南三陸診療所(宮城県南三陸町):クラウド環境で実現した被災患者の循環器リスク予防

遠隔支援と血圧データ管理、限られた医療資源で効率的な医療を提供

 南三陸町では、南三陸町医療統括本部責任者・宮城県災害医療コーディネーターを務める南三陸診療所の内科医、西澤匡史氏がプロジェクトに加わった。西澤氏は、自治医科大学出身で、震災前は同町で唯一の病院だった公立志津川病院で内科診療部長を務めていた。

●ハイリスク患者の抽出、血圧管理をシステムで効果的・効率的に実施

がれきは町のあちこちに山積みされ、復興にはまだ時間がかかりそうだ

 南三陸町は、志津川湾に面した平地部のほとんどが津波の被害を受け、約3200棟が全壊した(被災率61%)。湾近くの主要道路に面していた公立志津川病院(126床)も、4階建ての旧館は最上階天井付近まで水没し、隣接する新館の5階に入院患者が避難したが、病院スタッフ4人、入院患者71人が犠牲になった。町内にあった6軒の開業医による診療所もすべて被災。震災直後は、医療を提供できる施設がゼロになった。

 現在は、イスラエルの医療団が残したプレハブを利用して公立南三陸診療所を開設、外来診療のみを行っている。また、隣接する登米市の診療所の病棟を借りて、入院機能を提供している(39床)。「犠牲者は約900人、町外に転居・避難している人を含めて町の人口は約2000人減り、1万5000人強。開業医の診療所が1カ所再開したものの、当診療所の内科2診体制で診ていかなければならず、非常に厳しい状況です。元々、高齢者の多い地区で慢性疾患患者も多かったので、高血圧症や糖尿病の新規発症が増えています」と西澤氏。こうした医療環境の中で、自治医科大学によるシステムを利用した遠隔医療支援と血圧管理の仕組みがマンパワー不足を補って、心筋梗塞や脳卒中の発症を抑制できていることの有用性を強調する。

プロジェクトの概要

 
 特に、プロジェクトが始動した5月頃は各地の医療支援チームも引き上げ、午前・午後とひっきりなしに押し寄せる患者に対応しなければならない状況で、遠隔医療支援には大いに助けられたという。「循環器疾患のハイリスク患者を遠隔で同定して連絡をもらえるため、リスクの高い患者さんに対して優先的に治療介入できました。もちろん、診察時の血圧データは注意しているものの、診療に忙殺されている中で丹念にデータを評価するのは現実的に困難な状況でしたから、非常に助かりました」(西澤氏)。

参加している患者は、血圧測定前に自分の健康管理カード(ICカード)をコンティニュア対応カードリーダーにかざして個人認証する

 当初、避難所に設置していた据え置き型のコンティニュア対応血圧計は、現在診療所の内科診察室に置かれ、診察前の測定に使われている。D–CAPに参加している患者は、自分の健康管理カード(ICカード)をコンティニュア対応カードリーダーにかざして個人認証を行った後、血圧測定する。収縮期血圧/拡張期血圧、脈拍データが、Bluetooth通信でゲートウエイサーバーを経由して、データセンター内のシステムに自動転送される。

当初、避難所に設置されていたコンティニュア対応血圧計は、現在は外来診察室に置かれ、診察前に血圧測定する。データはリアルタイムにクラウド上のD-CAPシステムに転送される

 家庭での血圧測定用に配布された血圧計は、日本高血圧学会の家庭血圧測定指針に沿って、朝(起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前の安静時)、晩(就床前の安静時)に測定。使用した血圧計は25回分の測定データを記録でき、外来診療時にデータ回収する。データの回収も簡単。診察室の医師のPCに接続されたカードリーダーで認証すると、データ(血圧、脈拍)はBluetooth通信でPCに取り込まれ、同様にデータセンターに転送される。多くの患者の血圧データの聞き取りや書き写し、データ入力・送信を手作業で行う必要がないため、医療スタッフの負荷はほとんどない。

家庭血圧は、血圧計に蓄積されたデータを外来診療時にPCに取り込み、アップロードする

 患者属性情報、循環器リスクスコア/予防スコア(定期的に調査した情報も含む)、診察時血圧データと家庭血圧データは、それぞれデータベース化されている。自治医科大学でモニタリングすると同時に、診療所の医師も診療時にデータ評価し、降圧剤の調整や生活指導などに利用する。アプリケーションは、リスクスコア/予防スコアからリスクの高い患者をアラート表示するほか、身体情報、既往歴なども入力・閲覧できる。

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