の負担軽減にもつながると考えたからた。

 3年前にワイズ・リーディングという会社を設立。富士フイルムメディカルと、2008年8月に遠隔画像診断事業運営委託契約を、9月に遠隔読影依頼システムの共同研究契約を締結した。システムは、富士フイルムメディカルの「SYNAPSE Teleradiology」がベース。市内のインキュベーション施設にオフィスを構えて、そこで遠隔地の病院のデータを閲覧して読影する。今年5月の段階で、18病院、12人の読影医と契約し、月に1080例の読影をしている。「当初依頼は少なかったが、ここ1年で急速に増えた。中核病院との契約が多い」(中山氏)。

●画像は専門医が振り分ける。自由選択にしない理由は?
 

熊本県の遠隔画像診断の現状

 続いて中山氏は、画像診断のやり方に言及した。まず、1次読影医の専門性、能力、適正、経験年数、正確などを考えて、放射線科専門医が画像を振り分ける。そしてトランスクライバー、音声認識ソフトなどを活用して、診断書を仕上げる。その後、二次読影医が最終的に内容をチェックする。自由選択にしないのは、比較的診断が簡単なため短い時間で多くの診断ができる頭部のCTに殺到するのを防ぐためだ。加えて「難しい症例と簡単な症例を織り交ぜるようにしている。また、おおざっぱな性格の医師に難しい症例を任せると困るケースが出てくるので、性格も考えて振り分けている」(中山氏)。

 2次読影医を置くのは、見落としのリスクを回避するためだ。できるだけ1次読影医の意見を尊重するが、2次読影医の意見も付け加える。たまに大きなミスがあった場合は、コメントを書き変えることもあるという。「2次読影に対しては、依頼側の評価が非常に高く、とても感謝されている」(中山氏)。

 依頼側や読影医とのコミュニケーションが大切と考えて、レポートの下にコメント機能を設けた。簡単な連絡事項などを載せてやり取りできる。2008年12月から2010年4月までの間に1万5496件診断が行われたが、コメントが付加されたのは405件(2.6%)。内訳は、依頼施設との事務連絡259件、依頼施設より読影結果に対する問い合わせ21件、依頼施設への指導102件、1次読影医と2次読影医の連絡23件、となっている。内容は、装置トラブルのため早期相が撮影されていないことに対する指摘や、レポートでは触れていない画像の陰に対する質問、腹痛の場合ヘルニアや虫垂炎を否定するため骨盤まで撮影が必要という指摘など、多岐にわたる。

 また、1次読影医には、診断結果に対して自信がないときは1、あるときは5というふうに5段階で評価してもらっているという。評価が3以下の場合は、2次読影医に特に注意して読影するように要望している。

 これまでのところ、画像遠隔診断は非常に好評を得ているようだ。「これまでに、2次読影医までいて信頼できる、患者へのサービスになる、セカンドオピニオン的に使える、(自分の病院の)放射線医が若くて未熟なのでチェックしてもらえてありがたい、専門家に依頼できてありがたい、撮影方法のアドバイスをもらえる、などの意見をいただいている」(中山氏)特に、医院やクリニックには、あたかも専属の放射線読影医がいるかのように活用できる点がアピールしているようだ。

●病診連携と遠隔画像診断の融合を図る
 

会場のすぐ裏は瀬戸内海

 今後は、「オンラインで画像を検索できるようにするなど、顔の見える画像診断から顔の見える地域診療へ変革して行きたい」と中山氏。その第1弾として、富士フイルムメディカルの地域医療連携システム「C@RNA Connect」と融合させる構想がある。連携システムを通じて、クリニックからいつでも中核病院の検査を予約できるようにする。検査時に撮影した画像に対しては、ネットワーク経由で専門の読影医が診断し、コメントをつけて中核病院に返す。クリニックからネットワーク経由で中核病院にアクセスして、読影医のコメント付画像をみながら、患者の診察をする。「頼側と読影側の信頼関係を構築していくことが非常に大事。画像の分野は医療連携がやりやすい分野。将来は、ほかの領域でも連携を進めて行ければいい」と中山氏は講演を結んだ。

 講演後の質疑応答では、報酬と緊急時対応についての質問があった。収入に関しては、1件いくらで契約している。その中から医師に払う報酬は、1次読影医には経験の長短などによって支払金額を変えているが、2次読影医は専属スタッフなので固定給にしている。「今後件数が増えた場合は、2次読影医の報酬体系を見直す必要がでてくるかもしれない」(中山氏)。

 緊急の場合は、件名を赤色にして依頼を出し、読影医は赤い表示の要件から対応することになっている。さらに緊急の場合は、電話での連絡も行っているという。悩ましいのは、時間外の場合だ。「現状では、私が自宅の端末で見るようにしている。どうしても無理な場合は断らざるを得ない」(中山氏)という。中山氏は「今後依頼件数が増えたら、対処できないケースが増えるのは目に見えている。今から大学が地域に働きかけて、読影のできる医師を育成していかなければならないと思う」と結んだ。

(本間康裕=医療とIT 企画編集)

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