京都大学医学部附属病院:デスクトップクラウド環境で診療情報と臨床研究用データを一元化

病院情報システムとFileMakerによる臨床研究データベースの連携運用

 KING5では、医療安全の観点からBluetoothを用いた小型バーコードリーダーを利用した新しい認証システムも導入した。KING4時代にバーコードリーダーとPHS型の多機能ハンディターミナルを250台導入したものの、最初はあまり使われることなく、病院機能評価を受けることを機に注射・輸血実施の際の3点認証(患者認証、輸液認証、実施者認証)を徹底するようになった。そのため専用ハンディターミナルが不足し、250台をやり繰りして実施していた。
 

小型軽量バーコードリーダー

 新しく導入した小型軽量バーコードリーダーは、バーコードの読み取りに特化したもの。読み取ったデータは、各病室に設置されたBluetoothアクセスポイントに送信され、このアクセスポイントがWiFi通信でHISに問合せ、認証データを小型バーコードリーダーに返す仕組みだ。このツールは、看護師全員に配布しており、看護師同士で貸し借りをしなければ、業務の最初に行う実施者認証に加えてベッドサイドでの2点チェックだけでも利用できる。

 竹村氏は「以前の多機能型ハンディターミナルに比べて、新しい小型バーコードリーダーの価格は6分の1程度。通称、灯台と呼ぶBluetoothアクセスポイントにコストは発生しますが、看護師全員に配布できたことを考慮すると、大幅なコストダウンを実現しています。ベッドサイドのBluetoothアクセスポイントは、将来的にユビキタス医療ICTのインフラとしての可能性を広げました」という。

●診療・研究データの相互運用性を高めた電子カルテとFileMaker連携

 KING5構築の大きなテーマとしては、HISとFilemakerの間でのシームレスな運用の実現があった。電子カルテ化に伴って診療情報が集約されるHISと、これまで研究用に各診療科や医師が個人ベースで運用してきたFileMakerによる臨床研究データベースの連携である。従来は、(1)電子カルテに診療情報を記載する際に隣に置いたFileMaker用端末に同じデータを入力する、(2)FileMakerをメインに運用してその一部を診療録として電子カルテに入力する、という方法で運用しており、どちらのパターンでも二度手間が発生していた。

 「電子カルテに記載する診療情報以外のデータも、同じプラットフォーム上で扱えないと診療と研究業務が両立できない、という要求が強くなり、HIS端末にFileMakerをインストールしてコピー&ペーストで効率化しようという動きが急速に広がりました。しかし、HIS端末でエンドユーザーのソフトを運用するルールがないため、黙認できない状況になっていました」(竹村氏)と、電子カルテとFileMaker連携運用に至った背景を述べる。
 

電子カルテとFileMaker連携運用の概要

 
 電子カルテとFileMakerの連携は、患者の電子カルテからデータ入力用のFileMakerのテンプレートを呼び出しそこにSOAPなどの各項目などを入力し、その情報を電子カルテに書き戻す仕組みだ。研究用データベースとして利用するFileMakerに日常的に患者のデータを入力し、その一部をテンプレートを利用して電子カルテに入力するという手順でも運用できる。
 

電子カルテの画面

 
 FileMaker上のデータはあくまでも臨床研究用データで、電子カルテに記載された時点で診療録として電子カルテ3原則が担保される。しかし、電子カルテと連携する以上、FileMaker上のデータの作成・更新権限を管理する必要がある。その機能を担っているのが、CISとFileMaker Serverの両プラットフォームの上に載るIBMの管理ツール。診療科別の臨床研究用FileMakerファイルやFileMakerテンプレートへのアクセスを、HISのユーザー情報に沿って診療科およびユーザー単位で制御している。
 

FileMakerの画面

 
 「研究用データと電子カルテの入力インターフェースを統合することで、入力作業が効率化されるだけでなく、FileMaker自体のセキュリティや利便性も向上しています」(経営管理課医療情報管理掛主任 藤田健一郎氏)。電子カルテから医師が求めるデータを出力するには、時として多大な労力とコストを要するが、最初から必要なデータをFileMakerに書き出してもらうことで、管理されたFileMaker Serverから取り出すだけでよくなり、大きなコスト削減につながったという。
 

CISとFileMaker Serverの両プラットフォームの上に載る管理ツールの画面

 
 なお、FileMakerとCISのデータベース(DB2)とのデータリレーションにおいてはODBC接続が可能だが、FileMakerはDB2とリアルタイムに通信できない。そのため、DB2の必要なデータを複製・保持するOracleデータベースを介して連携している。
 

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