富士通フォーラム・セミナー:旭川の地域医療連携「旭川クロスネット」

 富士通は5月14〜15日、同社の製品・ソリューションを一堂に会した展示会とセミナーなどで構成する「富士通フォーラム2009」を東京国際フォーラムで開催した。14日のセミナーでは、「旭川における道内最大規模の地域医療連携」とのテーマで、同地域医療連携の中核病院である旭川赤十字病院副院長の牧野憲一氏が講演を行った。講話内容の骨子は、以下のとおり。




 旭川赤十字病院は、医師約100名・看護師約550人の地域医療支援病院で、2009年10月にはドクターヘリの運航を予定する救命救急センターを併設する。近隣には、旭川医科大学病院、市立旭川病院など300〜600床規模の中核病院が4施設あり、100〜200床規模の病院も15施設が点在し、周囲からは施設・病床数の数的な充実度という点では恵まれた地域として映る。

壇上の旭川赤十字病院副院長の牧野憲一氏

壇上の旭川赤十字病院副院長の牧野憲一氏

 しかし、中核病院ではそれぞれ診断群別取扱患者数に隔たりがあり、循環器系は市立旭川病院、呼吸器系は国立病院機構道北病院で患者数が突出するといった状況で、当院では脳卒中取扱件数が全国でも5位に入るほど多く、「病院完結型医療」では急性期のベッド数が確保できない状態が続いていた。そこで、後方施設の確保が必要となり、20年ほど前から地域医療連携構築を模索していた。

 地域連携の取り組みとしては2000年、院内に「地域連携室」を設置し、紹介率向上のために前方連携を、在院日数短縮のために後方連携を進めていった。2004年には地域医療支援病院として承認され、これを機に「地域完結型医療」を推進してきた。

 地域連携を推進していく中で、医療のIT化とともに医療現場の環境も変化し、最近ではDPCによるベッド利用の変化が顕在化してベッド稼働率の低下が課題となり、急性期医療を必要とする患者の確保のため前方連携の強化に注力することが急務にもなっていた。

 地域連携電子カルテシステム導入の最大の目的は、地域完結型医療における情報共有の推進だ。診療情報は医療従事者が作成し、医療機関ごとに作成者が保存するため1人の患者につき、医療期間ごとに複数の診療情報記録が存在していた。05年の電子カルテシステムの構築により、まず院内での情報共有が可能となって、地域連携電子カルテシステム導入によって地域の医療機関で当院の診療情報記録が共有できる環境が整ったというわけだ。

 当院の情報を共有する環境が整うことで、患者側はクリニック(かかりつけ医)が当院の外来患者となり、クリニックの医師は当院にいるのとほぼ装用の環境で診察にあたることができる。

 もともと、地域連携強化のツールとして、医療情報システムの導入は不可欠と考えていた。1997年にオーダリングシステム、2005年に電子カルテシステム(ともに富士通製)、そして2008年4月に地域連携電子カルテシステム(富士通製:HOPE/地域連携)を導入するに至った。

展示会場でデモンストレーションされていた「HOPE/地域連携」の初期画面

展示会場でデモンストレーションされていた「HOPE/地域連携」の初期画面

 地域連携電子カルテシステム導入の最大の目的は、地域完結型医療における情報共有の実現だ。診療情報は医療従事者が作成し、医療機関ごとに作成者が保存するため、1人の患者につき、医療期間ごとに複数の診療情報記録が存在していた。05年の電子カルテシステムの構築により、まず院内での情報共有が可能となって、08年の地域連携電子カルテシステム導入で、地域の医療機関が当院の診療情報記録を共有できる環境が整ったというわけだ。

 当院の情報を共有する環境が整うことで、患者側はクリニック(かかりつけ医)が当院の外来患者となり、クリニックの医師は当院の中にいる環境で診察できるようになる。具体的には、クリニックの医師は当院に紹介した患者の診療経過をリアルタイムで閲覧でき、退院後に患者が戻ったときには当院に入院中の診療内容をも参照できる。これらのメリットに加えて、「旭川クロスネット」へクリニックの参画を促す最大の要因として、連携機関登録の手間や金銭的な負担が少ないことが挙げられる。

 「旭川クロスネット」へ参加する必要要件は、インターネット環境(光・ケーブルTV・ADSL)とWindows環境(XP、Vista)のPC端末があれば共同診療医契約を結ぶことができる。しかも、初期費用、利用料はすべて無料という点が最大の特徴ともいえる。

 では、なぜ無料でシステムの運用が成り立つのか? それは、このシステムを呼び水として、急性期入院医療を必要とする患者を誘導することで採算を合わせるという計算が背景にある。試算では、急性期入院医療を必要とする患者が年間30人ほど増加すれば、2〜3年でコスト回収は可能だ。手術患者の入院収入は1件当たり100万円、病院費用の固定比率(人件費)は70%ととなり、患者1人あたりの収入増は70万円、年間収入は約2000万円の増収となるからだ。

 この「旭川クロスネット」への登録クリニックが増えることで期待する効果としては、「当院から転院する患者情報を確実に提供できる」「かかりつけ医に確実に診療情報を提供できる」「当院の医師は診療情報提供書作成の負担が軽減すること」などが挙げられよう。

 現況では、ユーザーミーティングを開催することで利用率の把握や、改善点などの要望を収集することで、クリニックがより利用しやすいシステムへブラッシュアップすることの念頭に運用している。

 今後の課題としては、クリニックが日常で使用している電子カルテ端末で地域連携電子カルテシステムに接続できれば使い勝手が飛躍的に向上するが、各クリニックでのVPNルータの追加設置などの費用負担増が避けられないこと。それから、登録クリニックが増えるとともに患者の診療録も自ずと増え続けており、参照したい患者のデータに行き届くには多くのアクションを強いているので、ユーザビリティを向上させることも改善点のひとつとして認識している。(談)

(まとめ:井関 清経)

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