個人の健康情報を一元管理するPHR動向

 PHR(パーソナル・ヘルス・レコード=生涯型電子カルテ)とは、複数の医療機関や薬局などに散らばる健康関連の情報を1カ所に集約する仕組みをいう。身長や体重、血液型、アレルギー・副作用歴といった基本情報のほか、医療機関の診療記録、薬局の投薬履歴、スポーツジムでの運動実績、自宅で測定した体重や血圧などの情報を生涯にわたって一元管理する。

個人の健康に関する情報を1カ所に集め、診療などに役立てる

個人の健康に関する情報を1カ所に集め、診療などに役立てる

 メリットは個人が医師からきめ細かい診療を受けられること。例えば生活習慣病で通院している人がスポーツジムでの運動記録を通院先の病院に提供することで、「もう少し運動量を増やした方がよい」などきめ細かい提案を医師から受けられる。

 医師が患者を診察する際、その患者にほかの医療機関が処方した薬の履歴を確認することで、医薬品の二重投与の防止にもつながる。大学病院などから近隣の診療所に転院する時、患者のデータを受け渡すときにも役立つ。収集したデータを個人が参照することで、日常の健康管理にも役立てられる。日常生活に密着した適切な診療が受けられるようにもなる。

 経済産業省や厚生労働省が中心となり、情報連携のための標準化や実証試験を進めている。厚労省などは、蓄積したデータを統計的・疫学的に分析することで、データに基づいた確実性の高い医療政策が推進できるとみている。2008年4月から特定健診・特定保健指導制度が始まり、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診が始まった。PHRの実現により、特定健診・特定保険指導制度のように国民の健康状態を反映した政策を拡大したい考えだ。

●企業を巻き込み普及へ

 既にPHRの実現に向けた取り組みは始まり、企業を巻き込んで広がりを見せている。例えば経産省、厚労省、総務省は2008年度から、PHR構築の実証実験に取り組んでいる。経産省が3年間で2億9000万円、厚労省と総務省は初年度予算としてそれぞれ1億2000万円と1億100万円を確保した。実験では携帯電話や鉄道用ICカードを個人認証に使い、健康情報の共有や健康相談などを進める。千葉県柏市など3地域と富士通、NTTデータなどの企業連合が参加している。この成果を踏まえて、厚労省などはPHRの実現に向けた規格またはガイドラインを公表する予定だ。実証実験は2010年度まで実施する。

 PHRを実現するための具体案は2案ある。「参照データ保持型」と「実体データ保持型」だ。参照データ保持型の場合、健康情報は各施設が持つ。 PHR基盤は健康情報を保管する場所のインデックス情報だけを保有する。利用者は情報が必要なときはPHR基盤にアクセスすることで、必要な情報を呼び出す。実体データ保持型では、健康情報そのものをPHR基盤に集約する。いずれの案でも、共通のIDを利用してWebサイトを利用できるようにする「オープンID」技術などの利用を検討する。

 もちろん情報の共有や医療機関への公開は、本人の了承が前提である。PHRに集まるのは個人情報のなかでも機密性が高いデータ。個人情報の保護とセキュリティの確保が最重要課題だ。管理する健康情報や共有先、家族への情報提供、個人が特定できない形での統計分析にPHRのデータを使う際のルール整備などが必要である。(ITPro

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