インターシステムズ・セミナー:「病院経営と診療のための真のIT活用」を考える


 インターシステムズジャパンは10月24日、東京都港区のオリベホールで「病院経営と診療のためのIT活用実践セミナー:InterSystems in Healthcare Seminar 2008」を開催した。「病院経営と診療のための真のIT活用」をテーマに、システム導入時に重要な経営的な視点と、真に診療に役立つシステムの要件などについて、導入事例紹介を通して解説した。

 「DPC時代の情報化戦略と病院経営」と題して宮崎大学医学部付属病院医療情報部教授/経営企画部副部長の荒木賢二氏が基調講演を行ったほか、「病院のオーダーメードIT化は可能か? 〜小牧市民病院での取組み〜」とのテーマで、小牧市民病院内科部長/医療情報システム室長の近藤泰三氏が講演したのに続き、「Caché/Ensembleを活用した次世代の医療情報二次利用ソリューションCDR−CiDARの紹介」と題して日本ダイナシステム代表取締役社長で医師の嶋芳成氏が講演した。

宮崎大学医学部付属病院医療情報部教授/経営企画部副部長の荒木賢二氏

宮崎大学医学部付属病院医療情報部教授/経営企画部副部長の荒木賢二氏

 まず、「DPC時代の情報化戦略と病院経営」と題して講演した荒木賢二氏は、現状での病院経営分析の問題点として「組織として取り組んでおらず、しかも分析データを医師にフィードバックするシステムを作り上げていない」と指摘。その分析方法は“仮説検証型”で、経営分析が単なる目的化していることが問題でもある、とした。


 現状の経営分析手法を考え直す際、同氏は「病院ぐるみの経営改善活動での持続的なPDCAサイクルの中で、診療内容にまで踏み込んだ経営分析をした上で、医師に分析結果をフィードバックするシステムづくりが肝要」と強調した。


 診療現場で役立つ経営分析を実践するためには、「診療行為別に財務的にはずれ値となった“財務アウトライヤ症例”を検討し、さまざまな予測できない“気づき”を見つけて分析する質的な研究が必要になる」と前置きした上で、「“気づき”の質的研究でテーマを見つけた上で、統計的・量的な分析を行うことが診療現場で役立つ経営分析につながる」と結んだ。


小牧市民病院内科部長/医療情報システム室長の近藤泰三氏

小牧市民病院内科部長/医療情報システム室長の近藤泰三氏

 続いて「病院のオーダーメードIT化は可能か? 〜小牧市民病院での取組み〜」とのテーマで、近藤泰三氏が講演した。同氏は「“オーダメード”IT化とは、一から作成する電子カルテシステムではなく、また既存システムの単なるカスタマイズでもない……という意味で使っている。当院は2006年から電子カルテ導入の検討を始めたが、“オーダメード”IT化を望んだ理由は、外来患者数が多く、また病棟業務も多忙なため、そのアクティビティを生かすために当院に合わせたシステム開発をじっくりと取り組む必要があると判断したため」という。


 “オーダメード”IT化の前提となったのは、1日あたり2000人の外来に対応できる反応速度を持ち、5年後もレスポンスが低下しないデータベース(DB)を構築することだったという。当時は大半の電子カルテDBがリレーショナルデータベース(RDB)であり、「RDBでは無駄が多く、しかもレスポンス低下が懸念された」ことを理由に、RDBから(高速なオブジェクト型データベースの)Cachéに変更した他病院の成功事例を参考に、小規模サーバで運用できるCachéベースの電子カルテシステムを選択したという。


 現在、外来に関しては電子カルテ化が終了し、レスポンスも「半年程度の外来カルテのロードであれば3〜4秒で、ほとんど不満はない」という。結びに同氏は「“オーダメード”IT化に際して、病院側の努力はパッケージ導入の数倍必要になる。肝要なのは、導入責任者にはコンピュータに詳しい事務方ではなく、必ず病院のワークフローに詳しい部長クラスの医師を選ぶこと」とした。


日本ダイナシステム代表取締役社長で医師の嶋芳成氏

日本ダイナシステム代表取締役社長で医師の嶋芳成氏

 最後に、「Caché/Ensembleを活用した次世代の医療情報二次利用ソリューションCDR−CiDARの紹介」と題して、嶋芳成氏が講演した。まず同氏は、データ保存に対する考え方としてオーダー入力と電子カルテとの違いに触れ、「オーダー入力システムは情報が伝達され実行された後データは不要になるが、電子カルテはオーダーに加えてカルテ記事・文書等も長期にわたって保存する必要がある」とし、こと医療情報システムの場合は「病歴データは長期保存の必要があり、極端に言えば“100年データベース”を構築する考え方が不可欠」としたうえで、現在のパッケージ製品がデータの長期保存の考え方をなおざりにしていることを指摘した。


 続けて同氏は、医療情報処理用に開発されたMUMPS(Massachusetts General Hospital Utility Multi-Programming System)を拡張したオブジェクト型データベースのCachéを採用した「CDR」(クリニカル・データ・リポジトリ)構築のメリットについて言及。「CDRは、オーダー入力システム、電子カルテシステムなど病院情報システムで登録される、患者に関するすべてのデータを集め、一括管理し、長期保存するシステム」とし、構築メリットについては「可能な限り診療情報を永久保存・管理することによるデータの連続性の担保の確保、分散している情報を集中管理できることで複雑な検索が可能になること、業務に影響を与えずバッチ処理が可能なのでデータ解析への応用ができること」などを挙げた。


インターシステムズのWebサイト(一部講演の資料をPDF形式でダウンロード可能)


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