医療分野での用途が有望---期待高まる人体通信アプリケーション

 「ヘルスケア用途で注目が集まっている」---東京都内で開催された人体通信技術に関する講演会「人体通信の可能性を探る」(2009年6月17日、ウエアラブル環境情報ネット推進機構主催)で、研究者らが技術動向や今後の展望について講演した。

 ここ数年、英国の人体通信関連のセミナーに毎年参加している千葉大学大学院工学研究科教授の伊藤公一氏は、医療やヘルスケア分野での応用に期待が高まっている海外の研究動向を紹介した。体に装着したり、体内に埋め込んだりしたセンサーの情報を人体通信技術を使ってロガーに収集するといった使い方が想定されており、収集したデータをインターネットなどで病院へ送信する遠隔医療での利用も期待される。コードに制約されずに済む上、既存の無線通信に消費電力が比べて少ないのが人体通信技術の特徴だ。

 ただし、日本では人体通信といえば人体を通信媒体とする技術だが、欧米では、「Body-centric communications」「Human-body communications」としてBluetoothやZigbeeなどGHzオーダーの近距離無線通信も含めて検討されているという。伊藤氏は「もはや日本だけでは議論できない」(伊藤氏)と、海外での注目度の高さを強調した。

 アンプレット 代表取締役の根日屋英之氏も、予防医療やヘルスケア分野での利用が有望との見解を示した。同氏は講演の中で研究中の人体通信技術を使った簡易心電計などを紹介し、「コミュニケーション・デバイスとしてだけでなく、人体そのものが送信機となる」(同氏)と、今後の新しい可能性を示唆した。

 このほか、NTTマイクシステムインテグレーション研究所主幹研究員の品川満氏やアルプス電気HMI事業本部の横尾兼一氏が、製品開発の経緯や今後の展望について講演した。「RedTacton」の開発にあたった品川氏も、実用化当初はセキュリティ用途が有望としながらも、将来はヘルスケア分野での利用が期待できるとの展望を示した。また、横尾氏は、アルプス電気で開発中の人体通信モジュール(同社は電界通信と呼んでいる)について紹介した。専用のASICを設計して現在は12×15×2mmの寸法のエンジニアリング・サンプルを開発。小型化によってウエアラブル機器への組み込みが可能になったとしている。小型化に当たっては、当初1.5mmあったセンサー部の厚さを0.95mmまで薄型化したという。今後、顧客に向けてのエンジニアリング・サンプルの出荷を本格化させ用途の開拓にあたる。

 さらに、現在は根日屋氏と共同で数Mビット/秒の速度で通信可能な高速通信モジュールも開発中だ。既に原理確認用の試作基板はできており、今後は小型化を図る。通信速度を高めると消費電力が増えるため、そのジレンマの解決が課題だという。早ければ2010年ごろには1Mビット/秒のモジュール、2011年ごろには5Mビット/ 秒のモジュールを完成させたいとのロードマップを示した。(ITPro

●医療応用が期待される人体通信技術。根日屋氏の講演資料から(クリックすると拡大します)


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