インタビュー:高橋病院理事長・高橋肇氏

「医療と介護を結び、信頼される地域完結型医療を提供する」

高橋肇理事長

高橋肇理事長

 総務省が実施した「u-Japanベストプラクティス2008優秀表彰事例」の中で最も優秀な「u-Japan大賞」(※1)を受賞した「地域連携システム 道南MedIka(メディカ)」。同システムは、函館市に本社を置くSI企業の「エスイーシー」(受賞対象:沼崎弥太郎社長)が運用するデータセンターを介して、道南地域を中心とする病院やクリニックが患者の診療データなどを相互に開示・閲覧することで共有する仕組みだ。市立函館病院とともに診療情報開示病院として参画している高橋病院の高橋肇理事長が「国際モダンホスピタルショウ2008」の「医療情報ネットワークセミナー」(7月17日)で大賞受賞について講演し、同日、インタビューに応じた。同氏は、「情報の共有は、信頼される地域完結型医療の提供に結びつく」とプロジェクトの展望を語った。(聞き手は、柏崎 吉一=委嘱ライター)





――生まれたばかりのプロジェクトだが、出だしの手応えは?

 「2008年4月から運用を開始し、6月末現在で、43の医療機関が参加している。これまでのところ、利用について同意を撤回した医療機関はない」。

エスイーシーのブースでデモされていた「地域連携システム」のネットワーク図

エスイーシーのブースでデモされていた「地域連携システム」のネットワーク図

――ネットワークの概要は?

 「データを開示する側とデータセンター間の通信、およびデータを閲覧する側とデータセンター間の通信は、インターネット回線を利用する。ネットワーク上に構築されたVPNトンネル通信(IKEプロトコル)、SSLプロトコルによる暗号化通信により、第三者による不正な盗み見などを防ぎ、患者のプライバシーを守っている。データを閲覧できるパソコンも、データセンターから発行されたデジタル証明書をインストールされたものだけに限定されている」。

――地域連携システムの導入効果は?

 「急性期病院の放射線科医の読影ノートも読み出せるほか、転院予定の患者候補の一覧も見られることで、患者の受入体制はさらにスムーズになった。患者のリハビリ記録は、提携する介護老人保健施設と共有し、医療と介護の橋渡しをしている。医療機関がオープンに情報を公開することで、医師にとっても、よい意味での緊張感が生まれる。それが医師の質を引き上げることになるはずだ。医療機関がこのシステムに参加することで、患者の安心感も高められる」。

 「また、他の医療機関における投薬歴や手術記録などを呼び出して表示する際のレスポンスは高く、システムの操作性も優れている」。

――「医療のIT化」について、いま何を感じているか。

 「医療機関におけるIT導入、情報活用は遅れているのが現状だ。ただ、私たちの取り組みが特別なこと、という意識はない。私は、医療従事者にとって何より重要なのは、『現場・現物・現実』だと考えている。地域全体で患者さんを把握する、という日頃の医療行為の中で当たり前のことを、ベンダーとともにシステムの要件に淡々と反映しているだけだ。最終的には患者が生涯カルテを持ち、それを自分の意志で活用できるようにするのが望ましい姿だ」。(7月17日:談)

■参考
回復期病院である高橋病院では、2003年7月より電子カルテ、看護支援システムを稼働し、患者情報のデータベース化を行ってきた。電子カルテシステムは、NEC「MegaOakHR」とCSI「MIRAIs」シリーズを採用している。

■注
※1)総務省が「u-Japan政策」の一環として、2008年2月から募集した「u-Japanベストプラクティス2008」に対する応募事例の中から、優秀な事例について表彰を行うもの。

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