【NEC医療セミナー】参加するかかりつけ医が日常診療に使いやすい地域連携ネットづくり

「セキュアネットワークを活用した診療情報共有化の取り組み NPO法人『あじさいネット』」

 2008年5月23日、福岡国際会議場で「NEC医療セミナー2008 in 九州」が開催された。講演では「セキュアネットワークを活用した診療情報共有化の取り組み NPO法人『あじさいネット』」とのテーマで、大村市立大村市民病院医療情報企画部部長・麻酔科医長の柴田真吾氏が登壇。国立病院機構長崎医療センター(大村市)と大村市民病院の2つの病院が中核病院となり、診療所も含めた60の医療機関が参加している「あじさいネット」構築の経緯を振り返りながら、地域基幹病院が関わるべき医療情報システムの役割と、その未来像について講演した。(以下、講演内容の骨子)




 「あじさいネットワーク」は2004年にスタートした。年内には長崎市医師会も新たに参加する予定など、徐々にだが広がりを見せている。


大村市民病院の柴田真吾氏

大村市民病院の柴田真吾氏

 そもそも「あじさいネット」の協議会が発足した時、構築すべきネットワークが果たす役割について「患者の情報を複数の医療機関で共有することで、検査・診断・治療内容などが正しく理解され、診療に反映させることで安全かつ高品質な医療を提供し、ひいては地域医療の質を向上させる」ことと定めた。あわせて議論を重ねて、どのような総意を固めたのかと言えば、「なぜ、診療情報を共有するのか?」という疑問に対する共通認識として「かかりつけ医が日常の診療に活用できる情報を共有するためのネットワークづくり」と、取り組みの目的を明確にした。

 「あじさいネット」では、従来のITを使った地域連携の多くに見られる「特定の基幹病院とその連携診療所に限定した点と点の運用」ではなく、長崎医療センターと大村市民病院の保有データを、参画する診療所が隔てなく利用できる面的な連携にも重きを置いた点が特徴的である。いわゆる、「中核病院の抱え込み」を防ぐことも視野にあったが、参加者であるかかりつけ医が参加しやすく、使いやすいシステム作りを目指したからだ。

 まず始めたのは、2つの基幹病院が保有している検査情報や画像などの診療情報を閲覧できるようにすることから。もともと国の助成金も受けておらず、低予算で運用できるシステムしか念頭になかったため、あるレベルのセキュリティを確保した上での、閲覧だけを重視した簡易なネットワークとして運用を開始した。各医療機関にある既設のパソコンを使い、専用線ではなく通常のインターネット回線経由で接続でき、しかもユーザーインターフェースも含めて使う側のかかりつけ医が簡単に利用できる仕組みとした。

 当然のことながら、診療所の参加費が高くては、なかなかネットワークも広がらない。あじさいネットでは、導入時の初期投資(実費で6万6000円程度)以外の月々の利用費は、1施設あたり2000円強と安価に設定した。

 一方で、運用ルール作りは厳格に取り組んだ。利用は医師のみの閲覧に限定し、利用の際に必要なIDとパスワードは、60〜90分の講習を受講した後に発行している。個人情報保護の観点からプリンターでの印刷も規制。また、基幹病院で保有するデータを診療所の医師が閲覧する場合は、患者に同意書および同意撤回書を書いてもらい、その書面を基幹病院に送って手続きを済ませないと閲覧のためのアクセス権は設定されない。そういう点では技術対策より運用対策、特にセキュリティ対策に力を注いだ。

 あじさいネットには現在、およそ5400人分の患者情報が保有されている(2008年4月11日時点)。利用状況は、かかりつけ医のログを見ると10〜11時台と17時台にアクセス数がピークを迎えており、往診中に利用している証拠としてみることができる。

 現在、地域医療のネットワークづくりに取り組んでいるところの多くは、慎重を期すことに執着して、その「実現すべきセキュリティ」や「実現すべき標準化」のレベルが高すぎる故に、実現化の足を引っ張っているように思える。むしろ、「予算的にもできる範囲内で、実現しうる安全確保が見えた」と判断したときに一気呵成に立ち上げなければ、ゴール=ネットワーク構築は遠のいていくばかりのように思う。(まとめ、井関 清経)

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