NECヘルスケアソリューション事業の強化ポイントと新サービス

トータルなヘルスケアサービスを提供できる社会に向けて

 NECは2009年11月6日、プライベート・イベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2009」(会場:東京国際フォーラム)のテーマ・プレゼンテーションにおいて、「人と社会に優しいヘルスケアイノベーション」と題し、同社イノベイティブサービスソリューション事業部ヘルスケア事業推進グループ・グループマネージャーの森山由縁氏が講演を行った。その骨子をレポートする。(井関 清経=メディカル別冊編集)




  本日の講演は「NECの考えるヘルスケアソリューション」「ヘルスケアイノベーションへの取り組み」「ヘルスケアを支えるセキュリティ」についてお話をさせていただきます。


ヘルスケア事業推進グループ・グループマネージャーの森山由縁氏

ヘルスケア事業推進グループ・グループマネージャーの森山由縁氏

 まず日本の現状として、少子高齢化が進み、2010年には60歳以上の方々が3割に達すると言われています。さらに、厚生労働省の発表によると、平成19年度の国民医療費は総額34兆1360億円で、1人あたりの国民医療費は26万7200円となっており、増加傾向にあります。

 一方、内閣府の調査発表によると、「老後の生活設計」や「自分や家族の健康管理」について半数前後の方が「不安」と回答しています。

 このような環境下で、個々の人々は健康であっても、病気であっても、またケアが必要であっても、いつでも最適なヘルスケアサービスを提供してもらいたいと考えているでしょう。

 では、現状はどうなのかというと、「健康の維持・増進」「疾病管理」「福祉や介護」といったサービスについてはそれぞれが分断されています。そして、自分に関する情報なのに自分で管理することが難しく、情報が限られるために最適なサービスの提供や選択が難しいといった課題を抱えています。それぞれのサービスベンダーもそうですし、サービスベンダーと個人との間にも情報格差があって、これがトータルヘルスケアの実現を妨げている原因であり、そして現実なのです。

 そこでNECは、近い将来には個人に適したトータルなヘルスケアサービスを提供できる社会にしていきたいと考えています。

 これまでNECグループでは、ヘルスケアに関する製品・サービスの提供や、さまざまな研究開発を行ってきました。そして、このたびNECグループでは体制を強化し、パーソナル分野から検診、メディカル、介護分野まで、実際に商品を強化して発表いたしました。トータルなヘルスケアサービス、ヘルスケアソリューションを実現するためのクラウド指向サービスプラットフォームに乗ったアプリケーションです。

 それでは、ヘルスケアイノベーションについて、まず医療機関向けの製品・サービスを紹介しましょう。

●反響が大きかった医療連携サービス

 これは思った以上に反響が大きかったのですが、医療連携のサービスについてご説明します。地域医療では医師が足りないとか、また医療費の適正化の問題ですとか、多くの課題を抱えています。各医療機関の役割りや機能を分けることで、貴重な医療リソースを有効に活用するためには、情報の分断が大きな課題だったのですが、それを病院・クリニックが連携して患者の医療情報を共有することで解決するのが地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」です。

 ID-Linkは、1人の患者様のいろいろな情報をその地域周辺の医療機関で共有できるサービスです。これまではクリニックが紹介状を書き、紙ベースで診療情報を伝達し、情報が足りない場合は再確認をしていました。ID-Linkでは、参加する医療機関と患者様との同意があれば、患者様の情報共有が実現できる仕組みになっています。地域に分散した患者様の情報をWebブラウザー上の共有画面で統合して参照できるものです(下図参照)。

地域に分散した診療情報を統合して表示する(資料提供:NEC)

地域に分散した診療情報を統合して表示する(資料提供:NEC)



 次は、病理画像の診断支援システムですが、これはがんの診断をサポートするものです。今までですと病理専門医が顕微鏡で細胞を見て、腫瘍などあるかどうかを診断していましたが、それをコンピューターで支援するシステムになります。「e-Pathologist」という名称で提供します。

 病理画像をデジタルスキャナで取り込み、当社研究所で開発した高度の画像認識技術を応用して病理スライドのデジタル画像から、がん組織や細胞の認識や特徴抽出を高精度かつ高速に行うものです。また、病理医の認識と機械学習法を組み合せることで、高い認識精度を達成しています。

