診療端末からプリンターまでの運用管理をクラウド型サービスとして提供

MOMTECとサイトロックの協業で中小病院向けに展開

 多くの病院で電子カルテシステムをはじめとした医療情報システムを整備しているが、安定した稼働を維持するための運用管理の課題は多い。特に中小規模病院では医療情報システム部門にインフラ管理担当者を置くことは経営的にも難しい。システム機器の障害発生時には構築を担当したシステム会社のフィールドエンジニアによるオンサイト対応に頼っているのが現状だ。こうした課題に対して、医療関連情報システムの構築を手掛けるエム・オー・エム・テクノロジー(以下、MOMTEC)とシステム監視・運用管理の専門会社サイトロックは、インテルvProテクノロジーを活用した医療情報端末をはじめ、病院内のIT機器のリモート運用管理サービスを提供するため協業を開始した。




●システム管理者不在の環境におけるサポートサービスの課題

 MOMTECHは、旧三菱事務機械から分離・独立した2001年以来、富士通のパートナーとして富士通の電子カルテシステムを中心にした医療情報システムの構築と並行して、自社製品である精神病院向け診療支援システム「MOMACE」、病院原価管理システム「MOMHAT」、総合検診システム「LANPEX」などによる医療情報システムの開発から構築、運用サポートサービスを提供している。特にMOMACEは、医療観察法に基づく指定入院医療機関20カ所のすべての病院を中心に多くの精神科病院での導入実績がある。

エム・オー・エム・テクノロジーのシステム統括部統括部長 加藤利典氏

エム・オー・エム・テクノロジーのシステム統括部統括部長 加藤利典氏

 「電子カルテシステムなど病院の基幹系システムは中規模の金融機関の勘定系システムと同程度のシステム規模でありながら、院内にはITの専門家がおらず、特にシステムの運用管理をどうサポートするかが大きな課題」(システム統括部統括部長 加藤利典氏)とし、安定的かつ継続的なシステム運用のためのサポートサービスの方策を模索してきた。MOMACEの運用については、自社でサポートセンターを設置し、システム障害発生時には通報に従って、病院とVPNまたは専用回線を結んでリモート操作による運用サービスを提供している。

 「サーバーは24時間稼動しているのでリモートでの障害対応は可能ですが、外来診療端末はログ取得ツールを導入しているものの、問題のあった端末のログ解析するにしても診療時間外など電源を落した状態ではリモートサポートできないのが現状です」と、加藤氏はサポートサービスの課題を指摘する。また、システムの障害対応だけでなく、管理者不在の環境では通常運用においても迅速なサポートができない場面も多い。例えば、診療端末に次いで病院内に多数あるプリンターの運用でも、日常的に管理する担当がいないケースではトナー切れが起きて現場からの通報によって対応することが多く、オンサイト対応するにしても迅速性が損なわれる。常にプリンターの状態をリモート監視することによって事前にトナー切れなどの時期を予測することで、継続的な運用を維持する体制が求められていた。システム構築から運用サポートまでワンストップでサービスを提供する同社にとって、病院内のIT機器をリモートで監視することは必要最低限の要件ともいえる。

●クラウド型サービスを活用して高品質・低コストのサポートを提供

エム・オー・エム・テクノロジーの代表取締役社長 松永泰正氏

エム・オー・エム・テクノロジーの代表取締役社長 松永泰正氏

 「お客様視点でソリューションを提供する以上、サポートサービスを充実させることは必須です。とはいえ、北は北海道から南は沖縄までの精神科病院をテリトリーとする当社はフィールドサポートを拡大できません。そこで、インフラの運用管理をリモートで実現することが重要になりますが、そのためのプラットフォームを自社で構築・所有することは体力的に困難です。当社の付加価値として充実したサービス展開するために、インフラ管理のプラットフォームをクラウドサービスとして活用することにより、低コストで高い品質のサポートサービスを提供することができると考えています」。MOMTECの松永泰正・代表取締役社長は、サイトロックとの協業の理由をこう述べる。

 この病院内のIT機器の運用管理に活用するソリューションは、サイトロックの「SRS(siteROCK Remote Station)」と「SDP(Service Desk Platform)」という2つのサービスプラットフォームだ。SRSは、病院内のパソコン(診療端末)の運用管理に加え、サーバー、ネットワーク機器、プリンターなどのICT資産を運用管理するプラットフォームをクラウド型で提供するもの。インターネット回線を介して、管理画面から遠隔でICT機器の運用管理業務を実施できるため、離れた場所にあるシステムでもリモートで運用管理業務を行える。電子カルテシステムのサービス監視やパフォーマンス監視、診療端末のセキュリティ監視(ウイルスソフトやセキュリティパッチの状態監視)、インテルvProテクノロジー搭載パソコンの電源管理、資産管理、ソフトウエア配信などの機能を提供する。これにより、電子カルテシステムのサーバーや診療端末のセキュリティを最新の状態に保持したり、診療報酬改定の際のソフトウエア更新などをインターネット経由で実施できる。

