ロイヤルベルクリニック(名古屋市):iPadを利用した新生児健診用問診ツールを運用

受診者入力で業務効率化、母親の疑問・不安解消に寄与、蓄積データの活用も視野に

 愛知・岐阜の両県で、産婦人科医療施設を運営する医療法人 葵鐘会(きしょうかい:山下守理事長)。その施設の1つであるロイヤルベルクリニック(名古屋市緑区)は、新生児健診のためのシステムをFileMakerで構築し、iPadを利用した問診ツールを運用している。新生児データベースと連携した問診ツールを来院した母親自身が操作することで、従来看護師が対面で聞き取り・入力していた業務を効率化するとともに、よくある質問をあらかじめツールで問診時に回答することによって、母親の疑問解消にも役立っている。
 


 

 産婦人科医師の減少により産科を閉鎖する病院が相次ぐなど、出産医療を取り巻く状況は深刻さを増している。愛知県でも分娩取扱施設は59病院、97診療所があるが(2010年6月現在)、多くの病院が医師不足などの理由で分娩数等の診療制限を行っているほか、分娩を休止している施設もある。

ロイヤルベルクリニックの瀟洒な外観

 背景には、産科医師の過酷な勤務実態がある。加えて、訴訟リスクの高さからなどから若い医師の産科離れを引き起こしており、産科診療所の事業撤退も続いている。こうした産科医療の現状に対して、医師の労働環境改善と産科医療サービスの向上を両立させる地域医療モデルの構築を目指して発足したのが葵鐘会だ。

 葵鐘会は、2006年8月に愛知県稲沢市にセブンベルクリニックをオープンしたのを皮切りに、愛知県と岐阜県に現在7カ所の産科・婦人科中心のクリニックを開設し、「ベルネット」グループとして運営。来年には、愛知県豊橋市に8施設目のクリニック開設を計画している。ベルネットグループの特徴は、クリニック間の連携にで、非常勤を含めた約30人の専門医がローテーション勤務を組むことで、24時間365日常時2人の管理体制を構築していること。分娩はもちろん、緊急時の診療時間外診療にも対応している。

院長の丹羽慶光氏

 「産科の特殊性で、開業医が1人でクリニックを運営し続けるのは非常に難しい。グループクリニックの最大のメリットは、医師の休みを確保しつつ、緊急帝王切開などの異常分娩に対してもグループの医療リソースを共有することにより、24時間体制で臨めることです。専門医の労働環境を改善できると同時に、安心・安全を重視した産科医療の提供を可能にしています」。豊橋市民病院、愛知県がんセンター、名古屋大学医学部附属病院などでの勤務を経て、にわクリニックを開業していた丹羽慶光氏は、ロイヤルベルクリニックとしてベルネットグループに参画した理由をこう述べる。

●iPadで受診者自らが問診内容を入力する問診ツールを開発

 2010年6月、名古屋市緑区にオープンしたロイヤルベルクリニック(17床)は、産科・婦人科医療、小児科健診業務を実施。平日2診制で、夕方と土曜日の診療も行っている。今年4月には歯科診療も開始し、産科と連携した適切な口腔管理によるマタニティ歯科としての機能を高め、安全な出産と母子のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に務めている。医療スタッフには、丹羽院長以下数人の産婦人科医・小児科医、10数人の助産婦を含む看護職員を擁している。

ロイヤルベルクリニックの小児科非常勤医で、名古屋大学医学部附属病院のメディカルITセンター長を務める吉田茂氏

 新生児健診を担当する小児科非常勤医の1人が、名古屋大学医学部附属病院のメディカルITセンター長を務める吉田茂氏。ベルネットグループのIT導入に携わり、iPadを活用した新生児健診の問診ツール開発を担った。吉田氏は、ユーザー自身による医療システム構築を推進する日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)代表も務めており、FileMakerを使ってベルネットグループの産科データベース、新生児管理データベースなどを構築している。新生児健診用問診システムも「FileMaker」を使って開発したもので、iPadで利用するために「FileMaker Go」を使用した。

 従来の新生児健診は、診察前に看護スタッフが体重、身長、胸囲、頭囲の測定など発育チェックをする際に問診を行い、その数値を新生児管理用データベースに入力。医師がそれを参照しながら診察していた。iPadを使った新生児健診用問診ツールでは、診察前に受付で渡されたiPadに新生児問診票の内容を母親自ら入力し、その後に看護スタッフが測定した発育データやミノルタ黄疸計で測定したビルリビン測定データなどを入力して、新生児管理データベースに転送する。

 母親が操作する画面は、次のような構成になっている。最初の画面は母子手帳にある新生児の記録ページの内容と同じ項目が問診票として表示され、質問項目に沿って画面タッチで回答する。

最初の画面は母子手帳にある新生児の記録ページの内容と同じ項目が問診票として表示される

 
 
 2つ目の画面では、新生児の体で気になることを質問項目から選択するとともに、あらかじめ組み込んである回答を参照できる。質問する際には、赤ちゃんの体のイラストから気になる部位をタッチして質問・回答を表示させるパターン(部位で選ぶ)、「頭」「顔」「目」など部位名から選ぶパターン(言葉で選ぶ)、赤ちゃんの行動や生活習慣に関するキーワードから選ぶパターンから選択できるようになっている。

新生児の体で気になることを質問項目から選択すると回答を参照できるほか、質問も可能

 
 
 あらかじめ用意された質問と回答を見て疑問や不安が解消された場合には「回答に満足(スッキリ)」を押し、満足できないときは「小児科医に聞く(登録)」ボタンを押す。すると新生児管理用データベースに転送され、後者の場合は診察時に医師が詳しく説明する仕組みになっている。疑問や不安が用意された質問項目にない場合は、その内容をソフトウエアキーボードで入力して質問できる。

来院者が実際にiPadを利用している場面。イラストから部位を選んで質問する機能もある

 

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