Dr.コトー診療所を潰すのか

日本医師会常務理事の中川俊男氏

 「Dr.コトー診療所のような医療機関をつぶせというのと同じことです」。日本医師会常務理事の中川俊男氏は、レセプトオンライン請求の全面的な義務化について憤る。

 「Dr.コトー」は山田貴敏原作の医療漫画。TVドラマにもなった。沖縄・与那国島をモデルにした古志木島(TVでは志木那島)の小さな診療所を舞台に、青年医師・五島健助(Dr.コトー)が活躍する。美しい南海の小島のもう一つの現実として離島医療の姿を描いて話題になった。

 中川氏は、「Dr.コトー診療所は、間違いなく(月間のレセプト枚数は)200枚以下でしょう。(オンライン請求の一律義務化は)ああいう医療機関をつぶせというのに等しい。たとえORCA(の日医標準レセプトソフト=日レセ)を使うとしても、パソコンや電源、高速通信回線が必要なのでペイするかどうか」という。

 レセコンを利用せず、手書きレセプトで診療報酬を請求している医療機関は、現在でも医療機関の2割、約2万施設ある。内訳は診療所が1万9600施設と圧倒的に多いが、病院でも、小規模な施設に限られるとはいえ、290施設が手書き請求を行っているという。

 中川氏は、一律にオンライン請求を義務化し、従わない医療機関にはペナルティを課すという方式は、人道的に見ても問題があるとして、次のように続けた。

 「一部の医師はプライドを傷付けられ、廃業すら口にしています。高齢なので(IT導入は)無理。職員を新たに雇うのも難しい。第一線の地域医療でがんばっている医療機関を、改革と称して全部踏みつぶそうというのは、してはいけないことです。

 国は、請求が小規模な医療機関については、医師会などが電算請求を代行する方式を提示しています。しかし、レセプトは医療機関の個人情報、あるいはプライバシーそのものという側面があります。医師会が代行すればいいだろうという問題ではありません。

 医療というものをトータルで考えないといけない。地域の第一線の医療がどういう人に支えられて成り立っているのか。行政はそこまで考慮しないとまずいでしょう。金儲けしているわけでもない、ぜいたくしているわけでもないのですから。我々(日本医師会)もそういうことを国民に伝えていかなければいけませんね。なぜ反対しているのかを言い続けなければならない」(中川氏)。

 日医は既に昨年8月8日の定例記者会見で、「オンライン請求義務化に対する日医の見解」のひとつとして、小規模医療機関における負荷の問題を取り上げている。しかし、この時の主張は、「レセプト200枚以下の医療機関を含め、手書き請求のオンライン化を求めるなら、1000億円以上が必要」と財源措置を求める姿勢が目立った。

 最近、激務による小児科・産科勤務医の減少の問題をメディアが取り上げるようになり、医療現場の過酷な実態にようやく国民の目が向くようになってきた。中川氏も述べているように、小規模医療機関におけるオンライン請求義務化の是非についても、地域医療の維持・発展という観点から、国民を巻き込んだ議論が必要だ。日医もそのような視点からのアピールをもっと心すべきではないか。

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