 これによって、病理専門医による検査・診断の見落としを削減するなど、病理診断の迅速化・品質向上・業務効率化に貢献します。

●成果があった遠隔保健指導「奥多摩町実証実験」

 2008年11月から2009年3月にかけてNECでは、遠隔保健指導「奥多摩町実証実験」を行いました。これは、奥多摩町の公民館と都心のクリニックをインターネットで結び、公民館に遠隔カメラを用いた相談システムを設置して保健指導の実験を行ったものです。住民は医師や指導員から1、2週間隔で健康指導や生活指導を受けました。その結果、多くの住民が健康を意識して生活習慣を改め、血圧が下がったり、体重が減ったりするなどの効果が出ました。公民館がコミュニティーセンターとなり、多くの住民が意識を合わせるように健康維持のために生活習慣を改め、行動変容を起こしたことを確認できたことが大きな成果だったと思います。

●「NHI21」は全社員を対象とした健康維持ソリューション

 次は、NEC自身の取り組みをご紹介します。「NHI21」(NEC Health Innovation 21)と名付けた取り組みですが、生活習慣病予防の観点から、食事対策としては社員食堂では栄養バランスのとれたメニューを取りそろえるとか、運動対策ではウォーキングイベントの開催とか、禁煙対策を施すなど、全社員を対象にした施策です。また、個人向け施策では、特定健診・特定保健指導の確実な実施のため、40歳以上のメタボリック症候群予備軍のほか、30歳代の社員も対象に生活習慣指導を行っています。

NHI21の取り組み概念図(資料提供:NEC)

NHI21の取り組み概念図(資料提供:NEC)



 またNHI21の一環として、Webポータルも開設しています。社員やその家族が参照でき、身長・体重などのデータを入れて個人データを管理し、健康管理のために利活用するポータルサイトです。

 企業のお客様に対するソリューションとしては、「健康管理支援ソリューション」をご提供します。従業員のデータ管理に始まり、企業の産業医や健康管理部門が、従業員の定健受診状況も含めてデータをチェックして結果をフォローしたり、階層化ののち、保健指導などを実施し、集計した統計結果を報告するといった業務を支援します。健診事務の簡素化と、従業員の健康管理・評価をトータルにサポートするソリューションです。この健康管理支援ソリューションは、従来、「ADMETY-HR」というSI型でシステムを開発支援させていただいていたものです。

 これまでの「ADMETY-HR」での実績を基に、この度、クラウド指向のサービスプラットフォーム上でSaaS型でご提供する「elegent-HC」の販売活動開始を発表させていただきました。きめ細かいご要望をお持ちのお客様には、これまでのようにSI型の「ADMETY-HR」をご提供いたします。一方、SaaS型でご提供する「elegent-HC」は、データをNECでお預かりして、月々ご利用いただくサービスです。基本機能としてご提供するのは、「健診準備業務」「健診処理業務」「健診フォロー業務」「集計、統計、報告業務」の支援サービスとなります。また、企業のメンタルヘルス対策として、研修プログラムも用意しております。

 健康手帳「Cナビゲーター」は、携帯電話を利用して、体重、運動、食事カロリーなどの生活習慣データを日々書き込みができ、目標値設定やグラフでの確認ができるサービスです。任天堂「Wii Fit」と連携しており、Wii Fitで記録した運動消費量データなどを健康手帳Cナビゲーターに反映する機能も備えています。企業の健康管理・健康指導と合わせた仕組みとしてご提供いたします。

●ますます重要度増すセキュリティメンテナンス

 この度の発表では、今後、ますます重要になるセキュリティメンテナンスサービスもヘルスケアソリューションの体系の中に組み込みました。提供時のシステム、アプリケーションは、時間が経過するにつれて新たな脆弱性が発見される可能性があります。既存のシステムに新しいシステムを組み入れる際、Webアプリケーションシステムやネットワーク・サーバーの脆弱性診断で、全体のヘルスケアシステムの維持・保障を提供いたします。

 加えてヘルスケア情報匿名化サービス、いわゆる個人情報を匿名化するサービスを提供いたします。これまでは、名前を置き換えるか、仮名にしてしまうという単純なものでしたが、NECでは独自の匿名化法を用い、健康情報を解析可能なデータに変換する受託サービスをご提供いたします。独自な匿名化によって、同一個人データの経時変化を追跡して結果を比較したり、統計化ができます。また、医療・健康情報、検診結果、臨床研究データを分析して戦略策定や研究にも活用できます。

ヘルスケア情報匿名化サービス(資料提供:NEC)

ヘルスケア情報匿名化サービス(資料提供:NEC)



 この度のNECグループの体制強化は、「トータルライフケアに向けて:個人の自立と共創をサポート」をテーマに、社会的な存在としての個人の自立を支援するサービスの提供が目的です。「健康リテラシーの向上」「健康行動継続のモチベーションとインセンティブ」などの課題を解決して、個人に最適なヘルスケアサービスを提供する社会の実現に貢献していきたいと考えております。(談)

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