レポート:平井愛山氏講演(千葉県立東金病院院長)

こうしたらできる糖尿病医療連携〜スタンダードモデルとしてのSDM版連携パス〜

 第51回糖尿病学会年次学術集会が5月22〜24日、東京・国際フォーラムで開催された。23日のランチョンセミナーでは、千葉県立東金病院院長の平井愛山氏が、循環型医療連携の実践と連携パス構築について講演した。平井氏はその中で、千葉県山武医療圏で構築してきた循環型の地域医療連携システムにおける構築のポイントや、作り上げた連携パスを次期診療報酬改定で加算対象となるよう取り組むことを明言した。講演の骨子は、以下のとおり。




●医師供給システムの崩壊は地域医療連携の枠組み再構築のチャンス


 糖尿病の患者数は1988年に約100万人だったものが、2008年には約300万人と推定され、実に20年間で3倍に急増している。千葉県立東金病院がある九十九里沿岸の山武地域医療圏(東金市、山武市など6市町、人口約22万人)においても、糖尿病患者数は約1万2000人と推定されている。しかしながら、私が着任した1998年当時は約6000人の糖尿病患者のうちインシュリン療法を必要とする患者が約1200人いたにもかかわらず、実際にインシュリン療法を実施できていたのは半分の600人だけだった。こうした未治療の患者が多い結果として、糖尿病性壊疽による下肢の切断数が全国平均の約5倍、20万人あたり6.8肢という最悪の状態にあった。


講演の壇上に立つ平井愛山氏

講演の壇上に立つ平井愛山氏

 このような状況を招いた原因の1つは、地域の医療提供システムに大きな問題があったからだ。1998年当時、山武地域の糖尿病専門医は2つの公立病院に勤務する3名のみで、地域の診療所に専門医は一人もいなかった。そもそも人口10万人あたりの医師数は、8年前のデータになるが全国平均が180人であるのに対し、千葉県は130人、山武医療圏は89人と、全国平均の半分以下という医療過疎地域という問題を抱えていた。長年にわたる医師不足の状況に加えて、2004年の新医師臨床研修制度の導入を契機に、医局の医師不足から地域病院に派遣されていた医師の引き上げが起き、内科医を中心に急速に医療崩壊が進んでいった。

 山武医療圏には県立東金病院の他に、国保成東病院、国保大網病院の3つの公立病院があるが、2003年に3病院で28名いた内科医が2006年4月にはわずか8名という惨憺たる状況だった。東金病院も2004年10月に10名いた内科医が、一時は私と腎臓内科の医師の2名という危機的な状況に追い込まれた。このように大学の医局からの医師派遣に依存している自治体病院は、大学病院の医師不足の影響をもろに受けて軒並み医療崩壊しているのが実態だろう。

 新医師臨床研修制度によって医師の供給システムが激変したことは1つの契機であり、その本質は地域医療システムの構造改革を断行しなければ打開できない状況であると認識すべきである。そのアプローチの1つが地域中核病院と診療所との医療連携の枠組みの再構築だ。病院と診療所の役割分担を明確にして、次世代型の連携パスを核にした緊密な地域の医療連携の枠組みを作り上げることが重要であり、医師の供給システムが激変した今こそ、そのチャンスととらえるべきである。

●循環型医療連携は技術移転なくして実現は不可能

 2007年に施行された改正医療法により、医療計画制度の下で、いわゆる4疾病5事業ごとに医療連携体制を構築するこになった。今年の4月から糖尿病や脳卒中、がん、急性心筋梗塞の4疾病または事業ごとに、必要となる医療機能を明らかにした上で各医療機能を担う医療機関等の名称や数値目標が記載される新しい医療計画を地域ごとに作成しなければならない。千葉県では、われわれが提唱した循環型の地域医療連携システムを保健医療計画の冒頭に掲げて、地域ごとに循環型の医療連携の仕組みを構築することを明言した。

 われわれが提唱した循環型の医療連携は、特に糖尿病において、病院は血糖コントロール不良および合併症のある重症糖尿病患者の治療に専念し、診療所はインシュリン療法を含めて、血糖コントロール良好の患者の治療に専念するもので、患者は病院・診療所を通じて自分の病態に沿った最適な治療をシームレスに継続して受ける体制を確立すること。ここで重要な点は、病院と診療所でシームレスかつ継続して治療を引き継ぐために、両医療機関で同レベルまたは平準化した治療が実施できることが必要であることだ。そのためには、病院の糖尿病専門医から診療所の糖尿病非専門医に技術移転が不可欠である。

 われわれは、まずこの技術移転を伴う医療連携がスムーズに行われるように、病院と診療所の医師のヒューマンネットワークを強固にする作業を地道に続けた。お互いに顔が見える環境を作ることによって、技術移転のための勉強会において診療所の医師が誤診した例を症例検討会で発表できるような雰囲気が生まれてくるからだ。その勉強会として2001年9月から実施してきたのが、「山武SDM研究会」(現:九十九里SDM・CKD研究会)である。

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