 一方、SDPは、サービスデスク業務を支援するために必要なインシデント管理、問題管理、変更管理などをインターネット経由で提供するサービス。これにより、システム障害の現象・対処方法などデータベース化することで、同様の障害発生時に迅速な解決を行えるようになる。

サイトロックの代表取締役社長 荒谷茂伸氏

サイトロックの代表取締役社長 荒谷茂伸氏

 従来、こうした運用管理やサービスデスクの仕組みは、それぞれの企業や組織のコンピュータネットワークの中に導入・構築してきたが、サイトロックのSRSやSDPは同社のプラットフォームを利用してインターネット経由で行えることが最大の特徴。導入・構築のための投資を回避でき、低コストで運用管理が可能になる。

 「IT業界で汎用的に使われている最新の技術を活用することにより、それぞれの病院で個別の運用管理ツールを導入・運用することなく、低コストで安定稼動のための運用管理サービスを提供できます。当社のプラットフォームを利用することにより、サポートサービスを提供するMOMTEC社は内部コストを削減できますし、サービスを受ける病院も結果的に運用管理のためのコスト削減につながり、安定したシステム運用が可能になります」。サイトロックの荒谷茂伸・代表取締役社長は、医療業界のIT運用管理の効率化に向けてMOMTECと協業する意義をこう述べる。

●診療端末に加え、プリンターの運用サポート業務を効率化

 診療端末であるクライアントPCの運用管理は、セキュリティパッチの適用やセキュリティソフトの定義ファイルの更新、電子カルテシステムの端末側マスターの更新、安定稼動のためのログの取得・解析など管理すべき作業は多い。こうした作業をMOMTECがSRSを利用して実施することになるが、「インテルvProテクノロジーによってリモートで電源のON/OFF、再起動ができることは、保守サポートにおいて大きな要素」(荒谷氏)というように、外来診療端末などの夜間の作業も可能になる。

 また、今回のサポートサービスは、プリンターの運用サポートも実施する点が特徴でもある。サイトロックのSRSでは、プリンターの各色のトナー残量や用紙使用量・残量などのステータス情報を取得できるため、トナー切れの時期を予測し、事前にトナーを配送するなど、継続的な運用に備えることができる。「日常的にプリンターの状態を管理している病院は少なく、またその担当者も不在のケースがほとんど。多くはトナーなどが切れてから、あるいはトラブルが起きてから当社に通報されることが多く、診療業務に支障をきたすことがあります。事前に対応できれば、ユーザーの手を煩わせることなく、継続的な運用が可能になります」(加藤氏)とし、業務遅延の軽減することで現場の医療スタッフや患者のストレス軽減に寄与するという。

 セキュリティ上のリスク面から、電子カルテシステムを外部ネットワークに繋がない病院は多い。しかし、いまやインターネットをどの病院でも利用できる環境であり、今後、病診連携などでセキュリティを確保した上でネットワークの外部接続は必然となる。そうした際に診療端末PCの脆弱性をなくし、かつ低コストで効率的な運用を実現していくためには、ネットワークセキュリティを担保したサイトロックのような運用管理ソリューションを活用したMOMTECのサポートサービスは、運用担当者が不在の病院に大きなメリットをもたらすだろう。(増田克善=委嘱ライター)


【記事関連企業情報】
■エム・オー・エム・テクノロジー(MOMTEC)
本社所在地:東京都千代田区神田佐久間町1-9 第7東ビル
設立:2001年3月
URL:http://www.momt.co.jp/
事業内容:医療関連情報システム構築、精神科向け診療支援システム「MOMACE(モムエース)」・病院原価管理システム「MOMHAT(モムハット)」・総合健診システム「LANPEX(ランペックス)の販売・構築・サポートサービスの提供

■サイトロック
本社所在地:東京都中央区八重洲2-8-1
設立:1996年7月
URL:http://www.siterock.co.jp/
事業内容:システムの24時間365日の運用・監視・管理の統合サービス、システム運用に関わるコンサルティング

(編集部注:文中の社名、および肩書き等は、2009年12月1日取材時点のものです)

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